PROFILE: 高橋侑花/「シービー ジュエリー スタジオ」デザイナー兼クラフトマン
「シービー ジュエリー スタジオ(CB JEWELRY STUDIO以下、シービー)」は、デザイナー兼クラフトマンの高橋侑花が北海道で2015年にスタートしたジュエリーブランドだ。22年、高橋が東京の竹藪がある物件に一目ぼれし、拠点を東京に移した。彼女はそれ以前も、直感に従って進路を決めてきたという。「シービー」では、毎月30〜40個ほどジュエリーを受注販売しており、価格帯はシルバーのピアスで1万円前後。フルオーダーも受け付けており、ブライダルの利用者もいる。インスタグラムを通して着々とブランドのファンを増やし、7月には伊勢丹新宿本店で初のポップアップを開催した。高橋の、一人ひとりに寄り添う温かい人柄と、丹精を込めてつくるジュエリーが、顧客の心をつかんでいる。同ブランドのジュエリーを愛用する筆者が、クリエイションについて聞いた。
ブランド設立のきっかけはインスタグラム
WWDJAPAN(以下、WWD):ジュエリーに携わるようになったきっかけは?
高橋侑花「シービー ジュエリー スタジオ」デザイナー兼クラフトマン(以下、高橋):趣味でビーズジュエリーをつくり、撮った写真をインスタグラムに載せたところ、「購入したい」という声があり、販売を始めました。大学卒業後は米ボストンに留学し、帰国後に就職活動をしましたが、ピンとくる仕事がなく途方に暮れていたときに、ふと、小指に着けていたシルバーの指輪が目に入ったんです。それが彫金に興味を持ったきっかけです。英国のエリザベス女王御用達のジュエリー工房で経験を積んだ職人の教室を見つけ、通い始めました。そこでつくった指輪の写真をインスタグラムに載せたところ、問い合わせがあり、すぐに売れました。彫金が楽しくジュエリーをつくりたいという思いと、お客さまの声があって、「シービー」を設立しました。
WWD:ブランドの体制や販路は?
高橋:制作から販売、配送まで、全て一人で手掛けています。もともとはECのみでしたが、昨年から東京のアトリエでも受注を開始しました。また、「シービー ビンテージ(CB VINTAGE)」と題して、海外で買い付けたビンテージのジュエリーも不定期で販売しています。目黒のアートスペース「エバランダート(EVERANDART)」では、「シービー ビンテージ」のジュエリーに加え、ビンテージのカトラリーや食器などを販売しています。
WWD:ブランドコンセプトは?
高橋:“大切な記憶をジュエリーに残す”です。多くのお客さまが、人生の節目や記念にジュエリーをオーダーしてくださいます。「シービー」のジュエリーが、大切な記憶と結び付いたお守りのような存在になれたらと願っています。
WWD:デザインや制作におけるこだわりは?
高橋:まだ見たことのないような、斬新なデザインにこだわっています。見た目のかわいさだけでなく、重量感や着け心地などにも気を配っています。一つひとつ手づくりしているので、温かみを感じられるのも特徴です。
WWD:ブランドの強みは?
高橋:サイズを1mm単位でオーダーできるところです。微差でも着け心地が変わってくるので、ずっと着けていてもストレスを感じないようフィット感にこだわっています。彫金の技術に自信を持ち始めた頃から、フルオーダーも受け付けるようになりました。ブライダルで利用してくださるお客さまもいます。リメイクも対応します。代々受け継ぐジュエリーを新しいアイテムにつくり替えたり、ルース(裸石)を外してピアスやネックレスに再利用したり。お客さまからは、「直接話して希望のリメイクをかなえてもらえる場は貴重なのでうれしい」という声をいただいています。
WWD:ベストセラーは?
高橋:ブランド設立当時から作っている“BIG INITIAL RING”で、「シービー」のファンなら必ず一つは持っていると言っても過言ではありません。絶妙なボリューム感で、性別問わず着けられます。シンプルな洋服のワンポイントになる存在感が人気の理由だと思います。雑誌「キャンキャン(CanCam)」でも紹介されました。
WWD:新作の予定は?
高橋:留め具がなく、肌になじむ“スキンジュエリー”を出す予定です。ヨーロッパでは約3〜5年前からトレンドで、一度着けると取り外せないので、タトゥーのような感覚で楽しんでもらえると思います。
寺嶋香奈と協業する「ケーシービー」はたくさんの愛がテーマ
WWD:ブランドの転機は?
高橋:拠点を東京へ移したことです。予約制で週3回アトリエを開くようになり、リメイクやブライダルのオーダーが増え、売り上げが2倍になりました。また、ジュエリーブランド「ケー.(K.)」を手掛ける寺嶋香奈さんと立ち上げた「ケーシービー(KCB)」が好評で、伊勢丹新宿本店でのポップアップが決まりました。
WWD:「ケーシービー」とは?
高橋:寺嶋さんがディレクションを、私が制作を担当しています。デザインは2人で行います。ファッションやライフスタイルなど、正反対の私たちですが、2人の“重なる思い”を表現しています。「ケーシービー」は“愛”にフォーカスしたアイテムが多く、代表的な商品は“LOVES TOP”のネックレスです。“LOVES”は“LOVE”の複数形で、たくさんの愛をたくさんの方向へ向けて、自分自身も目一杯愛してほしいという思いを込めています。
WWD:伊勢丹新宿本店で開催したポップアップの反響は?
高橋:認知度が広がりました。「ケーシービー」第3弾“LOVED STATION NECKLACE”のアルファベットパーツを選べる、ポップアップ限定カスタムが好評でした。お客さまと一緒にデザインを考える時間が幸せでしたね。
WWD:今後はブランドをどのように成長させたい?
高橋:香港のセレクトショップでホリデーシーズン限定のオーダーを受け付けました。オーナーは、インスタグラムを通して出会ったお客さまで、アトリエに訪れた際に、香港の受注会の提案をしてくれました。今後は台湾や韓国など、アジア圏で認知度を広げていきたいです。また、日本各地でもポップアップを開催し、より多くの人に「シービー」を知ってもらえたらうれしいです。