「プレミアムジャパン」は、「日本の上質を世界へ」をコンセプトに、食、旅、伝統文化、ものづくりなど、心豊かな“特別”を多言語で発信するオンラインメディアだ。編集長は、外資宝飾ブランドなどのPRやマーケティング責任者を歴任し、2017年に「プレミアムジャパン」の運営権を取得した島村美緒氏。「プレミアムジャパン」、そして日本文化に賭けた理由を尋ねると、「外資系企業で働いていた頃は海外に出ることが多く、現地で日本のことを色々聞かれても答えられない日本人が多いことに気づきました。育った環境から日本文化に触れる機会が多かった私でさえそうだったんです。でも、それはとても恥ずかしいこと。いつか日本の魅力を何らかの形で伝えたいと思っていたら、知り合いが『プレミアムジャパン』というメディアを立ち上げたのでサポートしているうちに、運営権を取得することになりました(笑)」と話す。とは言え、編集経験はゼロ。「一時期は負のスパイラルに陥りそうになりました(苦笑)」と明かすが、コロナ禍を乗り越え、アクセス数は月間400万PVを突破して今なお成長中だ。媒体以外の手段でも日本と世界、日本の伝統文化と世界のメディア・KOLや、日本人富裕層と世界のブランドをつなげる。
正直、読者の年齢層は思っていたよりもずっと若い。男女比は半々、日本人が全体の8割で、18〜44歳が6割を占める。提携する「SmartNews」からの流入も多いが、島村編集長はその理由を「日本の良いものはもちろん、作り手の思いを伝えるのが『プレミアムジャパン』。たとえば資生堂が販売するオーガニックコットンの記事では、生産する広島の工場を取材するのみならず、お客さまの顔に直接触れないように、一方でお顔には最高のコットンで触れるようにと考えた美容部員の思いから、環境に配慮するサステナブルな姿勢までをしっかり伝えます。そんなストーリーが若い世代の共感を得ているのでは?」と分析する。だからこそ、島村編集長をサポートする編集者やライター陣は、一流。長年、他媒体で伝統工芸や旅、ファッション&ビューティのコンテンツを生み出してきた経験豊富なスタッフを抱え、最高のコンテンツを生み出す。そして「私たちは富裕層だけのメディアではありません。『旬のプレミアム』を紹介している感覚です」と島村編集長。たとえば連載企画の「これを食べなきゃ人生ソンだよ」は、抱腹絶倒のグルメエッセイ。「芝翫茶(しかんちゃ:ややくすみのある赤みがかった茶色)」など、日本古来の伝統色や珍しい苗字、四字熟語などをクイズ形式で出題するライトコンテンツも数多く、「プレミアムジャパン」のみならず日本の美意識に対するハードルを下げている。加えて最近は、日本舞踊の三代目尾上菊之丞ら、「日本の伝統文化を支える方々もコラムを書き始めています」。島村編集長が話す「日本人の発信下手と内向きのコミュニティー意識」は、伝統文化を支える本人たちが一番強く自覚していること。だからこそ彼らは発信に前向きで、「プレミアムジャパン」だけのオリジナルコンテンツが続々と生まれている。
こうしたコラムのように、「日本の美意識」を支える人たちと直接繋がっているのは、「プレミアムジャパン」最大の強みだ。その繋がりは島村編集長が運営権を取得するより前、ラグジュアリーブランドで働き、その後は独立してハイエンドの世界でPRを担っていた時代からの賜物に他ならない。そして島村編集長のみならず、4人の編集者はいずれもそれぞれの分野で強固なネットワークを持っている。島村編集長は、「たとえば私は、アジアのベストレストラン50を選出するアワードにPRとして携わり、受賞者にもっと光を当てたいという思いから、コロナ下は赤字でもイベントを開催していました(笑)。そんなご縁でシェフ達のマネジメントをサポートしたり、『プレミアムジャパン』との組み合わせで食と日本文化が融合するコンテンツを企画できる関係に」。すると百貨店から他媒体までVIP顧客を最高の形でもてなしたい企業が参画し、招待客を楽しませたシェフには次の展望が見えてくる。「『私たちはコンサルタント』くらいの気構えを持って、それぞれが点で頑張っている伝統工芸や伝統文化を束ねると、みんながハッピーな形で業界が活性化していきます。特に最近、世界のラグジュアリーブランドは、日本のアップカミングなアーティストに大きな興味・関心を寄せています。さまざまな情報が飛び込んでくる『プレミアムジャパン』は、彼らのキュレーションを担います。世の中に出ればメジャーになれる人を、まずは取材して、次にイベントでご一緒して、サポートするんです」と続ける。世界が再び開かれて外国人観光客が急増している現在は、「海外からのお客さまに、アップデートされた素敵な日本を体験していただくコンテンツがビジネスになるでしょう」と島村編集長。メディア出身ではないからこその自由な発想による「コンテンツをプロデュースして、販売するツールの1つ」としての「プレミアムジャパン」という考え方が、さまざまな伝統文化と業界に受け入れられつつある。
また外資系企業での経験から、日本の発信には海外メディアとの繋がりがマストと考え、会員である日本外国特派員協会(FCCJ)のメンバー向けにイベントを企画したり、富裕層とのタッチポイントとして香港のプライベートバンクと提携したり、常に海外を見据えた活動も行う。日本の文化をよりスマート&ラグジュアリーに発信し、それをイベントや体験、ツアーなど立体的に展開する新しいタイプのメディアとして、今後も面白い取り組みに期待したい。
「プレミアムジャパン」DATA
【ウェブ】UU:70万 PV:415万