生誕20周年を迎える人気テレビアニメシリーズ「プリキュア」。これをきっかけに、東映アニメーション(本社:東京都中野区)は、「自分らしさの表現」をテーマにした大人向けプロジェクト「プリキュアジェニック(precure genic)」を始動。ファッション、アート、音楽などさまざまなカルチャーの軸から「プリキュア」の表現を拡大していく。プロジェクトの第1弾として、ファッション・ライフスタイルブランドや人気イラストレーターとのコラボレーションアイテムを落とし込んだ空間が楽しめるポップアップストア「プリキュアジェニックルーム(precure genic room)」を3月1〜6日の6日間限定で下北沢アドリフトで開催する。
そんな「プリキュアジェニック」プロジェクトについて、「プリキュア」シリーズの生みの親である鷲尾天・東映アニメーション執行役員兼エクゼクティブプロデューサーと、「プリキュアジェニック」とコラボレーションした新進気鋭ブランド「ワイエムワイエム(YMYM)」のクリエイティブディレクターYUUKI、「シーロン(SIIILON)」のデザイナーOyuiに話を聞いた。
「プリキュア」とファッションを繋ぐ
新進気鋭のブランドとのコラボ
── 20周年プロジェクト「プリキュアジェニック」を立ち上げた目的は?
鷲尾天 東映アニメーション執行役員兼エグゼクティブプロデューサー(以下、鷲尾):20周年を迎えて、昔「プリキュア」を観ていて大人になった方たちに、子どものころ「これ好きだったな」「観ていたな」と振り返ってもらう機会をつくりたいという想いから、社内でプロジェクトが立ち上がりました。私は映像を面白くつくることを第一でやってきたので、今回は社内のプロジェクトメンバーに託して、さまざまなかたちでアプローチするのを見守っています。
── アパレルブランドとコラボレーションした理由は?
鷲尾:今回のプロジェクトは「自分らしさの表現」というテーマがあり、かつて「プリキュア」を観ていて大人になった方たちの「今」のカルチャーに寄り添うものを「プリキュア」の世界観で見せられたらと思っています。そこで「ファッションカルチャー」と「プリキュア」の融合を目指す一環として、アパレルブランドとのコラボレーションが実現しました。
── 今回のコラボレーションの話を聞いたときの感想は?
YUUKI「ワイエムワイエム」クリエイティブディレクター(以下、YUUKI):私は初期の「ふたりはプリキュア」を観ていた世代なので「絶対やる!」と思いました。「可愛い」に夢中だった気持ちを大人になって思い出したり、今だからこそ取り入れてもいいよね、と感じるきっかけになったらいいなと。
Oyui「シーロン」デザイナー(以下、Oyui):私は「プリキュア」世代ではなく、通ってきていないのですが、自分の6歳の子どもが「プリキュア」のグッズをたくさん持っていて。いつもコラボレーションのお話はあまり受けないのですが、今回はすぐ「やろう」と思ったことに自分でも驚きました。
「プリキュア」の幅広さを物語る
ふたりのデザイナーの
真逆のアプローチ
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── 今回「プリキュアジェニック」で発表するアイテムは、同じ題材ながらふたりの発想でまったく違うものができましたね。
YUUKI:私は帽子、クロップド丈の長袖Tシャツ、パンツ、ソックスを作りました。いつも自分で描いた絵や柄を洋服に落とし込むスタイルでブランドをやっているので、「プリキュア」のリボンや星が飛び交う可愛いイメージと、かっこよさを落とし込みたいと思いました。
今回のアイテムを手掛けるにあたり、もう一度「ふたりはプリキュア」を観たんですね。その時、改めて、「プリキュア」が魔法を使わず、素手でパンチしたりキックしたり飛びかかっていて、女の子でも性別関係なくやっていいんだ、と小さいときに衝撃を受けて元気をもらったことを思い出して。可愛いモチーフをそのままキュートさだけに持っていかないように意識しました。
鷲尾:今のお話を伺って、アニメ製作時に意図していたことがそのまま伝わっていたことに驚きましたね。
保護者の方からは、昔は「ごっこ遊び」をしていても魔法でやられて済んだのに、「プリキュア」を観て実際に殴られたり蹴られたりして苦労したなんて話を後で聞いて、「ごめんなさい、ごめんなさい」っていう気持ちになったことも(笑)。
YUUKI:剣のモチーフもアパレルに落とし込んでいるんですが、「プリキュア」には剣は出てこないし、クロスしてくっつけたら剣としては機能しないんです。でも、ふたりがいれば武器はいらない、新しい力で、フィジカルで戦えるんだ、というのをアニメからイメージして描きました。
Oyui:「ワイエムワイエム」のアイテムからは、「プリキュア」へ想いをこめて楽しくデザインに落とし込まれたのが伝わってきます。
私は小さいとき、女児アニメに憧れはあったのですが、自分にはそういう可愛い感じは似合わないと思って観られなかったタイプなんです。今、話を聞くと「プリキュア」はそういう感じじゃなくて、当時観ていたらまた違ったかもしれないですね。
── Oyuiさんが作られたのは、ワンピースとサーキュラースカート、カットソーの3型。
Oyui:コラボ依頼をいただいたときに、アニメを観てから作ろうかとも思いました。でも大人になった今初めて観ても変なイメージがついてしまって、求められているものと違うものができてしまう不安を感じ、敢えて観ずに、「プリキュア」を観ていた方に喜んでもらえるものを作ることにしました。
