森ビルの大型複合施設「麻布台ヒルズ」が開業した。“Modern Urban Village”をコンセプトに、緑を多用した設計で“Green & Wellness”を打ち出す。商業施設ゾーンには来春までに約150店舗が出店。商業施設や文化施設のほか、オフィスや住宅などの都市機能を集積する。
この記事では、アートやギャラリーにフォーカスし、その見どころを紹介する。日本が誇るエンタメの一つであるマンガに触れる集英社のギャラリーやお台場から移転したチームラボ ボーダレス、ギャラリーの展示内容に連動してメニューが変わるカフェなど、ユニークなスペースが盛り沢山だ。
中央広場
奈良美智「東京の森の子」
ジャン・ワン
約6000平方メートルの広さを誇る中央広場では、パブリックアートを楽しむことができる。奈良美智の「東京の森の子」は、2011年の東日本大震災の悲しみから活動を再開するきっかけとなった「ミス樅の子」に続いて、16年から青山や那須塩原、ロサンゼルスに設置されている「森の子」シリーズの8体目。都内に常設される奈良の野外彫刻作品としては初めてだ。
中国の彫刻家、ジャン・ワンのアイコニックなシリーズ「Artificial Rock」は、ステンレススチールで自然石を模した彫刻だ。中国では天然岩を鑑賞する文化が唐の時代からあり、ジャンは自然岩が連想させる風景を、近代的な素材で表現してきた。鏡面に仕上げた表面は、中央広場に広がる緑や季節を写す。
森ビル デジタルアートミュージアム:エプソン チームラボボーダレス(ガーデンプラザB B1階)
移転オープン
アート集団、チームラボと森ビルが手掛けるエプソン チームラボボーダレスが東京・お台場から麻布台ヒルズに移転する。オープンは2024年2月上旬。チームラボボーダレスでは、オープンに際して新作「認知の上の存在」をテーマにした「バブル ユニバース」とチームラボボーダレスの世界を構成する作品群が入り込んでくる「花と人-メガリス クリスタル フォーメーション-」「ブラック ウェーブス-メガリス クリスタル フォーメーション-」を発表した。
集英社マンガアートヘリテージ(ガーデンプラザA 地下1階)
初リアル店舗
集英社は、マンガアートヘリテージの常設ギャラリーを出店する。2021年3月に公開したウェブサイト、マンガアートヘリテージでは、マンガ原画の保存や活用について公共機関とともに考え、現在では希少になった活版印刷やコロタイプ印刷などの印刷技術とつながり、マンガをアートとして継承することを目指してきた。
ギャラリーは尾田栄一郎の「ワンピース(ONE PIECE)」と久保帯人の「ブリーチ(BLEACH)」にフォーカスした展示からスタートする。今後も「少年ジャンプ」作品を中心に展示を行い、原画を活版印刷によってアートプリントしたものを展示する。作品には全てNFTがついており、購入した人にはデジタル証明書を発行する。また、今後はトートバッグなどのグッズも販売する予定だという。
麻布台ヒルズギャラリー(ガーデンプラザA MB階)
森ビルによる麻布台ヒルズギャラリーは、展示面積700平方メートルを誇るギャラリーだ。森ビルはこれまで、文化を都市作りにおいて重要な要素と位置づけてきた。同ギャラリーでは、美術館仕様の施設・設備を備えている。今後はアートやファッション、エンターテインメントなどのジャンルで展示を行う予定だ。3月31日までは、アイスランド系デンマーク人のオラファー・エリアソン (Olafur Eliasson)に焦点を当てた企画展を開催している。
麻布台ヒルズギャラリー カフェ(ガーデンプラザA 地下1階)
麻布台ヒルズギャラリー カフェは、麻布台ヒルズギャラリーの関連施設としてアート観賞後に立ち寄れるカフェを目指す。今後はギャラリーの企画やイベントに連動したカフェとして運営する予定で、神谷町駅前のカウンターではテイクアウトのドリンクの提供も行う。ブレンドコーヒー(480円)やハーブティー(680円)、野菜ジュース(700円)などが楽しめる。
オラファー・エリアソンの展示を開催する3月31日までの期間、オラファーによるスタジオ・オラファー・エリアソン キッチンとのコラボレーションにより東京近郊の食材を使用したメニューを用意した。ランチ(10〜14時/850円)、カフェ(10〜21時/1650円)、ディナー(17〜21時/4620円)で時間を分けて案内している。麻布台ヒルズの公式サイトで予約を受け付けている。
麻布台ヒルズギャラリー ザ ショップ (ガーデンプラザA 地下1階)
麻布台ヒルズギャラリー カフェの隣に位置するショップでは、ギャラリーの企画内容に合わせたグッズを販売する。オラファー・エリアソンの展示期間中は、Tシャツ(4400円〜)やトートバッグ(3520円)、ノート(1100円)、香川県の和菓子の老舗、寶月堂(ほうげつどう)との協業による和三盆(1620円)や箸置き(1万8700円〜)などを販売している。グッズはスタジオ・オラファー・エリアソンの考えにより、環境への負荷を軽減した素材を取り入れている。
また、麻布台ヒルズの開業を記念したグッズも販売している。麻布台ヒルズアリーナの大屋根「The Cloud」やガーデンプラザの外観「Net Frame」をデザインしたイギリスのヘザウィック・スタジオ( Heatherwick Studio)とのコラボレーションにより、その外観をデザインしたマグカップ(1980円)やペーパークラフト(1650円)、Tシャツ(4400円)のほか、トーマス・ヘザウィック(Thomas Heatherwick)が直筆で「麻布台ヒルズ」の文字を書いたステッカーを含む、ステッカーセット(1100円)を用意した。
ギャラリー&レストラン舞台裏(ガーデンプラザA 地下2階)
現代アートの鑑賞体験が楽しめるアート・コミュニケーションプラットフォーム、アートスティッカーを運営する、ザ チェーン ミュージアムは、アートスペース“ギャラリー&レストラン舞台裏"を出店する。同店では、アート作品を鑑賞したあとに、誰かと語りたくなる空間として、飲食を楽しめるスペースを設ける。
カウンターでは、白ワインや前菜を提供する。今後はベテランから世界のアート市場で注目される若手までさまざまなアーティストをキュレーションし、演劇やダンスのパフォーマンスも企画する予定だ。舞台裏をイメージして、店内の照明も落としているという。ギャラリーは、日本の画家、彫刻家の加藤泉の展示からスタートする。