「努力は夢中に勝てない」は設楽洋ビームス社長の言葉です。設楽さん自身が、そしてビームスという企業がまさにこの言葉を体現していますよね。
この言葉に近いことを先週、東京ビッグサイトで開かれた「エコプロ」で実感しました。「企業のSDGsの取り組みを学生や企業の直接PRできる大規模環境展示会」と題した「エコプロ」は、2022年は496社が出展し、来場者数は6万1541人。そのうち8952人が小中高校生だったそうです。
今年の出展社の感触では「前回以上に子どもの数が多い」そうで、本当にたくさんの小学生、中学生、高校生で賑わっていました。皆、授業の一環ではありますが、先生から離れて5~6人のグループで行動している学生が多く、赤白帽姿の小学生や、セーラー服姿の中学生が大人に混じってブースを見て回る姿にほっこりしました。
子どもたちの反応は実に素直です。大人が「なんとか来場者を楽しませよう」と工夫を凝らしたブースには大勢が集まっていました。そして子どもが集まっているブースには大人が野次馬で集まるという構図です。特に人気はVRや工作など体験型のブースです。川崎重工の「CO2を捕まえて地球温暖化を防ごう」というVR体験コーナーは黄色い帽子をかぶった小学生が長蛇の列。レンチング ファイバーズは「ヴェオセル(VEOCEL)」に関して4コマ漫画クイズを作って紹介し、回答すると試供品がもらえる打ち出しで大人気でした。ちなみに、「ヴェオセル」のクイズの正解のひとつは「地球温暖化」であり、子どもはほぼ100%正解、大人はぼちぼちだったそう。いかに、今の教育の中で環境問題が取り上げられているかがわかります。
こういった「楽しい」仕掛けがなくても子どもが集まっているブースがありました。それは出展社である大人が熱を込めて、相手が大人、子ども問わず一生懸命語りかけているブースです。「エコプロ」はエネルギーや自治体の課題など、難しいテーマが多いのですが、どんなに難しいテーマでも、「相手を楽しませよう」と身振り手振りで一生懸命な人のトークには子どもは素直に反応して真剣に耳を傾けていました。「びっくりドンキー」による「生物多様性に配慮したお米の仕入れの取り組み」と「店舗での食品ロス・食品廃棄物低減活動」のツアーも小・中・高校生でごった返していました。逆に、単なる「説明、アピール」「パンフレットを配るだけ」といった熱量の低いアプローチだと、子どもたちはブースの前を華麗にスルー。子どもは大人の本気をすぐに見抜くようです。
まさに「夢中は人を惹きつける」ですね。以上は「エコプロ」で見た光景ですがこれはサステナビリティに限らず、どんなことにも通じることだと思います。どんなときも熱量高く、仕事をしたいものです。
向千鶴WWDJAPAN編集統括サステナビリティ・ディレクターが、ファッションとサステナビリティにまつわる視点を2週間に一度お届けします。キーワードは最先端、グローバル、そして情熱。当たり障りのない表現を避け、本音で切り込みます。変化し続けるこの分野を理解するためにお役立てください。エディターズレターとは?
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