ファーストリテイリンググループの「プラステ(PLST)」は、2024年春のテーマに“クワイエット・インパクト(Quiet Impact)”を掲げた。“日常の中の非日常な驚き”という意味だ。ミニマルにサプライズを盛り込むという世界トレンドに沿った提案と映る。このブランドが得意とする上品テイストを軸にしながらも、普遍性と意外性の掛け合わせを試みている。具体的には透け感と光沢感のある素材を打ち出した。さらに、「ユニクロ(UNIQLO)」が強みとしてきた「ホールガーメント」ニットもプラステ流にラインアップしている。
アイテムやシルエットはベーシック主体だが、サテンやシアー系など、表面感を帯びた素材でインパクトを乗せている。ゆるめに編まれた粗野な風合いのローゲージニットトップス(8990円)と光沢のあるサテン仕立てのパンツといった「ざらっ×つやっ」コントラストを利かせた組み合わせを提案。異素材の質感違いを際立たせるマッチングだ。
「ちょっとだけ違うものがほしい」に対応
「ちょっとだけ変わったものが欲しい、少し周りと違うものが欲しいといったニーズに応えている」(プラステ マーケティング部・今井妙子氏)。シアードルマンボリュームシャツ(8990円)は透けすぎない、控えめなさじ加減。「ジャケットを羽織れば、オフィスにも着て行ける。脱いだらちゃんとトレンドルックになる。」。23-24年秋冬から打ち出した新コンセプト“きちんとしていたい時の「毎日服」”に沿った提案だ。今回は袖がドルマンになったややオーバーサイズで企画した。
グレージュなどの近い色でグラデーション風にずらす二アカラーで“クワイエット・インパクト”仕様に仕上げている。つやめいた素材を使いながら、落ち着いたグレーをキーカラーに選んだ。セットアップ人気が続く中、あえて上下をきっちりはそろえない。色は微妙に違っても、素材は同じなのでなじみやすく、逆にこなれて見える着こなしだ。
次の“スティックパンツ”と期待
「ホールガーメント」ニット
「ホールガーメント」ニットのシリーズは、23年秋冬からヒットが続く。「主力商品である“スティックパンツ”に続く、次の柱に育てていきたい」という。「ホールガーメント」ニットで秋冬に提案していたロングスリーブのワンピースに代わって、春夏はVネックのノースリーブワンピース(1万5000円)を推す。脇が開きすぎないため、1枚でも安心して着ることができ、体に張り付かず涼やかに着られて立体フォルムが叶う。薄着になる夏の装いに1枚で決まるワンピースは頼もしい。
「ホールガーメント」ニットのカーディガン(1万1000円)は、前後の2ウェーで着られるデザイン。ペプラムのノースリーブニットトップスも登場し、「ホールガーメント」シリーズのバリエーションがいっそう豊富になった。家の洗濯機で洗えて型崩れしにくいのは、汗をかくシーズンに重宝しそうだ。
デニムの新顔は“プラススタイルジーンズ”。看板商品“スティックパンツ”のデニム版だ。レーザー加工でセンタープレスを入れて、きれいめに仕上げた。「10年前のオフィスカジュアルと今のオフィスカジュアルは違ってきている」。新たなクリーンカジュアルの選択肢を示したいという狙いもあるようだ。
きちんと感あるアイテムも充実
きちんと感を備えたカテゴリーでは、伸縮性を持つカットソー素材で仕立てた“トリコットシリーズ”を新たに用意した。“スティックパンツ”、ストレートパンツ、ジャケット、ジレをそろえている。
色はエレガントなグレーの濃淡を軸に据えた。春はセージグリーン、ペールピンク、ペールブルー、夏はトマトレッド、ロイヤルブルーのビビッドカラーで彩りを添える。落ち着いた雰囲気のトーナルカラーで整える装いを提案している。
「ユニクロ」の大型店舗内に「プラステ」がインショップ展開で増えている。ブランドを知らなかった人にも知ってもらえる機会が増えてきたという。柔らかいニュアンスカラーやきちんと系、きれいめアイテムを探していた人を呼び込んでいるようだ。オフィスカジュアルにジーンズを持ち込む提案には、きちんと感・品のよさを柱に据えつつ、これまでの枠を超えるチャレンジがうかがえた。