ビューティ

ルチア・ピカが語る「バイレード」の自由な精神と創造性 「香水とメイクの架け橋を作る」

スウェーデン・ストックホルム発のフレグランス&メイクアップブランド「バイレード(BYREDO)」は、クリエイティブイメージ、メイクアップパートナーであるルチア・ピカ(Lucia Pica)が手掛けたホリデーコレクションを限定販売中だ。ルチアはフリーランスのメイクアップアーティストとして20年、ビューティ業界で活躍した後、2015年から6年にわたり「シャネル(CHANEL)」のクリエイティブメイクアップ&カラーデザイナーを務め、22年に現職に就いた。「バイレード」でのものづくりやブランドへの思い、最新コレクションについて聞いた。

「創業者のベンは人々に自由を許し最高のものを引き出す」

WWD:「バイレード」で仕事をするまでの経緯は?

ルチア・ピカ=「バイレード」クリエイティブイメージ、メイクアップパートナー(以下、ピカ):創業者のベン・ゴーラム(Ben Gorham)とは共通の友人を通じて知り合ったが、その時は自分の今後について軽く会話しただけで、わりと唐突なできごとだった。最初のミーティングでは特に具体的なプロジェクトについて話したわけではなく、まずは知り合いになってお互いに合うかどうかを確認した。その時は彼が私に「バイレード」のメイクアップディレクターを引き継いでほしいと思っていることすら知らなかった。

幸運なことに物事はごく自然にすんなりと流れ始めた。すぐに意見が一致し、ブランドに対する哲学や目標も合致した。ベンは常に自分のやることに対して答えとインスピレーションを見出そうとしている。彼は真に意図してそれを行っていて、私もそれを踏襲している。彼の真摯な態度は本当に素晴らしい。

WWD:ゴーラム創業者との会話で印象に残っていることは?

ピカ:一番印象に残っているのは、最初の会話だ。約1時間の会話の中で、物事の捉え方がまったく同じだったことにとても惹かれた。まるで同じ言語を話しているような、昔から彼を知っているような安心感を持てた。

WWD:「シャネル」でのクリエーションと「バイレード」でのクリエーションの違いは?

ピカ:興味深い違いとしては、ブランドの創始者やオーナーといったクリエイティブな人たちと頻繁に話をするようになった。大企業では、往々にして多くの人が関わっているため、多くのステップを省かれることがあるが、「バイレード」では心をオープンにして何度も話し合うことができる。それもあって物事が速く進み、ブランドの核心やエモーショナルな部分に直接触れることが容易にできる。ベンとの仕事はありのままの新鮮なエネルギーに触れられる自由があると思っていて、それは特別でありながら正しい道のりだと思う。ほかの人とのコラボレーションも同様だ。彼は人々に自由を許すことで、結果、彼らから最高のものを引き出している。

WWD:これまでの経験で「バイレード」の仕事に生かされていることは?

ピカ:「バイレード」でのこの数年間、自然なフローが流れると同時に刺激的な面もあり大変充実している。志を同じくするクリエイティブな人たちと一緒に仕事ができて、しかも表現の自由があるのは本当に素晴らしいこと。ベンと彼が創り上げたブランドはとても魅力的で、そのメイクアップセクションを担当し開発することはスペシャル。これからも挑戦したいことがたくさんある。このコラボレーションは本当に素晴らしい。

ホリデーコレクションのテーマは“セルフイリュージョン”

WWD:今回のホリデーで新しいメイクアップコレクションを発売したが、製作の過程はどうだった?

ピカ:ホリデーコレクションは、“バル ダフリック(Bal d'Afrique)”の香りについてベンと話した後に生まれた。彼は、父親の日記を読んだ記憶だけで未踏の地に愛着を持ち、香りを通じて人々をその地に連れて行った。そしてそれは感情移入できる世界を創り上げ、その経験をメイクアップや色に昇華したいという私のアイデアと一致した。“セルフ・イリュージョン・コレクション”のアイデアは、この神秘の世界を創り出すことだった。リアルで生きていると感じられる夢の中の風景があり、もしかしたら過去に見たことがない「何か」が現実に訪れるのかもしれない。現実と夢の感覚が共存しているかのような。私はこのような心情を色で想像し、その中間的でスモーキーな色合いに変換してみた。グレーでもなく、青でもなく、こげ茶色と暖かなテラコッタカラー、そしてアクセントとしての明るい色みを加えた。「幻想状態」、そんなムードを形にしたいと思った。

WD:ホリデーコレクションのおすすめの使い方は?

ピカ:このコレクションでは、その日のインスピレーション次第で、何を主役にするかを決めることができる。パレットにスポットライトを当てたいなら、シルバーかゴールドのどちらかをアクセントにしたスモーキーアイで楽しんでほしい。このパレットは寒色系と暖色系を備えていて、チャコール、グレーブルー、そしてシルバー、それらを同時に使うことももちろん素敵。チャコールグレーを使って、目の奥行きや目頭、目尻に深みを出し、丸くぼかしてスモーキーアイの効果を出す。そして、青みがかったシルバーグレーをまぶたの内側に入れ、目尻を含む上部にはシルバーのアクセントを加える。暖色系にする場合も同様にブラウンとゴールドを用いる。あるいは、アイライナーをまぶたの縁の内側に使い、まつ毛の生え際をはっきりさせてから、パレットのブラウンとゴールドを上にのせてなじませるのもおすすめ。

マスカラを主役にするなら大胆に使って、艶やかで透明感のある肌のトーンに。私自身はブルーのマスカラは使用しないが、“イロ―デッド エコー”はグリーンとブルーの中間の色で、温かみのあるグレイッシュなトーンによって絶妙なバランスが生まれ、遊び心がありながら洗練された、少しミステリアスな雰囲気を醸し出す。意外性のあるものに挑戦する気持ちと、過剰になりすぎない洗練された安心感を合わせ持つような繊細さにこだわった。

“カジャールペンシル パープレックスト”は、ブロンズ系のカーキなのであまり正確に線を引かなくても大丈夫。指先で内側に塗ったり、まつ毛の生え際に沿わせて外角に向かって少し伸ばしたり。とてもソフトで繊細なので、正直なところこのペンシルで失敗することは難しいはず!

リップスティックは自信に満ちた赤の中にテラコッタカラーも含み、より使いやすく多様な肌のトーンに適応する。このコレクションは、私にとって本当にウエアラブルなコレクションだ。

「メイクアップにブランドの本質を反映させたい」

WWD:今後、「バイレード」で挑戦したいことは?

ピカ:「バイレード」は内面的な感情の世界を物語るブランドで、見た目の美しさだけでなく、商品を使って素晴らしい体験をしてもらえる。私の役割はメイクアップを施し、顔になじませ、自分の一部となる体験を与えるテクスチャーを提供することで自己表現を実現し、なおかつ個性を内側から輝かせること。それを可能にする商品を作り提供することにより皆さんが楽しみながら自己を見出し、創造性を探求することが大切だ。「バイレード」のメイクアップが皆さんの顔で素敵に輝くことに熱い思いをかけている。さらに言えば、「バイレード」の中でフレグランスとメイクアップの架け橋を作り、メイクアップに「バイレード」の本質を反映させたいと願っている。

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