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2024-25年秋冬シーズンに向けて、デザイナーの就任・退任相次ぐ
来月早々にもコレクションサーキットが始まる2024-25年秋冬シーズンに向けて、デザイナーの就任・退任のニュースが相次いでいます。
「ジバンシィ」のマシュー・M・ウィリアムズは、特に最近2シーズンは良きコレクションを発表していたので残念です。とはいえ、まだ少し微睡んでいる“スリーピング・ビューティ”な印象は否めないでしょうか?
特に近年の歴代デザイナーはストリートなスタイルが印象的でしたが、時代も変わってきた今、次のデザイナーにはぜひオードリー・ヘプバーンを思い出すエレガンスを確立し、その後はオートクチュールに挑んでほしいと思います。
「ジバンシィ」のマシュー・M・ウィリアムズが退任
「ジバンシィ(GIVENCHY)」のマシュー・M・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)=クリエイティブ・ディレクターが、12月31日をもって退任することが分かった。2020年6月に就任した彼が手掛ける最後のコレクションは、近日公開されるメンズ&ウィメンズの24年プレ・フォール・コレクションになる。今回の退任は、ヨーロッパの伝統的なブランドにおけるクリエイティブ・ディレクターの短命化を際立たせるものであるとともに、1988年からLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)の傘下にある名高いクチュールメゾンの新たな改革を示唆するものだ。後任探しはまだ初期段階のようで、次の体制が発表されるまではデザインチームでコレクションを手掛ける。
ウィリアムズ=クリエイティブ・ディレクターは、デビューシーズンから強みであるハードウエア(金具)、特にテーラリングやレザーグッズに施した南京錠のような留め具や装飾的な要素をクリエイションの重要な柱とし、手の込んだデニムの加工やシューズの最先端技術でもその手腕を発揮。音楽業界との深いつながりやネットワークを生かし、新たな層へのリーチにも貢献した。
ビジネスの勢いは、主にアイコンバッグ“ヴォワイユー”と“シャークロックブーツ”の好調によって最近回復したように見えた。しかし、大きな商業的成功や広くメディアからの賞賛はウィリアムズによる「ジバンシィ」にはなく、同じLVMHファッション・グループ(LVMH FASHION GROUP)傘下の「ロエベ(LOEWE)」や「セリーヌ(CELINE)」の爆発的な成長に比べ、遅れをとってきた。
また在任中、ジョディ・フォスター(Jodie Foster)やケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)といったセレブリティーや「ティファニー(TIFFANY & CO.)」のハイジュエリーショーのためにクチュールドレスをデザインしたが、オートクチュール・ファッション・ウイークで本格的なコレクションを披露することはなかった。
ウィリアムズ=クリエイティブ・ディレクターは、「『ジバンシィ』のクリエイティブ・ディレクションを手掛けることは、2020年の就任時にも述べたように、生涯の夢だった。この3年間、私はユベール・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy)氏のレガシーを受け継ぎながら、私自身のクリエイティブなビジョンをメゾンにもたらすことに努めてきた。この素晴らしい機会を与えてくれたアトリエや、ルノー・ド・レスケン(Renaud de Lesquen)=ジバンシィ最高経営責任者(CEO)、そしてLVMHに心から感謝したい」とコメントした。
一方、レスケンCEOはウィリアムズが「ジバンシィ」にもたらしたエネルギーに対する感謝を示し、「毅然としてクリエイティブかつコンテンポラリーな彼のコレクションは、新しい活力を生み出し、顧客を開拓した。マシューとの仕事を楽しんできた全ての人と共に、彼の今後の成功を祈っている」と述べた。声明の中で、同ブランドは「ウィリアムズがメゾンの商品ラインアップをモダンに刷新し、国際的な市場、特にアメリカと日本で新たな勢いを生み出すことに貢献した」と評価している。
ウィリアムズ=クリエイティブ・ディレクターは、「ジバンシィ」を手掛ける傍ら、15年に設立した自身のシグネチャーブランド「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM 以下、アリックス)」を率いている。同ブランドは、11月17日に香港の起業家エイドリアン・チェン(Adrian Cheng)に過半数株式を売却したばかり。チェンとのパートナーシップにより、初となる独立型店舗のオープンや、将来性の高いジュエリーやシューズ、アクセサリーといったカテゴリーの強化などを計画している。
「トッズ」の新クリエイティブ・ディレクターに「ボッテガ・ヴェネタ」のヘッドデザイナーが就任
「トッズ(TOD’S)」は12月1日、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」でレディ・トゥ・ウエアのヘッドデザイナーを務めてきたマッテオ・タンブリーニ(Matteo Tamburini)を新たなクリエイティブ・ディレクターに任命したことを発表した。9月に退任したヴァルター・キアッポーニ(Walter Chiapponi)現「ブルマリン(BLUMARINE)」クリエイティブ・ディレクターの後任として、メンズとウィメンズのコレクションを率いる。初のコレクションは2024-25年秋冬のウィメンズとなり、24年2月のミラノ・ファッション・ウイークで披露される予定だ。
「ロシャス」「スキャパレリ」「エミリオ・プッチ」に在籍
テーラリング、アウターウエア、レザーウエアが得意
「トッズ」に加え「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」や「ホーガン(HOGAN)」「フェイ(FAY)」などのブランドも有する親会社トッズ・グループ(TOD'S GROUP)のディエゴ・デッラ・ヴァッレ(Diego Della Valle)会長兼最高経営責任者は、「マッテオ・タンブリーニは才能あふれるクリエーターだ。上質なイタリアンライフスタイルに対する彼の現代的なビジョンは、間違いなく私たちのブランドに付加価値をもたらすだろう」とコメント。「タンブリーニは、ラグジュアリーの世界への深い理解を生かし、優れたスキルを持ったクリエイティブチームをまとめてくれるだろう」と続けた。
タンブリーニ新クリエイティブ・ディレクターは、1982年イタリア・マルケ州生まれ。ビジネスSNSのリンクトイン(Linkedin)によると、「ロシャス(ROCHAS)」や「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」でウィメンズウエアの経験を積んだ後、17年にトーマス・マイヤー(Tomas Maier)時代の「ボッテガ・ヴェネタ」のデザインチームにウィメンズウエアのシニアデザイナーとして加わった。その後、ダニエル・リー(Daniele Lee)が率いていた20年にレディ・トゥ・ウエアのヘッドデザイナーに昇格。テーラリング、アウターウエア、レザーウエアを得意としているという。「トッズ」の核となるのもクラフツマンシップを生かしたレザーアイテムであり、「ボッテガ・ヴェネタ」でスキルを磨いた彼は理にかなった人選の言えそうだ。
就任に際しては、「『トッズ』ファミリーに加わり、私の原点や思い出と密接に結びついているブランドの一員となれることを光栄に思う。ブランドの価値観やこれまで『トッズ』が取り組み続けてきた高い品質とスタイルのあくなき追求は、私自身にも重なるもの。自分が培ってきた専門知識や技術を生かし、ブランドに貢献することを楽しみにしている」と述べた。
「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。