「WWDJAPAN」には美容ジャーナリストの齋藤薫さんによる連載「ビューティ業界へのオピニオン」がある。長年ビューティ業界に携わり化粧品メーカーからも絶大な信頼を得る美容ジャーナリストの齋藤さんがビューティ業界をさらに盛り立てるべく、さまざまな視点からの思いや提案が込められた内容は必見だ。(この記事は「WWDJAPAN」2023年11月27日号からの抜粋です)
前号コラムでは、それぞれに一世を風靡しながら惜しくもこの世を去った美容界のスペシャリストたちが、いかにパワフルであったかという話をした。しかし昨今この業界に出現する大スターは、必ずしもスペシャリストではない。むしろ“使い手”として脚光を浴び「美容家」というポジションを獲得するといった形。今や「御三家」と言うべき神崎恵さん、石井美保さん、 そして田中みな実さんは、すでに「使い手のスペシャリスト」という新しいポジションを確立している。
そこであらためて思うのは、佐伯チズさんや田中宥久子さんのように、“美容を教える人”が大スターになる「学習の時代」は、一つの区切りを見せ、今や次の段階。化粧品を使って美容して、こんなにも美しくなれますというビジュアルも含めて提唱する「実践の時代」へと進んだわけで、それならば私にもできると、タレントやモデルにも美容家を標榜する人たちが、次々登場している。ただ現実には“続く人”や“変わる人”はなかなか現れない。それだけ、この御三家が大変なパワーと魅力を持った人たちである証だけれど、同時にその牙城を崩せるだけの“何か”を掲げないとすんなりと続けないということでもある。
非常にうがった見方をすれば、そもそも市場にあまりにも化粧品が多すぎるために、何を選んでいいか分からないからこそ、“選ぶ人”のスペシャリストを世間が選んだのに、その“選ぶ人”がどんどん増えていったらまた化粧品選びは混沌とし、何を選んでいいか分からなくなってしまう。だから同じようなタイプのカリスマはもう生まれないのかもしれない。「腸活」と驚くべき「ゴージャスボディー」を売りとする加治ひとみさんのように、全く異なる強みを持つ人は確かに徐々に頭角を現してはいるが……。
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