トレイルランニングシューズを手掛けるカナダ・モントリオール発の「ノルダ(NORDA)」は、国内初のメディア向け体験イベントを東京・新宿のランニングショップ「ダウンビートランニング(DOWNBEAT RUNNING)」で行った。同ブランドは、スニーカー製造で30年以上のキャリアを持つニック・マルティーレ(Nick Martire)が2021年に創業。機能性と持続可能性を追求したプロダクトが強みで、世界的レースの入賞者にも支持され、現在は北米とヨーロッパを中心に25カ国で販売する。
ブランドを構想したのは、共同パートナーでもある妻のウィラミナ・マルティーレ(Willamina Martire)とトレイルランをしていたときだった。「世の中にはシューズがあふれているが、素材の良し悪しと靴作りを熟知する人は少ない。長いキャリアで得た僕たちのノウハウを駆使して、本当に求められるシューズを作ろうと決意した」。
同氏の強い思いは素材に表れる。ブランド一作目のシューズ“001”は、アッパーとシューレースに“ダイニーマ(Dyneema)”を使用。ダイニーマとは、通常より高密度な分子を化合させたポリエチレン素材の商標名で、同じ質量の鉄よりも15倍の耐久性を持つと言われる。持続可能性も意識し、ダイニーマの中でも植物由来の繊維に着目し、ナイロンとポリエステルに織り込んで独自素材を開発した。この繊維をランニングシューズのアッパーに採用するのは世界初で、「開発に2年かかった。固すぎるとパフォーマンスに悪影響を与えるし、柔らか過ぎれば耐久性を損なう。これほど時間をかけて素材開発をするのはウチだけだろう」と笑う。着用時のストレスを最小限に抑えるため、この生地を縫い目のないパターンに落とし込み、ソールメーカーのビブラム(Vibram)に別注したオリジナルのアウトソールとミッドソールに組み合わせる。アウトソールは深い溝が入り、悪天候でもグリップ力を発揮する。「ロードランでは少し硬く感じるかもしれない。しかし、自然の中を走れば、その真価を感じられる」。価格は4万2900円と高額だが、「妥協なく作った結果だ。それだけ長く、いいパフォーマンスを発揮する」と話す。
22年には、“001“よりも短く勾配のあるコースに向けた“002“を、23年にはラン前後のリカバリーを踏まえた“003”を発売した。シューズブランドとしては型数が少ないが、「本当に納得のいくプロダクトを、時間をかけて作っている。僕らはビジネスだけを求めているわけじゃない」と語る。24年には、ダッフルバッグやベスト、キャップ、Tシャツなども拡充する。「本当に豊かなトレイルランライフを実現するために、自分たちのスピードで、少しずつプロダクトを増やしていく」。