「『肌・心・体』のキレイは自分で磨く」をうたう、「美的」の世界が広がっている。媒体は、2001年創刊の「美的」に加えて、08年オープンの「美的.com」、そして18年9月創刊の「美的GRAND」の3媒体で、幅広い年代の女性はもちろん、男性へのリーチにも積極的だ。まず「美的」について中野瑠美編集長は、「20代後半から30代がメインターゲットの『美的』は、ビューティが大好きな女性を多数抱え、特にスキンケアに真面目に取り組みたい読者のニーズに応えています」と話す。その真面目さについては、「先日のイベントでは、美容賢者の話を立ったままメモして下さるほど。タイアップのイベントでも告知や資料を読み込んでから能動的に参加してくださり、『化粧品検定を受けてみました』と言う人もいます。美容を、すごく愛していらっしゃいます」と話す。「百貨店の化粧品カウンターに『美的』を読んで買いに来た、と訪れて『成分にすごく詳しい方も多い』とブランドから伺っています」。こうした読者はアンケートなどの返信にも積極的で、それが次の企画につながることも多い。
40代以上の女性を想定する「美的GRAND」の読者は、エイジングという悩みに向き合うからこそ、やはり美容と「美的」に対して真面目だ。天野扶美編集長は、「美容に対して毎月10万円の予算があるなら、ヘアサロンや美容クリニックに通ったり、百貨店でコスメを買ったりにそれぞれ数万円ずつを費やす、可処分所得の多い女性にご愛読いただいています」と話す。子育て世代も数多い「美的GRAND」では、薄毛や白髪、更年期にも向き合いつつ、「親子で考える日焼け止め」などの発信にも積極的。「今は、子どもに日焼け止めを推奨する学校が多いんです。それは、読者が子どもだった頃には存在しなかった新習慣。『自分と同じ日焼け止めを使っていいのか?』などのちょっとした悩みも、ビジュアル付きで楽しく見せることを心がけています」と「美的」同様、読者のリアルをコンテンツに盛り込んでいる。
「美的.com」は、2つの紙媒体の受け皿、さらには「美的」ブランドのデジタル施策を担う。ウェブには美容のエントリー層も多いからこそ、小林由佳編集長は「美容初心者の女性はもちろん、男性や、女子中高生に向けたコンテンツにも挑戦して、ジェンダーフリー・エイジフリーなメディアを目指したい」と話す。それぞれの役割は異なるが、3つの「美的」は「美容はとても楽しいから、興味があるなら是非やってみたら?」というスタンスを共有している。だからこそ「メンズ美容にも可能性を感じている」と小林編集長。男性ユーザーをさらに増やすべく、同じ小学館の「DIME」とは、ジェンダーフリーにキレイになりたい全ての人をサポートするコラボ企画として「美的HEN」を立ち上げた。
「美的GRAND」の「親子で考える日焼け止め」から「美的.com」のジェンダーフリー美容やフェムテックまで、それぞれの「美的」がカバーするコンテンツも広がっている。中野編集長は、「『肌・心・体』のキレイは自分で磨くというメッセージの通り、健康や心の記事があってこそ『美的』。婦人科の病気から“なんとなく不安”な不安障害まで、カロリーをかけて取材しているからこそ安心感を提供できている誌面のコンテンツは、ウェブに転載して多くの皆さんに楽しんでいただいています」という。「今、美容は“生き様”みたいな感じ。健康まで含めると、まさに『ゆりかごから』の存在です。だからこそ、小学館の他部署からも『美容という切り口で、アドバイスがほしい』という依頼をもらうことも。ビューティはいろいろな可能性を秘めています」と続ける。
メディアとそれぞれのコンテンツの幅を広げるのみならず、情報の届け方も広がっている。新しい届け方を共に担うのが、「美的」大好き!な女性で組織する「美的クラブ」と、「美的GRAND」のそれに相当する「美的グラニスト」というコミュニティーだ。立ち上げについて中野編集長は、「元来『もっと読者の声を聞きたい』と定期的にコミュニケーションして、さまざまなフィードバックをいただいてきました。ここに美容業界ならではのサンプリング文化を掛け合わせたら、メンバーとクライアント、そしてメディアにとって良い機会になると思ったんです」と振り返る。「美的クラブ」と「美的グラニスト」をあわせた会員数は、現在1000人弱。男性の「美的クラブ」会員も誕生した。
9月には、メンバーも多数参加した5年ぶりのリアルイベント「あいたい美的2023」を開催した。中野編集長は、「とにかく私たちも、読者やコミュニティーメンバーの皆さんに会いたかったんです(笑)」という。「美的」もクライアントも読者とじっくり話せる規模感を意識し、2日間のイベントは1日計3回、各200人ずつを招待。「リアルな雑談から生まれる“ひらめき”を体感していただきたかったし、皆さんに美容好きや『美的』読者がどんな人たちなのかお伝えしたかった。同じ美容賢者を信頼している美容好きは、自由に盛り上がり、仲良くなります。その過程は、気づいたら“同好会”のようなコミュニティーが生まれていたコロナ前と変わりませんでした。クライアントの皆さんには、『真面目の意味がわかりました』とのお言葉をいただきました」と振り返る。今後は、このコミュニティーをビジネスとして積極的に活用する考え。美容感度が高い人たちが集まる場所としてクライアントに案内するほか、「コミュニティーメンバーの声はもちろん、アンケートの返信などは、貴重な資産」。クライアントと共有するマーケティング資料としての活用も見据える。
「美的」(小学館)DATA
【雑誌】 創刊:2001年 発行部数:非公開
【WEB】 UU:427万8440 PV:1027万7445 (いずれも2023年9月)
【SNS】 X:28万6000、IG:53万5000、LINE:164万2000、YouTube:10万4000
小学館
03-3230-5350