カッチリした装いの代名詞であるジャケットを、あえてルーズに着崩すスタイリングが盛り上がってきました。オーソドックスな印象の強いジャケットですが、実はトレンドがあります。今シーズンは“袖丈”。手の甲、さらには拳まで包むロング丈が新顔です。ずるりと垂れたルーズな袖は、伸びやかでファニーな雰囲気を寄り添わせてくれます。
これまでジャケットのアレンジといえば袖まくりが主流でしたが、今シーズンはあえて手の甲が隠れるぐらいずるっとさせるイメージです。着こなしのコツは、ボトムスとのバランス。袖の着余り感を印象付けるスタイリングは、ジャケット姿を新鮮に映してくれます。写真のジャケットは、肩幅や身幅は普通だけれど、袖だけが長いタイプ。今回は、ファッションショー会場でキャッチしたスナップから、コーディネートのポイントを読み解いていきます。
ロングカーディガン感覚で落ち感演出
“ボトムレス”風でコントラストを強調
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日本でもワードローブの仲間入りを果たしたオーバーサイズ ジャケット。スタイリングのバリエーションも一段と多彩になってきました。ミニ丈ボトムスとのコンビネーションは、上下のコントラストが際立ちます。ロングカーディガンのような感覚で羽織って、落ち感を出すのが上手な着方です。
ジャケットはマニッシュな雰囲気を持つだけに、色や柄、ボトムス選びでフェミニンさを意識すると、ジェンダーミックスの見え具合に仕上がります。1枚目の写真は、ソフトな印象のピンクのオーバーサイズ ジャケットに、ふんわりしたシルエットのミニスカートがキュートさを添えています。
ジャケットにボリュームがあるので、ボトムスの存在感を消す“ボトムレス”の着こなしともマッチします。シャツワンピースを包み込むように、オーバーサイズジャケットをかぶせたのが2枚目写真のルック。
ミニ丈のワンピースを選べば、背後からはジャケットしか羽織っていないように見え、正面からもワンピースがジャケットの隙間からちらりとだけ見えるサプライズなスタイリングに。大ぶりのイヤリングでリッチ感を上乗せし、厚底シューズで脚線を引き立てました。
胸元見せでも品格をキープ
ヌーディーさとのバランスが鍵
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オーバーサイズのジャケットは、前を開けて着ると、リラックス感が強まります。ボタンを外したフロント部分で、素肌見せやレイヤードを仕掛けやすいのも前開けのいいところ。ヌーディーな演出は、ジャケット特有の硬さを和らげてくれます。
1枚目のルックは、ゆるりと着た黒いトップスの隙間から素肌をチラリとのぞかせました。重ねたノーカラーの白シャツもボタンを外して、エフォートレスなムードに。ポケットチーフを挿して全身をモノトーン系でまとめて、上品に整えています。
ジャケットに端正なイメージが備わっているので、トップスで少し着崩すスタイリングも可能です。例えば、ブラトップのようなアイテムを生かした素肌見せも選択肢に加わります。
写真2枚目では、黒のブラトップにオーバーサイズのジャケットを羽織っています。露出度が高めのトップスでも、ジャケットの前を閉じれば、見え加減をコントロールできます。マイクロミニ丈のボトムスもサイハイブーツでカバー。腰から下がすっきりした“ボトムレス”に仕上がります。
袖もボトムス丈もずる長で
伸び やかな縦落ちシルエット
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袖を指が隠れるほど長くすると、きちんと感の高いジャケットのイメージを保ちつつヌケ感が漂います。さらに、ロング丈のボトムスと組み合わせた“ロング×ロング”の掛け算コーディネートは落ち感が強まります。
1枚目のルックは、ミルキーホワイトのジャケットを素肌にまとった姿が一見パワーウーマン風。しかし、両袖はロング丈で、穏やかな表情を帯びています。深いスリットを入れたスカートは、くるぶしも隠すマキシ丈。ややシェイプ気味のジャケットとの相乗効果で、縦長イメージが強まりました。
お仕事ルックの代名詞であるパンツスーツも、長めの袖丈を取り入れれば、マルチに着回せます。型にはまらないゆったりしたシルエットは、普段使いにも好都合。色次第でありきたりの印象を遠ざけられます。
2枚目の写真は、まさにそんなスーツルックのお手本。素肌に羽織ったジャケットは、ダブルブレストのマニッシュ仕立て。袖丈が長く、ワイドパンツの裾も床に届きそう。ハンサムなムードを保ちつつ、落ち感を引き出しました。
あえて袖先を余らせて、“ゆるずる”に見せる着こなしには、ユーモアや穏やかさを望む今の気分が映し出されているようです。“脱・オフィスルック”な見せ方ができるのも、このスタイルのいいところ。トレンドの“トラッド崩し”にも通じる、こなれたスタイリングを試してみては。