エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES以下、ELC)はこのほど、新興企業を対象とした傘下のファンド、ニュー インキュベーション ベンチャーズ(NEW INCUBATION VENTURES以下、NIV)を通じて、中国・上海を拠点とする高級フレグランスブランド「メルト シーズン(MELT SEASON)」の少数株式を取得した。持ち分や取得額は明らかにされていない。
「メルト シーズン」は、アイウエアブランド「ジェントルモンスター(GENTLE MONSTER)」に携わり、音楽業界で要職に就いていたリィシィ・ニィー(Lishi Ni)が2020年に設立。中国発のフレグランスブランド「トゥ サマー(TO SUMMER)」や「ドキュメンツ(DOCUMENTS)」と同様、中国の美学をモダンに取り入れていることで知られる。香水の価格はクラシックラインが980人民元(約1万9000円)、ハイエンドラインが1280人民元(約2万5000円)。アロマキャンドルやディフューザー、ボディーウォッシュやボディーローション、ハンドクリームなどのボディーケア商品も取り扱う。
同ブランドは、20年のワン・キャピタル(ONE CAPITAL)が主導するシードラウンドに続いて、22年初めにブリーズ・キャピタル(BREEZE CAPITAL)が主導する1000万人民元(約2億円)以上のエンジェルラウンドで資金調達を行った。昨年8月には、「上海の長い夜(Life and Death in Shanghai)」の著者である鄭念(Nien Cheng、ニェン・チェン )の邸宅だった上海の歴史的建造物に店舗をオープンした。その後、北京の複合商業施設、三里屯太古里(TAIKOO LI SANLITUN、タイクーリ・サンリトン)や、上海のショッピングモールの静安ケリーセンター(JING AN KERRY CENTRE)や前灘太古里(TAIKOO LI QIANTAN)、深圳の萬象城(THE MIXC、ワンシャンチャン)など人気のショッピングスポットに6店舗をオープンした。
「メルト シーズン」のニィー創設者は、変化する中国の消費者ニーズについて「高価格帯のニッチなフレグランスの購入に慣れており、ブランドに対して商品の品質やビジュアルやメッセージ性などより多くのことを期待している」と語った。
ELCは声明で「『メルト シーズン』は中国の美学と価値観を現代的に再解釈し取り入れている。独自の息吹を感じさせ、当社の企業文化ともマッチする」と述べた。今回の出資はNIVにとって2番目の中国関連投資となる。9月には、中国のクリーンビューティブランド「コードミント(CODE MINT)」への出資を発表した。中国はここ数年、ELCのビジネス戦略の中核を担っている。
調査会社カンター(KANTAR)によると、中国のフレグランス市場は年平均成長率20%以上で拡大し、26年には売上高が371億3000万ドル(約5兆3838億円)に達すると予測されている。