毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月22日号からの抜粋です)
村上:昨年11月のメディア特集を取材している中で、「GQ JAPAN」はリニューアル最初の特集でアートを取り上げ、「ハーパーズ バザー(HARPER'S BAZZAR)」もアート特別号に挑戦することを知りました。同じ頃にオープンした「カサロエベ表参道」では、パブロ・ピカソの作品がフツーに飾られているなど、アートがファッションと自然に融合。盛り上がりを感じました。
益成:もはや関心がなくても日常的にアートを目にするようになりました。現代アートは次世代富裕層のステータスシンボルになっていて、百貨店では外商の切り札商材になっています。ファッションは昔からアートにインスピレーションを受けてきましたが、最近の動きを取材してみて、改めてファッションはアートを必要としていると感じました。
相乗効果を求めながら発展できる
村上:そうですね。ブランドやメディアが社会課題に対するメッセージを発するとき、こうした問題へのメッセージを発信しているアートの力を借りたいというモチベーションが働くと教えてくれた、ハースト婦人画報社のニコラ・フロケ社長に納得しました。一方的なメッセージは堅苦しいけれど、現代アートと一緒だと共に考えるきっかけになるのでしょう。例えば私は色覚障がいを持つダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)が好きですが、彼の作品やコラボに触れることは、多様性について考えることと同じですよね。
益成:アートの視点が入ることで、ファッションは強いメッセージ性を持つことができます。ブランドとアーティストの取り組みが、より深まっていますね。
村上:自分と違う視点を与えてくれるブランドには、共感やリスペクトが集まります。そんな気づきをアートを経由して発信しているんです。特に社会的なメッセージは、若い層に刺さるよう。選択肢が多すぎてイエベ・ブルベや骨格診断を参考に服やコスメを選ぶ人が増えていますが、それはある意味“理詰め”の世界。「好きなものを、好きと言える」“自由”をアートの世界を通じて伝えている面もありそうです。
益成:ファッションは“売れる”という答えがないといけない。結果と答えが必要です。一方アートは答えがないものを探求し、物質以上の豊かさや気づきを与えます。アートは発信に限界がある一方で、ファッションはマスにリーチできます。相乗効果を求めながら、互いに発展していけると思います。