1ドルが140円を超える円安、長引くロシア・ウクライナ紛争とパレスチナ紛争の勃発、猛暑と暖冬―経済も社会情勢も地球環境も不安定だった2023年は、ファッション&ビューティ業界にとって、どんな年だったのか。
コロナ禍を経て、資本や体力のある強者がさらに強くなる傾向にあったが、引き続きLVMH、インディテックス(「ザラ(ZARA)」等)、ロレアルといったトップ企業は盤石。ファーストリテイリングも過去最高業績を更新した。特にLVMHは「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」メンズのファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)起用で大きな注目を集め、「ディオール(DIOR)」のコスメの好調ぶりで圧倒的な強さを見せた。一方、ケリングやエスティ ローダーにとっては課題が見える年だった。
消費は引き続き、高額品が好調。外商をアップデートした伊勢丹新宿本店や阪急うめだ本店は、過去最高売上高をマークした。同時に円安を追い風に訪日客が急増。ブランドも商業施設もインバウンド需要の有無に大きな影響を受けている。
そんな23年を編集部員が重大ニュースを挙げながら総括し、24年を予測。米中の「WWD」エディターによる振り返りと展望コラム、23年のニュース時系列まとめ、ヒットアイテム番付と共にお届けする。(この記事は「WWDJAPAN」2023年12月25日&2024年1月1日合併号からの抜粋です)
記者プロフィール
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欧米で先行するサステナ規制、
日本も行政主導の動きが始まる
木村和花編集部記者(以下、木村):サステナビリティの議論は「環境再生型農業」と「トレーサビリティー」が2023年の2大トピックだった。先進企業では、二酸化炭素排出量の削減は前提として取り組みつつも、地球に負荷を与えないだけではなく、いかにプラスの影響を与えられるか、という考え方が広がっている。パタゴニア(PATAGONIA)は「リジェネラティブ・オーガニック」に関するセミナーを、日本の農業関係者に向けて開催した。日本でもさらに広まる可能性を感じた。トレーサビリティーに関しては、いよいよEUを中心に新たな法規制が動き出す時。製品のライフサイクル全体の開示を要求するデジタルプロダクトパスポートの取り組みも始まる。
向千鶴編集統括サステナビリティ・ディレクター(以下、向):私が気になったのはゴールドウイン(GOLDWIN)による、スパイバー(SPIBER)の構造タンパク質素材「ブリュード・プロテイン繊維」を使った製品の量産・販売の開始。というのも、ここ数年盛り上がってきた革新的なサステナブルな素材開発は一通り出そろい、今後はそれをいかに現実の服として使用するか、そしてスケールするかのタイミングにあるから。9月末にゴールドウインが主力4ブランドから「ブリュード・プロテイン繊維」を採用したアイテムを世界に向けて発売したのは先駆けであり、象徴だと思う。続いてTSIやロンハーマン(RON HERMAN)も同繊維を使ったアイテムを発売した。
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