パントン・カラー・インスティテュート(PANTONE COLOR INSTITUTE以下、パントン)が毎年発表する「カラー・オブ・ザ・イヤー(Color of the Year)」。2024年は、ピーチとオレンジの中間色である、“ピーチファズ(Peach Fuzz : Pantone 13-1023)”が選ばれました。穏やかさや人間味、ポジティブさを帯びた、淡くやわらかいトーンなので、着こなしにも取り入れやすい色です。不穏な情勢が続く中、ファッションにも思いやりや調和を託す意識がうかがえます。今回は、2024年春夏ミラノコレクションから、“ピーチファズ”系カラーの迎え方をつかんでいきます。
“ピーチファズ”は、より赤味の強い23年のトレンドカラー“ビバ マゼンタ”に比べると、ぐっと柔和な色で、愛らしい雰囲気を帯びています。平和や共感といったメッセージも感じられます。例えば、「ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)」は、サテン調の艶めいたスカートにこの色を取り入れました。ボディーにうまくなじんで、ヘルシーな色香を薫らせています。一般的なベージュよりオレンジ味がある分、体温や親しみを感じやすいトーンです。素肌と響き合う、春夏の装いに役立ちそうです。
穏やかなニットの風合いにマッチ
やさしげなトーンのピーチファズは、同系色でまとめるとソフトな印象が強まります。ワンピースやセットアップは取り入れやすいアイテムなので、おすすめです。
「ジル サンダー(JIL SANDER)」のニットワンピースは、ウエストで色と生地を切り替えたデザインが特徴的。上半身はボディーラインにピッタリとフィットする一方、ボトムは裾に向かって広がる“フィット&フレア”のシルエットです。ニットのリラックスした雰囲気にピンクがマッチし、ベージュ系の色合いがたっぷりのドレープを引き立てています。
シアーでつくる自然体なレイヤード
薄手のシアー素材を取り入れたレイヤードは、春夏の新たなスタンダードになりつつあります。エアリーでライトな質感は、ピーチファズとも好相性です。
オレンジがかったピーチファズ系の装いを用意したのは、「ミッソーニ(MISSONI)」。ボディースーツの上からシアー素材のワンピースをレイヤードして、女神のような着映えに仕上げています。素肌が透けたときにあたたかみを醸し出してくれるのも、この色合いのよさ。気負わない自然体のムードに導きます。
ベージュ寄りでニュートラルな印象に
トレンドカラーは、自分好みにいくらか拡張してとらえるのが着こなしのコツ。ピーチファズの場合、ピーチ寄りとベージュ寄りにずらしたアレンジが可能です。ベージュトーンを強めると、ヌーディーな見た目に仕上げやすくなります。
「プラダ(PRADA)」は、ニュートラルなベージュ系カラーで、ミニマルなワンピースを仕立てました。羽衣のようなシアー素材を重ねて、霞がかった空気感でボディーを包み込んでいます。透明感を醸し出しつつ、うっすらと光沢も添えて、ぬくもりを帯びたベージュ系ならではの質感が漂っています。
ピンクはあえてマニッシュに
ピンク味を高めると、一般的にはガーリーな印象が強まりがちです。大人のムードで着こなすには、テーラードジャケットのような正統派イメージを帯びたアイテムを選んで。スーツやセットアップに取り入れる選択肢もあります。
「グッチ(GUCCI)」は、マニッシュなテーラードジャケットとマイクロ丈のショートパンツを合わせました。上下を淡いピンクで統一し、キュートさとクールな印象をミックスしました。足元は、プラットフォームのローファーでウィットフルに。サングラスとビッグネックレスでグラマラスさを添えて、ピーチ系のルックに強さも盛り込んでいます。
テイストミックスでムードチェンジ
ピーチファズはトーンが濃くないので、大胆なアイテムを使って、テイストミックスに仕上げる着こなしを選べます。シースルーのような素肌見せのアレンジともなじみやすいです。やや攻めたアイテムを迎えて、上下でムードをずらすと、甘さをトーンダウンできます。
「MSGM」は、ピンクのポロトップスに、ピーチファズ系のジャケットを重ねて、上半身をピンキーにまとめました。一方、ボトムスはメッシュのスカートでフェティッシュなムードに。上下でがらりと雰囲気を変えています。足元は、ハイソックスとストラップシューズでさらにムードをひとひねり。さまざまなテイストをミックスして、ピンク系ルックから別の表情を引き出しています。
ピーチファズは扱いが難しく感じるかもしれませんが、基本的なイメージである“ポジティブな気持ち”や“人とのつながり”をつかんでおけば、自分好みの味付けができます。春の定番であるパステルカラーにも似ているので、その延長線でトライしてみてください。ピンク系を普段着慣れない人にも取り入れやすい色味なので、この機会にぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。