プラダ グループ(PRADA GROUP)は1月23日、国際連合教育科学文化機関(UNESCO以下、ユネスコ)の政府間海洋学委員会(IOC)との提携で取り組む海洋問題に関する教育プログラム「シー ビヨンド(SEA BEYOND)」の記者会見をパリのユネスコ本部で開いた。今回は、第3回の開催に加え、パリに本部を置く非営利団体の国境なき図書館(Bibliotheques Sans Frontieres以下、BSF)との新たなパートナーシップを発表した。
世界56カ国3万4000人以上の学生が参加
世界の中等・高等学校を対象にした同プログラムは、若い世代の海洋保全に対する意識向上を目的に2019年に発足。第3回は「海洋と気候の相互関係と、それに伴う環境問題」をテーマに 1月から6月にかけて実施され、参加学生たちが企画した啓蒙キャンペーンの国際コンテストで幕を閉じる。初回、第2回の参加学生数はそれぞれ300人程度だったが、今回から大幅に規模を拡大。世界56カ国の184校が対象となり、3万4000人を超える学生が授業や研修を受ける予定だ。
会見に登壇したロレンツォ・ベルテッリ(Lorenzo Bertelli)=プラダ グループCSR担当責任者は、「参加学生の多さに驚くとともに満足している。それは、私たちが正しい方向に進んでいること、そして『シー ビヨンド』が真の変化を生み出すことができることを示している。将来的にはもっと発展させていきたい」とコメント。「究極のゴールは未来を担う世代のマインドセットを変えることだ。若い学生たちの中から将来コミュニティーの鍵を握るリーダーが生まれ、より持続可能で責任ある決断を下すようになることを願っている」と続けた。
さらに会見には、第2回の受賞後に賞金や支援を生かし、わずか半年で海洋リテラシーを広めるためのNGOを自ら立ち上げたペルー・リマにあるニュートン・カレッジの学生2人もオンラインで登場。その一人、エンゾ・ポルト(Enzo Porto)は「『シー ビヨンド』が、独自のプロジェクトを始めるために必要なスキルを与えてくれた。私たちは持続可能な開発目標に貢献する力を持っている」と語り、プロジェクトに通して生まれた理想的な成果の一例を示した。
「シー ビヨンド」初の人道的プロジェクト
また、新たに取り組むBSFとのパートナーシップは「シー ビヨンド」初の人道的プロジェクト。恵まれない地域や教育・文化的リソースを必要としているコミュニティーの子どもや若者が海洋教育を受けられるようにすることを目的に掲げる。そのために活用するのが、デザイナーのフィリップ・スタルク(Philippe Starck)がBSFのために開発した移動式マルチメディアセンター「アイデアボックス」だ。100平方メートル以上あるボックスには、250冊以上の本やゲーム、トレーニング教材、インターネット接続されたタブレット端末やノートパソコンなどが含まれ、コンテンツは提携先に合わせてオーダーメードされる。6月には、「シー ビヨンド」のために初めて海洋教育に特化したボックスが誕生し、世界海の日にイタリア・ベネチアで公開予定だ。その後、イタリア国内を巡回する。加えて、フランス、ブルンジ、コートジボワールにある既存の「アイデアボックス」にもユネスコの専門家が監修した海洋リテラシーに関するコンテンツが追加されるという。
07年に設立された同団体のジェレミー・ラシャル(Jeremy Lachal)=ジェネラル・ディレクターは、「BSFは本を配布することから始まったが、恵まれない地域には識字率が低いところも多い。自分たちが直面している大きな問題への解決策を見つけるための知識にアクセスできるようにすることがミッションだ」と活動について語った。
なお、プラダ グループは23年7月からリサイクルナイロン素材を使った“プラダ リナイロン(PRADA RE-NYLON)”コレクションの収益の1%を「シー ビヨンド」に寄付。プロジェクトの一環として、1万4000人を超える従業員向けの研修や、「ラグーン幼稚園」と呼ぶ未就学児を対象とした野外教育プロジェクトも行っている。