また、私のように観ていなかった人でも楽しくなったり、ちょっと観てみようかなと興味を持ってもらえるデザインに落とし込むことも意識しました。
小さいころに憧れるようなワンピースやスカートを「プリキュア」のイメージでデザインしつつ、オリジナルテキスタイルを作成しました。可愛い柄ではなく、オタク心をくすぐる感じで、「プリキュア」のセリフや「プリキュアジェニック」のロゴをそのままフロッキープリントで入れました。
鷲尾:ひとつだけ、セリフじゃないフレーズも入っていますよね。「女の子だって暴れたい」。実はこれは、「プリキュア」シリーズ立ち上げ時の企画書に書いていたコンセプトなんです。社内向けの言葉だったはずなのに、世間に独り歩きして広まっていてびっくりしています。
私が「プリキュア」シリーズを立ち上げた時のスタンスもOyuiさんと同じだったんです。女児アニメって全く知らなかったし、少女漫画も読んでいない。でもこの枠をやることになり、当時は自分が番組を立ち上げる最後の機会かもしれないと思っていたので、好きにやるかと開き直ったんですね。それで「女の子が主人公だけど、アクションをやりたいんです」と言ったところから始まっています。
これまで持っていた女児アニメの概念を更地にして、社会常識を疑い、「らしくあること」ってなんだろうね、と。そこからどうやってエンターテインメントに落とし込んでいくかをすごく考えました。Oyuiさんの今回のスタンスって、それと近いんじゃないかなと思いました。
── フェミニンなモチーフをかっこよく落とし込んだYUUKIさんのデザインと、フェミニンなデザインにかっこよさを内包したOyuiさんのデザインと、真逆のラインアップになりましたが、それについてはどう思いますか?
鷲尾:「プリキュア」を観ていた方の印象と、それを離れたスタンスから見ている方と、幅広く捉えてもらってうれしいですね。それが同じ世界観で両立するって、なかなかないことだと思います。こうして素敵なデザインになって上がってくるとドキドキしますし、こんなにいいものができたと自慢しに行っちゃいたくなりますね。お客さまにもこの真逆のアプローチは一発で伝わると思うので、洋服を通じて、それぞれが感じる「プリキュア」らしさを発見していただけたらなと思います。
それぞれの「自分らしさ」とは
──「プリキュアジェニック」は「自分らしさの表現」をテーマにしていますが、皆さんは自分らしさをどのように意識されていますか?
YUUKI:年齢とか性別とかのカテゴリーに左右されるより、自分の中から湧いてくる好きやトキメキを大事にしていたいと思っています。それに向き合った上で、好きな服を着たり好きなものを食べたりすることが、自分らしさにつながるのかな。
Oyui:私はまだ模索中かもしれないです。自分が好きなものや大切なもの、譲れないものは芯にあれど、それを外に出すのは勇気がいります。私の場合はブランドになりますが、それに対する反応や評価はついてきます。それらを全部無視して、見せたいものや表現したいものを全力で出す強さや頑固さが、自分らしさにつながっているのかな。
鷲尾:おふたりが話された「自分らしさ」に重ねて言うと、私も毎回、常に崖っぷちなんです。視聴者である子どもたちも、他の流行りにわーっと流れるときがある。そのたびに追い込まれて、ギリギリで何かを思いつく。それが自分らしさかもしれないと思いました。「プリキュア」も常にいろいろな発想を持って、挑戦し続けていくことが、今後あってほしい姿ですね。当然うまくいかないこともあるけど、挑戦し続けないと次の芽はないので、関係者の皆さんが許す限りは続けていけるといいですね。
6日間限定!
オリジナルアイテムを楽しめる
ポップアップストア
「プリキュアジェニックルーム」
── ポップアップストアのテーマを教えてください。
鷲尾:「プリキュア」に影響を受けて育った、性格の違う二人の女の子が暮らす部屋をイメージしています。その空間に「プリキュア」を自由に表現したアイテムが散りばめられており、洋服があって試着や購入ができたり、写真を撮って楽しんだりできるんです。商品を陳列しているだけにはならないと思いますよ。「プリキュアジェニック」のチームがすごく頑張ってくれていて、私もプロジェクトを見守っているのですが、本当に楽しみです。
YUUKI:ポップアップストアの空間にそういうふうに置いてもらえるっていうのは絶対に楽しそうですし、うれしいです。
Oyui:自分たちのデザインがどう伝わるのか楽しみです。
鷲尾:部屋の世界観と商品の両方をお客さまにゆっくり楽しんでいただきたいので、全日程事前抽選予約制となりますが、ポップアップストアをやって終わりではなく、みなさんと育てていくプロジェクトになるといいなと思います。
日程:2024年3月1~6日
時間:11:00〜21:00
※開催時間は変更となる可能性がございます
※最新情報は公式サイト、公式Instagramをご確認ください。
場所:下北沢アドリフト
住所:東京都世田谷区北沢3-9-23
入場料:無料※全日程事前抽選予約制です。
事前抽選予約制の申し込み方法:
下記「プリキュアジェニック」公式サイトから、チケット販売サービス「ライヴポケット」を通じてお申し込みください。
※申し込み期間:2024年1月31日11:00〜2月12日23:59
※当選発表:2024年2月16日頃、メールにて抽選結果を送信予定
※「ライヴポケット」へのご登録、お申し込みは無料です。
support@precuregenicroom.com