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「ワイアード」と考える、生成AIと共に生きる2050年の未来予想図

ワイアード(WIRED)」はこのほど、次の30年を体感するカンファレンス「ワイアード フューチャーズ(WIRED FURTURES)」を、東京・虎ノ門ヒルズで開催した。毎年恒例の「ワイアード カンファレンス(WIRED CONFERENCE)」を改称し、パワーアップを図った形だ。

テーマは、“世紀の中間”を意味する“ミッドセンチュリー”。トークセッションには世界的な哲学者のデイヴィッド・J・チャーマーズ(David J. Chalmers)や、SF作家のキム・スタンリー・ロビンスン(Kim Stanley Robinson)、現役陸上選手の末續慎吾らが登壇した。参加者自身が手を動かすワークショップのチケットは、発売早々に売り切れたという(衣笠雄一郎コンデナスト・ジャパン「ワイアード」ビジネスソリューション部)。AIや空間コンピューティングが日常となった未来のライフスタイルやエンターテインメント、ビジネス、都市、そして地球について、読者が“追体験”できる場をつくりあげた。

生成AIの活用で個人の能力を拡張

生成AIなどの先端テクノロジーを活用した経営顧問を行うポスツ(POSTS)の梶谷健人代表によるトークセッション「生成AI “再”入門」では、まず生成AIの本質的な価値をおさらいし、6つの観点から2050年の未来を予想した。6つの観点とは、創造性、人とAIの関係性、仕事の仕方、人と人とのコミュニケーション、環境や情報とのインタラクション、人の在り方だ。未来予想は決して悲観的なものではなく、生成AIをどのように活用しながら新たな未来を創造していくか、多様な選択肢を共に考える前向きなもので、非常にワクワクした。

たとえば、自分が話している2分ほどの動画をアップロードするだけで、それ以降は打ち込んだテキストを自分のAIクローンアバターが話す動画を生成できる“ヘイゲン(HEYGEN)”というサービスがすでに開発されている。同サービスは、話者の感情や抑揚を再現するだけでなく、他言語への変換にも対応しており、言語の障壁は今後ますます小さくなっていくと考えられる。

GPT-4Vの“ビーマイアイズ(BE MY EYES)”は、カメラに写した物の情報を声で解説する、視覚障害者向けのサービスだ。カメラに写した食べ物の原材料をAIが分析し、サービス利用者のアレルギー情報を鑑みて食べられるか否かを教えてくれたり、買い物中にカメラに写した商品を声で説明してくれたりなど、視覚障害者の生活を大きくサポートする。

アーティスト兼研究者の徳井直生とトラックメーカー兼MPCプレイヤーのスタッツ(STUTS)らによるトークセッション「生成AI時代の『音楽のゆくえ』」では、テキストからサンプルを生成するツール“ニュートーン ゲン(NEUTONE GEN)”を用いてスタッツが即興で楽曲をつくり、披露した。サンプラーやターンテーブルが発明されたことでヒップホップというリミックスによる新ジャンルが確立したように、テクノロジーの発展は、楽譜も読めず、楽器も弾けない人たちにも音楽で何かを表現する術を与えてきた。人間の創造性と生成AIが生み出す偶然性との掛け合わせによって、2050年には、今はまだ予想もつかないような新たな音楽が生まれているかもしれないと思った。

「チャットGPT」を含め、生成AIのトレンドに乗り遅れていた筆者だが、「ワイアード フューチャーズ」の1日を通して最新トレンドをキャッチアップできただけでなく、AIとの向き合い方について、改めて思考を巡らせることができた。AIの画像生成技術がたった1年でも劇的な進化を遂げたように、動画や音楽などあらゆる領域で、生成のスピードやクオリティがますます向上すると考えられる。近い将来、生成AIの個人活用は当たり前の時代が来るだろう。「ワイアード フューチャーズ」は、自分の仕事や生活に生成AIやその他のテクノロジーを生かすヒントがたくさん散りばめられたイベントだった。

「ワイアード」とは

「ワイアード」は1993年にアメリカで創刊。メディアの根底に“闘う楽観主義”という思想を持ち、コンテンツを作るだけでなく、その価値を社会に実装するところまで手掛ける。松島倫明「ワイアード」日本版 編集長は同メディアのコンテンツについて、「未来を予想しているのではなく、未来の可能性を拡張している。未来の選択肢を増やすメディアでありたい」と11月に「WWDJAPAN」の取材で話した。

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