PROFILE: 中野香織/服飾史家、著作家
服飾史家・著作家の中野香織は、時代とともに変化してきたラグジュアリーの概念について、人類の歴史や服飾文化の視点から考察してきた第一人者だ。同氏の考える“ジャパン・ラグジュアリー”のあるべき姿を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月15日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
“ラグジュアリー”が更新される契機
日本は新しい価値観を示せる
WWDJAPAN(以下、WWD):世界でラグジュアリービジネスが好況だ。
中野香織(以下、中野):巨大コングロマリットが支配してきたここ30〜40年のラグジュアリービジネスは、いよいよ頭打ちになるだろう。グローバル資本主義が生み出す格差が世界で顕在化し始めた。これからの消費の主役となるZ世代は、富や名声の獲得よりも「共感」や「共有」に喜びを見出す。富の格差を「憧れ」に転換する現在のラグジュアリーが、もはや豊かには見えないのだ。ラグジュアリービジネスは脱皮が迫られている。
WWD:これからの時代の“ラグジュアリー”のあり方とは?
中野:地域に根ざした、より人間的なものになっていく。作り手(職人)が自分たちの仕事に尊厳を感じ、素晴らしい物を作り、それが適切に評価され、次の仕事に向かう原動力になるというサイクルを作らなくてはならない。例えば(イタリアの高級ブランドの)「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」は職人の賃金をイタリアの平均賃金より20%高い水準まで上げた。職人たちは自分たちの仕事に責任を持つようになり、クリエイションのレベルが一段と引き上がった。会社としても、より大きな利益を生み出せるようになった。
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