マガジンハウスの「ブルータス(BRUTUS)」は、同誌の1000号発売を記念して、1月11日から、古本の買い取り・販売を行うバリューブックスの移動式書店・ブックバスとの協業によって移動式図書館“ブルータス1000号”を都内で運行する。
1月11〜14日の下北線路地 空き地を皮切りに、15〜17日に渋谷パルコ 公園通り広場、20、21日に代官山T-SITE、26〜29日に東京ミッドタウン八重洲 ガレリアを巡る。
“ブルータス1000号”では、「ブルータス」の編集部に保管されている1980年の創刊号から1月11日発売の1000号まで全てのバックナンバーを楽しむことができる。車内には、毎日シフト制で1〜3人の「ブルータス」編集部員が立つ。運が良ければ、気になる特集の裏話を聞くことができるかもしれない。
田島編集長も憧れた旅企画
「いつかは宇宙特集を」
99年から同誌の編集に携わり、2022年4月に現職に就任した田島朗「ブルータス」編集長は、1000号のバックナンバーを前に語る。「アフリカや世界の島に切り込んだ旅の特集から、先輩たちが世界中のいろんな場所に足を運んでいたのが分かり、スケールの大きさに驚かされる。僕も若い頃にそのような特集を見て、『ブルータス』に憧れた」。自身も編集者として、アフリカや南極など、さまざまな地を取材したという。
また同誌では、ファッションにフォーカスした特集「スタイルブック」を年2回刊行している。「『スタイルブック』の号は毎回、ページ数を増やして作っている。多くのジャンルを扱うが、ファッションに力を入れているのも『ブルータス』ならではだ」。
そのほかにも写真家のブルース・ウェーバー(Bruce Weber)の生涯に焦点を当てたものや、映画監督のクエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)の自宅を訪問して1冊に仕上げたものなど、一つのニッチなトピックを存分に追求した号もある。
エッジィなテーマも多いが、田島編集長はどれも現代に生まれ変わらせることができると考える。「“当時だから実現できていた"という感覚はあまりない。例えば、南極特集をやったのも2014年と、そう昔ではない。編集長を任されている身としては、バックナンバーにあるような企画を僕たちの時代なりにできたらいいと思っている。いつかは宇宙に取材に行って、宇宙特集を実現したい」。
“ブルータス1000号”で見つけた気になる企画
「ブルータス」の創刊号が発売されたのは、1980年。そのタイトルは、アメリカのコミック「ポパイ」に登場するキャラクター、ブルートに由来する。出版元はマガジンハウスの前身である平凡出版社で、価格は350円。創刊号の表紙には、「よりアクティヴにより悦楽的に生きようと思っている男たちに読んでもらいたい………。」とある。
年2回刊行する「スタイルブック」以外にも、ファッションにフォーカスした企画は多い。2003年4月には「サッカー選手だけのファッション特集!」と題して、サッカー選手の私服や監督のスーツのスナップのほか、フィリッポ・インザーギ(Filippo Inzaghi)を起用したフォトシューティングなどの企画を含む号を刊行。また、2004年4月には、「世界遺産12カ所でファッション」をテーマに、モン・サン・ミッシェルやイースター島、自由の女神などの世界遺産を舞台にフォトシューティングを行った号を発売した。
印象的だったのは、「海外デザイナー、ブランドが貴方を求む!」と題し、世界中の求人情報を集めた号。ブランドのインテリアデザイナーやパリに店を構えるマンガ専門店の求人から、“パーティーで彫刻のようにじっと立っている仕事”など不思議なポジションの求人もあった。
また、インテリアや住居にフォーカスする増刊「カーサ ブルータス(CASA BRUTUS)」の前身である「居住空間学」企画のバックナンバーも手に取ることができる。イタリアやニューヨーク、ロンドン、四国など国内外の地域にフォーカスした企画は昔から多いようだ。
小さなバスの中で、心ときめく1冊を探す時間は宝探しのよう。長く同誌を愛読している人なら、かつて夢中で読んだ懐かしい号が見つかるかもしれない。“ブルータス1000号”で、お気に入りのバックナンバーを探してみては。