コンビニ大手のファミリーマートが2021年春から販売するアパレルブランド「コンビニエンスウェア(CONVENIENCE WEAR)」の成長が続いている。「ファセッタズム(FACETASM)」の落合宏理氏をデザイナーに迎え、話題性のある商品を次々に打ち出してきた。仕掛け人は伊藤忠商事出身で、現在はファミマのトップに就く細見研介社長だ。細見氏は商社マン時代には「ハンティングワールド」や「レスポートサック」などを手掛けてきたブランドビジネスのプロ。30日の大型イベント「ファミフェス」の直前に、コンビニ衣料の手応えを聞いた。
WWD:「コンビニエンスウェア」はファミマのビジネスにどんな影響を与えたか。
細見研介ファミリーマート社長(以下、細見):非常にインパクトがあった。店内が明るくなった。色とりどりの靴下やTシャツが並び、季節ごとにアイテムも変化する。コンビニの衣料品といえば(予定外の宿泊、突然の雨などの)レスキュー需要ばかりで年中同じ品ぞろえ。そんな常識を覆した。上質で楽しいデザインは一度着用すると皆さん好きになり、リピーターになってくださる。
WWD:一番反響のあった商品は?
細見:靴下は累計1500万足以上売れた。私もいつも履いているし、今日ももちろん履いてきた(と言いながら、パンツの裾をめくる)。
ファッション業界はコロナ前から厳しい市況が続き、元気がなかった。伊藤忠時代から長くファッションビジネスに携わった者として、なんとかしたいという気持ちが強くあった。毎日多くの人が利用するコンビニだから出来るやり方があるのではないか、考えを巡らせてきた。そんなとき、デザイナーの落合宏理さんに共感していただき、このプロジェクトが始まった。わざわざ車や電車で遠くに出向かなくても、近所のファミマで上質な日常着が手に入る。実に革新的なチャレンジだ。
WWD:現在の売上高は?
細見:売上高は開示できないが、短期間でかなりの規模まで成長した。一つのアパレルブランドと考えれば、けっこうな存在感といえる。だが、それでもファッション市場の隅っこを少しかじったにすぎない。コンビニでファッションが売れる可能性を示せたとは自負しているが、チャレンジは始まったばかりだ。消費者が服を買うときの選択肢にファミマが入るところまで持っていきたい。
12月5日からはスエットやスエットパーカの新作を全国のファミマで発売するし、「ファミマ!!」の麻布台ヒルズ店(東京都港区)限定だがデニムジャケット(9990円)やサロペット(7990円)を発売する。主力はあくまで実用的な服になると思うが、市場は大きく、将来のポテンシャルは広がっている。
WWD:ファッション事業の中長期的な展望は?
細見:ファミマは巨大なメディアだと考え、店内に大型サイネージの導入を進めている。国内の約1万6500店舗のうち、年内に約1万店舗が設置済みになる。大型サイネージを使った販促はすでに大きな成果を出しているし、当社は1日に約1500万人のお客さまが訪れる。アプリ「ファミペイ」も1500万のダウンロードされている。リアルでもデジタルでもこれだけの消費者との接点を持てる企業はそうそうない。ファッションはコンビニの有力なコンテンツとしてもっと訴求できる。