「WWDJAPAN」はこのほど、2024年春夏トレンドセミナーを開催した。現地取材した記者によるミラノ、パリを中心とした海外コレクションの動向や、国内マーケットの展望などを3部構成で解説した。セミナーのダイジェストをお届けする。
ウィメンズトレンドは、シアー素材やミリタリーがカギ
第一部は柴田麻衣子「リステア」クリエイティブ・ディレクターをゲストに招き、海外のウィメンズコレクションの動向について解説した。向千鶴「WWDJAPAN」編集統括兼サステナビリティ・ディレクターは、「今季のパリはエレガンスの流れが顕著だった。トレンチコートやジャケットといった普遍的なアイテムを、いかに新しいものにしていくかデザイナーのアイデアが問われるシーズンだった」と総括した。
一つ目のトレンドキーワードは、シアーな素材使いの「LIGHT&SHEER」。代表例は「サカイ(SACAI)」だ。得意のハイブリッドのアプローチでシアー素材を多用したコレクションを見せた。また「スポーツマックス(SPORTMAX)」は、軽やかさや透け感を取り入れながらもホールホワイトのコーディネートで近未来的なムードに落とし込んだ。今季白に注目しているという柴田クリエイティブ・ディレクターは、「今シーズンは『ヴァレンティノ(VALENTINO)』や『クレージュ(COURREGES)』も白の提案を強めていた。共通して軽やかだが攻撃的で、パワフルな空気感が印象的だ」とコメントした。そのほかにもミリタリーアイテムの現代的な解釈や、ミニマル、肌見せスタイルなどの6つが注目キーワードに挙がった。
国内キープレーヤーの強化アイテムは?
第2部では、橋本航平・伊勢丹新宿店本館3階「リ・スタイル」バイヤーと、渡邊倫子「メゾン スペシャル(MAISON SPECIAL)」「プランク プロジェクト(PRANK PROJECT)」クリエイティブ・ディレクターをゲストに招き、国内マーケット展望について議論した。
「リ・スタイル」では24年春夏、「古さを生まない新しさ×積み重ねることのできるファッション体験」をキーワードにディレクションした。90年代のミニマリズムに着想を得たモノトーンのコーディネートや、カットアウトなどのディテールで強さを感じるアイテム、ランジェリー、天然素材やクラフトマンシップを感じさせるアイテムなどに注目する。シルエットはロング&リーンを提案する。
「メゾン スペシャル」では23年、カーゴパンツが売れた。24年春夏は汎用性のあるチュニックやショーツなどにも注目する。ポロシャツやラガーシャツなどのスポーツアイテムは、ビジューやチュールなど女性らしいフェミニンな要素と掛け合わせて提案する。
共通してシアー素材がキーに上がった。「メゾン スペシャル」では、フーディーやジャケットに重ねたり、モッズコートやジャケットなどに用いたりしてさらにバリエーションを強化する。一方「リスタイル」では過去シーズンのビビットな色合いではなくシャーベット色に落とすことで変化をつける。
渡邊クリエイティブ・ディレクターは、「この春夏は足首が見えるコーディネートも増える」といいソックスの合わせの重要性についても触れた。
メンズは多様なスーツスタイルに注目
第3部は「2023年春夏メンズコレクション」がテーマ。ゲストに國友崇裕・伊勢丹新宿店メンズ館6階メンズコンテンポラリーバイヤーが登壇した。
コレクション動向では、テーラリングの提案が際立った。今季大きな注目を集めたファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)による新生「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、クロップド丈のトップスやハーフパンツなどを織り交ぜながら、多様なスーツスタイルを見せた。大塚千践副編集長は、「ショーにはウィメンズモデルが歩いたり、ウィメンズバッグの“スピーディ”が登場したりと、ウィメンズのクリエーションの混ざり合いもポイントになりそうだ」とコメント。
「プラダ(PRADA)」や「エルメス(HERMES)」などは、軽やかな素材のテーラードジャケットを提案した。國友バイヤーは「酷暑の中でもスタイリングの幅を出せるので期待できる」とコメントした。そのほか、ツイードジャケットやスカート、グリッター素材のボトムスなどが注目アイテムに上がった。
伊勢丹新宿店メンズ館では2023年秋冬、本物・本質思考が高まり、普遍的なテーラードジャケットなどが売れた。王道のウールのセットアップ以外にも、ナイロンやニットアップなど多様な提案が響いた。シルエットは数シーズン続いたオーバーサイズの傾向に変化が見られる。24年春夏は勢いのある「MASU」が提案するような、コンパクトなトップスにボリュームのあるボトムスの合わせに注目しているという。小物もクラシカルなムードを受けて革靴の需要が高まっているほか、ショルダーバッグも好調だ。國友バイヤーは本物・本質思考の傾向は24年春夏も継続すると見ているといい、上質な素材使いや素材が際立つカラーに注目する。