毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月8日号からの抜粋です)
村上:新年号なので未来を考える機会を作りつつ、異業種の人との対談からファッションの可能性を考えることができたらと考えました。そんな折に三越伊勢丹の「フューチャーファッションEXPO」がテーマとして掲げる5つの未来シナリオを知り、刺激されました。あり得ない未来の話のように聞こえますが、荒唐無稽ではなく、2050年とか2100年には起こっているかもしれない世界。そんな世界におけるファッションとはどんなものかを、皆さんに想像していただきました。
臼井:割と現実的な議論が多かったですね。私は「雨の止まない世界」について取材しましたが、「アンドワンダー(AND WANDER)」の池内啓太デザイナーの、「レインジャケットが雨を弾く音が好き。音で服を選ぶ」という話は、私にない発想だったし、鬱陶しそうな「雨の止まない世界」を生きる人のリアリティーも伴っているように思えました。同時代に生きていても、私にとって子育てをしている人の世界や、Z世代の世界は、自分に親和性のない“異世界”なんですよね。想像し得ない世界を想像するには、生活者視点が大事。それは未来の話でも日常のビジネスを考える上でも大事なのではないかと思いました。
生活者視点が異業種から期待されている
村上:まさにそこが、異業種の人たちがファッションやビューティ業界に期待している部分だと思います。清水建設は海上1000mに浮かぶ100万人都市の構想を持っていて、すでに事業化に向けて動き始めているそう。そんなことを実現する技術はありながら、そこでの生活については白紙。生活者のレベルまでブレークダウンして、リアリティーある生活を創造にしていくことは、ファッションやビューティ業界の得意技で、異業種から求められている思考法です。
臼井:「ビームス(BEAMS)」が作った宇宙服も一緒ですよね。「宇宙には色がないのでカラフルにしよう。野口聡一さんの好きなアメカジテイストを取り入れよう」と、感性にまで想像を膨らませた発想でした。
村上:まさしく。5つのテーマはともするとディストピアに聞こえるけど、そんな世界だからこそ、自己表現や高揚感は大事。ファッションとビューティの役割は、どんな世界にもあると改めて確信しました。そして、気分が上がったり、美しかったりしないと未来に残らないんですよね。そんなメッセージが伝わるとうれしいです。