米プロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE以下、P&G)の2023年10〜12月期(第2四半期)決算は、売上高が前年同期比3%増の214億4000万ドル(約3兆1088億円)とアナリストの予想を下回った。事業別では、グルーミング事業が同6%増に対し、ビューティ事業は同1%増と低調だった。同社によると、日本発のスキンケアブランド「SK-II」の中華圏における売り上げが、トラベルリテールを含めて3分の1以上減少したことが主因。中国人消費者の日本製化粧品を敬遠する影響が現れた格好だ。
ジョン・モエラー(Jon Moeller)会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)は、「『SK-II』の中華圏における売上減は、福島原発の処理水の海洋放出にかかわる感情によるものだ」と述べた。そして、「過去にも日韓関係に関連した似たような消費者感情はあったが、『SK-II』はさらなる高みを目指すことで解決してきた」と続けた。同社は、影響は24年度の下期には改善し始めると予想している。
またアンドレ・シュルテン(Andre Schulten)最高財務責任者(CFO)は「当社調査に基づくと、中国における消費者感情は改善しつつある。われわれはイノベーションと投資を推進し続け、熱心なコアユーザーにメッセージが届き、広がってほしいと思っている。それらはうまくいっており、効果が出ることを期待している」と述べた。
影響を受けているのはP&Gだけではない。昨年11月には「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」や「ナーズ(NARS)」を展開する資生堂が、原発処理水の海洋放出を主因として中国本土やトラベルリテールにおける日本製品の買い控えを報告。当時、資生堂の株価は16年ぶりの安値をつけた。
東京電力ホールディングスは昨年9月、福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を実施。10、11月にも海洋放出を続けた。日本政府は、科学的根拠に基づく安全性、高い透明性をもって「国内外に丁寧に説明・発信」していく方針を示しており、国際原子力機関(IAEA)は「国際的な安全基準に合致する」との報告書を公表した。人や環境への放射線の影響は「無視できるほどごくわずか」と評価したが、海外では懸念が広がった。