「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」「ロエベ(LOEWE)」のクリエイションを担うジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が、11月に来日した。主な目的は、東京・渋谷パルコに10月に開いた「ジェイ ダブリュー アンダーソン」のショップや、11月11日に改装オープンした「カサロエベ表参道」の訪問だ。
アンダーソンは多忙ながら、自身が手掛けるブランドのランウエイショー後には大勢のジャーナリストに向けて取材の時間を必ず設けるなど、メディアへの誠実な対応で知られている。今回の来日でも、タイトなスケジュールの合間を縫って「ジェイ ダブリュー アンダーソン」渋谷店で朝から複数メディアの合同取材に応じ、自身のクリエイションや日本について答えた。
新たなシルエットを求めて
昨今の「ジェイ ダブリュー アンダーソン」と「ロエベ」のクリエイションに共通しているのは、違和感のあるシルエットだろう。極端にハイウエストだったり、タイトだったり、縦長だったり。それらをシンプルなスタイリングに徹することで、フォームをさらに強調させる。「シルエットは、私が今最もフォーカスしたいクリエイションだ。世の中のファッションの変化も、シルエットに大きな影響を受けてきたから」とアンダーソンは語る。
世界中に多くのデザインが溢れる中、アンダーソンはファッションの概念を根本的に見直すために、服飾の原点ともいえるシルエットに焦点を当て、新しくデザインしたり、自ら生み出した過去のシルエットを組み合わせたりし、スタイルを進化させる。「私も年齢を重ねて自信をつけると共に、過去に比べてフォーカスしたい点が明確に見えるようになった。今は、シルエットだ」。そして、ハトやカエル、ウサギなど動物のモチーフをたびたび採用することについては「特に理由はなくて、かわいいし、ユーモアを表現できるからかも」と笑った。
アンダーソンのクリエイションは、変幻自在のシルエットをはじめ、フェティッシュなニュアンスやアーティーなモチーフ、そして商業的な視点が光る豊富なバッグやシューズが特徴である。その源泉にはクラフツマンシップが欠かせず、同氏はそれを「fundamental(基礎)」と表現した。「今、私が夢中になっているクラフツマンシップは、素晴らしい人材がいてこそ成り立つもの。イギリスやヨーロッパをはじめ、世界中にいる優れた人材を確保することでブランドの基礎が固まる。ハリー・スタイルズ(Harry Styles)が着用して話題になったパッチワークのセーターも、この基礎があったからこそ生み出せたものだ」。
変わらない原点の感覚
この“基礎”は、ショップ作りにも生かしている。渋谷パルコに開いた直営店は、ミラノの旗艦店を参考にした素材選びやクラフツマンシップを取り入れているという。ショップ中央には12メートルにもおよぶウォールナット材のストラクチャーを置き、凸凹の曲げ木加工を施している。アイテムがかかるレールをレザーで包むなど、クラフツマンシップとカルチャーを融合させた空間が広がる。「ショップは、私が頭の中で考えていることを表現するためにとても重要な場所。私のファッション界でのキャリアは、ショーウインドー作りからスタートした。どのように服を置き、どこにオブジェを置くかなどを考えることからスタートしたので、ショップ作りは今も大切な仕事だ」。
そして、日本が「一番好きな街の一つ」という理由も語った。「日本人はファッションに対する理解があり、クリエイションやその歴史について学ぼうという気持ちがある。『ジェイ ダブリュー アンダーソン』についても深く理解してくれているのも、日本が好きな理由だ。それに、ファッションの組み合わせの感覚がとても面白い。来日するたびにいろいろな発見があるから、スーツケース1つで来たのに帰国する頃には6つになっているほどだ」。