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特集 メンズ・コレクション2024-25年秋冬

現代の男らしさを考える「ロエベ」 情報過多の時代が生んだスタイルの“コラージュ”【2024-25年秋冬メンズコレまとめ】

ロエベ(LOEWE)」は1月20日、パリ・メンズ・ファッション・ウイークで2024-25年秋冬メンズ・コレクションを発表した。現代アートを愛するジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)は今季、アメリカ人アーティストのリチャード・ホーキンス (Richard Hawkins)とコラボレーション。“コラージュ”のアイデアを取り入れながら、情報にあふれる現代の男性らしさを探求した。

男性たちのコラージュ作品が飾られた会場

会場は、前回と同じパリ4区にあるフランス共和国親衛隊の馬術トレーニングアリーナ。半年前には彫刻家リンダ・ベングリス(Lynda Benglis)による巨大な噴水のような作品を会場中央に設置したが、今季は30年以上にわたって男性の体をテーマにしてきたホーキンスが制作した色彩豊かなコラージュ作品で真っ白な空間を彩った。そして、教会のステンドグラス窓を想起させる均等に並んだ大きなスクリーンには、「ロエベ」の象徴的なウインドーディスプレーを手掛けてきたホセ・ペレス・デ・ロサス(Jose Perez de Rozas)による1960年代のウインドーデザインをベースに、男性有名人やモデルの自撮り映像や画像とホーキンス自身の猥雑なソースを組み合わせて制作された12のビデオコラージュを映した。その中には、ブランドアンバサダーを務める俳優のジェイミー・ドーナン(Jamie Dornan)やジョシュ・オコナー(Josh O'Connor)、NCTのテヨン(Taeyong)をはじめ、ネットフリックスシリーズの「エリート(ELITE)」で一躍有名になったマヌ・リオス(Manu Rios)や人気ティックトッカーのヴィニ― ハッカー(Vinnie Hacker)までが含まれる。

ホーキンスの作品を10年以上前からフォローしていたというアンダーソンは、「リチャードの作品を好きなのは、そこにユーモアがあるから。面白いと同時に時代を物語っている」とし、「彼とインスタグラムに投稿している動画について話したんだ。そこで、男性像やマスキュリニティーはどこにあるか?ということを考えた。今はセレブリティーカルチャーからモデルやインフルエンサー、オンリーファンズまで、さまざまなことが起こっている。メディアが全方位的になった今、ファッションの未来はどうなるのか、どのように服を組み合わせるかというアイデアに向き合った」と説明。それは、一見別々になったアイテムが実はくっついているというデザインとなって、ショーに登場した。

情報にあふれる時代を生きる多様な男性像

象徴的なのは、オックスフォードシャツとカーディガン、レザーパンツ、トレンチコートが一つになったルック。ほかにも、ジャケットとパンツ、パンツとソックス、ソックスとスニーカーといったように一体化したアイテムが着こなしを“強要”する。脱ぎ散らかした色とりどりの服を中に縫い付けたコートや、フーディが腹巻きのようにウエストに溜まったレザーパンツは、寝坊して急いで出かける男子のイメージ。締め忘れたかのようにベルトのパーツが垂れるレザーパンツやジーンズもある。

また、丸みのあるシルエットを描く極太のカーゴパンツ、ブルジョア風の太いボウタイを結んだパイソンやシアリングのショートコートやデニムシャツ、裾に向かって柄が小さくなるチェックシャツやケーブルニット、ライン入りの白ソックスを引き伸ばしたタイツ、カシミアとシルクをシアリングのように仕上げたジャケットといったひねりの効いたアイテムを、レトロスポーティーなトラックパンツやスケーターシューズ、素朴な雰囲気のスキーニット、ぜいたくな素材のコート、かっちりしたスーツとミックス。そこには、情報にあふれる時代を生きる多様な男性像が反映されている。

また、前述のホーキンスの作品は会場演出やインビテーションに用いられただけでなく、ウエアやアクセサリーにも反映された。フーディやジョガーパンツ、アイコンバッグの“スクイーズ”には繊細なビーズ刺しゅうで、“パズルトート”には刺しゅうやレザーのマルケトリー(象がん)で作品を再現。フロアレングスのガウンやドレスのようなニットは、1500時間をかけて手編みで作られたものだという。そのほか、プリントや色使い、リングやチャームなどのアクセサリーにも、その世界観が垣間見える。

ザッピングするように次々と変わる音楽

異なる要素を組み合わせるコラージュというアイデアやさまざまな男性像の反映は、ショー音楽でも顕著だ。用いられたのは、全部で14曲。テレビをザッピングするかのように、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)の「ゴースト(Ghost)」やボン ジョヴィ(Bon Jovi)の「ウォンテッド・デッド・オア・アライブ(Wanted Dear Or Alive)」、ニルヴァーナ(Nirvana)がカバーしたデヴィッド・ボウイ(David Bowie)の「世界を売った男(The Man Who Sold The World)」から、ザ・クラッシュ(The Clash)の「The Magnificent 7」のパンククラブミックス、クラブ 69の「テイク・ア・ライド(Take A Ride)」のディスコミックス、さらに映画「荒野の用心棒」や「荒野の7人」のテーマ曲まで、時代もジャンルも違う曲が次々に流れた。

アンダーソンが考える現代の男らしさ

ショー後の囲み取材で、アンダーソンはマスキュリニティーに対する考え方について「もはや1つのチャネルでは語れなくなった。以前のファッションの世界では、『ああ、このムーブメントが今は起こっているんだ』という感じだったが、もうムーブメントは存在しない。かつてストリートにあったサブカルチャーは今やオンラインにあり、異なるタイプのセクシャルなサブカルチャーやセレブカルチャー、あるいは自分自身をアピールする新たな方法が生まれている。だから、『今シーズンは黄色が流行る』みたいなことは、もう通用しないだろう。服は自己ブランディングの全体像を輝かせたり、外の世界からどのように認識されたいかを示したりするもの。そこには、これまでとは異なる心理がある」とコメント。「それが将来的に何を意味するかは分からない。ただ、私たちが今いる場所、そしてこれから向かって行く場所という意味で、ブランド、セレブ、消費者、モデル、テレビ、ドラマシリーズ、映画などあらゆるものがハイブリッドされてメディアのコラージュのようになり、単一のプラットフォームに集約されていることはエキサイティングだと思う。それは瞬時に自由をもたらしてくれるし、突き詰めると、ファッションのゴールは未来を予測するものだから」と話した。

アンダーソンも語ったように、情報過多の社会で価値観が多様化する今、男らしさの定義をひとまとめに表現することは難しい。今季は、さまざまなブランドがあらためて「現代のマスキュリニティーやダンディーとは何か?」に向き合ったシーズンでもあったが、「ロエベ」はショーを通して説得力のあるメッセージを提示した。

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