韓国の大手EC企業クーパンが12月18日、ラグジュアリーEC大手のファーフェッチを買収した。経営破たんの瀬戸際にあったファーフェッチに対しての実質的な救済で、創業者のジョゼ・ネヴェス最高経営責任者(CEO)をのぞく全取締役は辞任する。ピーク時には時価総額2兆円を超え、同業のYNAPの買収も予定し、世界のラグジュアリーECのプラットフォームとも目されていたファーフェッチに、何が起こったのか。(この記事は「WWDJAPAN」2023年12月25日&2024年1月1日合併号から抜粋・加筆しています)
クーパンは米投資会社グリーンノークス・キャピタル・パートナーズ(GREENOAKS CAPITAL PARTNERS)と提携、ファーフェッチに対して5億ドル(約710億円)の資金援助を実施する。クーパンは韓国のアマゾンとも呼ばれる韓国発のEC大手で、24時間以内に配送するスピード配送により韓国で急成長を続けており、現在は米シアトルに本社を置く。従業員数は約6万3000人で、2023年1〜9月期の売上高は前年同期比16.8%増の178億ドル(約2兆5276億円)で、純利益は3億2700万ドル(約464億円)だった。ニューヨーク証券取引所に上場しており、創業者のボム・キムCEOが、議決権の76%の株式を握っている。ファーフェッチとの取引が公表された後、株価は5.1%下落して16.15ドル(約2293円)となり、同社の時価総額は289億ドル(約4兆1038億円)。
痛い「リシュモンとの関係悪化」
クーパンが救済に乗り出したことで、事業継続が可能になったファーフェッチだが、今後も予断を許さない状況が続く。最も大きいのが、「カルティエ」「ヴァン クリーフ&アーペル」「クロエ」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(以下、リシュモン)との関係悪化だ。ヨハン・ルパート=リシュモン会長は常々、強力なラグジュアリーECのプラットフォームの確立を掲げ、ファーフェッチへの出資や同じくラグジュアリーECの「ユークス」「ネッタポルテ」を展開する傘下のユークス ネッタポルテ(以下、YNAP)との合併を後押しするなど、同社を支援してきたものの、今回のクーパン買収後に、「合意を破棄する」との声明を発表。経営危機が表面化した11月29日には、「当社はファーフェッチに対する金銭的な義務はなく、融資や投資も考えていない。8月に発表したファーフェッチとの取引を含め、状況を注意深く見守っている。現時点で、当社の傘下ブランドやYNAPはファーフェッチ・プラットフォーム・ソリューションを導入しておらず、それぞれのプラットフォーム上で運営している。必要があれば、またアナウンスする」という声明を発表していた。
リシュモンはもともと20年11月、中国アリババとともにファーフェッチへの出資を含む資本提携を発表。それまで中国のJD.COM(京東集団)と関係の深かったファーフェッチに対して、さらにアリババを引き入れる形での資本提携は、多くの業界関係者を驚かせた。これは、ビッグデータと、リアル/オフラインの統合、さらには傘下のYNAPの統合も視野に入れたルパート会長の「強いラグジュアリーECプラットフォーム構想」の一環だった。YNAP統合の合意破棄は、いわばリシュモンがファーフェッチと距離を取ることの現れとも言える。実際にリシュモンは12月18日の声明の中で、ファーフェッチが20年11月に同社に発行した3億ドル(約426億円)相当の転換社債について、「状況を踏まえると償還されないと考えるのが妥当だろう」と述べている。
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