アラブ首長国連邦のドバイで国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が開催した。「サステナブルファッションの開拓」をテーマにしたトークセッションでは、さまざまなアパレル業界関係者が集い二酸化炭素排出量の削減方法などについて議論した。
ラグジュアリーEC大手のユークス ネッタポルテ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)が運営する「ユークス」の創業者で、英国のチャールズ国王(King Charles III)が皇太子時代に立ち上げた「ファッションタスクフォース」の議長を務めるフェデリコ・マルケッティ(Federico Marchetti)は、迅速な行動が急務であると強調した。またCOP28でファッションの持続可能性が公式の議題に上がったことの重要性に言及し、「私たちの産業は世界の二酸化炭素排出量の4〜8%を占めている。これはマーケティングのチャンスではなく、生物が生き残るか否かの問題だ」と話した。
「ステラ マッカートニー」は最新素材を展示
「ファッションタスクフォース」には、「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」「バーバリー(BURBERRY)」「クロエ(CHLOE)」「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」など15社が加盟する。マルケッティ議長は、「われわれはシンクタンクではなく、“アクションタンク”であり、実行者の集まりだ」といい、この2年で特に環境再生型農業とトレーサビリティーの取り組みを前進させることができたと成果を語った。
「ステラ マッカートニー」は、テキスタイルの技術革新の事例として、植物由来の代替えレザーなどブランドが活用する最新素材を集めた展示を行った。デザイナーのステラ・マッカートニーは、商品軸での改善だけではネット・ゼロを達成することは難しく、「私たちのようなビジネスがインセンティブを得られるような仕組み作りをしてほしい」と訴えた。
リカルド・ステファネッリ(Riccardo Stefanelli)=ブルネロ クチネリ最高経営責任者は、1年半前から原材料調達地のインドのヒマラヤ地方で取り組む、農業支援の成果などについて言及した。同プロジェクトは、地元のカシミアやコットン、シルクの生産を支え、生物多様性の回復にもアプローチしている。
LVMHは新たに2つの協定に合意
また、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は中東のデベロッパーとのパートナーシップによる二酸化炭素排出の削減目標の設定と、ブラジルにおける生物多様性保全の支援の2つの協定に署名した。
1つ目の協定は既存のショッピングセンターの環境目標に基づくもので、今回新たにシャルーブ・グループ(CHALHOUB GROUP)、エマール・モール(EMMAR MALLS)、マジドアルフッタイムグループ(MAJID AL FUTTAIM GROUP)、アルダー・プロパティーズ(ALDAR PROPERTIES)の主要デベロッパー4社が参加した。地域の小売企業と連携し、水使用量やエネルギー効率、廃棄物管理、空調とクリーンエネルギーの使用、エコデザインと建築慣行における新たな持続可能性目標へのコミットメントを強化する。
議論に参加したLVMHのイメージ&環境部門責任者であるアントワン・アルノー(Antoine Arnault)は、「私たちの店舗は、卓越したモノづくりを見せる場である。環境面でさらなる改善を重ねることは、他社の模範になると同時に商品や空間をさらに魅力的に見せることにつながる。また私たちが努力することで、家主や地主の環境負荷低減にも貢献できる」とコメントした。
2つ目の合意では、ブラジルのNGO団体ファウンデーション・フォー・アマゾン・サステナビリティ(Foundation for Amazon Sustainability)とのパートナーシップの下、森林保全の取り組みに100万ユーロ(約1億5699万円)を投資する。ユネスコ(UNESCO)と長期的に取り組む生物多様性の保護を目的とした「人間と生物圏(MAB)」計画の一環で、将来的に500万ヘクタールの野生生物の生息地を保護するという目標を掲げている。
LVMHは2020年からCOPに参加する。アルノー=イメージ&環境部門責任者は、「生物多様性の保全と気候危機に対してリーダー企業として模範を示し、私たちの進歩を検証してくことが重要だ」と話し、社として業界を超えたパートナーシップを重視していると語った。