ジェイアール名古屋タカシマヤ(JR名古屋高島屋)は、2023年の暦年(1〜12月)の売上高が前年比14.0%増の1891億円(速報値)になったと発表した。過去最高だった22年を232億円上回った。コロナ前の19年に比べて入店客数は16.0%減っているにもかかわらず、ラグジュアリーブランドや時計・宝飾品など高額品が活発に動き、売上高を押し上げた。
JR名古屋高島屋が発表する売上高には、百貨店だけでなく隣で営業するショッピングセンター(SC)のタカシマヤゲートタワーモール(TGM)、イオンモール岡崎に入るデパ地下のタカシマヤフードメゾン岡崎が含まれる。
コロナ以降、富裕層や訪日客に支持される大都市の百貨店の好調が続いている。24年3月期の売上高見通しでは国内1位の伊勢丹新宿本店が3727億円(前期比13.8%増)、2位の阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)が2940億円(同12.6%増)にそれぞれ上方修正した。いずれも前期(23年3月期)に記録した過去最高売上高を更新する。SCを含めた売上高であるもののJR名古屋高島屋は、3位の西武池袋本店(23年2月期1768億円、今期見通しは不明)を追い抜く公算が高い。
JR名古屋高島屋は2000年3月に開業した。運営するジェイアール東海高島屋は、JR東海と高島屋の合弁会社。初年度の00年度に売上高608億円でスタートし、14年度には1260億円まで成長して松坂屋名古屋店を抜いて名古屋地区の一番店になった。17年4月には隣にTGMが開業し、2館体制になった。
特選売り場の増床効果
近年の好調は、第一にラグジュアリーブランドに代表される高額品のフロア増床、第二に話題性のある催事が奏功した。名古屋駅直結という地の利を最大限に生かし、愛知、岐阜、三重の東海三県の広域から人を集める。同店に限らず名古屋は、東京や大阪に比べて訪日客は少ない。にもかかわらず、著しい成長を遂げている。
高額品については22年から段階的に特選売り場(ラグジュアリーブランド)を増床し、面積を1.5倍にした。低層階だけでなく7階のメンズフロアも「ルイ・ヴィトン」「グッチ」「ジミーチュウ」「プラダ」「ディオール」「ベルルッティ」などのブティックを初めて入れた。担当したグループマネージャーの林智基氏は「メンズ商品を一堂にそろえることで、よいものを求める東海三県のお客さまの期待に応えるようにした」と話す。
上層階は集客に苦労するのが百貨店では一般的だ。しかし同店の場合はTGMと各フロアで連結していることもあり、若い世代やカップルの行き来が多い。「百貨店はお客さまの年齢が上に偏りがちだが、当店の場合は若いお客さまが駅ビル感覚で利用してくださる」(林氏)。狙い通り、40代の若い客が7階の特選売り場をよく利用するようになった。
近接する大名古屋ビルヂングに21年に開いた高級時計売り場「タカシマヤウオッチメゾン」と合わせて、高額品の品ぞろえが充実した。これがもともと顧客基盤の弱かった外商事業を強化する上での武器になった。
熱気を生み出すチョコレート催事
同店では今月18日から2月14日まで名物催事が行われる。「アムール・デュ・ショコラ」は全国で数あるバレンタイン催事の中でも最大級の売り上げと盛り上がりを見せることで有名だ。23年の開催では会期中に70万人以上が来場し、34億円以上を売り上げた。こちらも広域から人を集め、会期中に何回も訪れる人もいる。地元メディアで紹介されてり、インスタグラムで拡散されるケースも多い。
今年の開催では10階の催事場をメイン会場に、1、3、4、5、6、8、9階にもサテライト会場を置く。会期中には国内外から約30人のスターシェフが来場する。彼らと写真を撮ったり、サインを書いてもらったりしようと訪れる熱烈なファンも多いため、会場は熱気で包まれることになる。
限定商品やコラボ商品の企画も充実させたり、「推し」のチョコやシェフに投票する総選挙を実施したり、日替わりのイベントを開いたり、チョコレートのテーマパークにいるような没入感を作り出す。客単価は6000〜7000円。「カード顧客のデータを分析すると、会期中に何度と来場する方も珍しくない」(バイヤーの金山晴香氏)。出店するシェフやブランドにとっても「アムール・デュ・ショコラ」は、マーケティングの上で欠かせない場として認知されている。