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特集 メンズ・コレクション2024-25年秋冬

「ヴァレンティノ」がリアルなメンズウエアで示す、「男らしさの呪縛」からの解放【2024-25年秋冬メンズコレまとめ】

ヴァレンティノ(VALENTINO)」は1月20日、2024-25年秋冬メンズ・コレクションを発表した。同ブランドは近年、男女合同でコレクションを披露していたが、昨シーズンから別々に発表する形に戻し、ミラノ・メンズ・ファッション・ウイークでショーを開催。今回は、久々のパリでのメンズショーとなった。

柔和で優美な現代男性のための着こなし

会場は、セーヌ川沿いの左岸にあるパリ造幣局。コレクションのタイトル「ル シエル20.24(Le Ciel 20.24)」にちなみ、新古典様式の美しい空間が光沢のある鮮やかな水色のパネルや椅子で飾られている。そんなタイトルや会場の色に込められたのは、ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)の現代のマスキュリニティーに対する問いかけだ。プレスリリースには、「かつてフェミニンな色であったブルーが男性らしさの象徴となったのは、この100年以内のことに過ぎない。このコレクションではブルーを解放して再考し、変化した男性的な意識が表現される。自由な思想を象徴するスカイブルーは、視野を広げて男性とは何か問いかける実験的な手段だ」と記されている。ピッチョーリは、“男はこうあるべき”という認識や視点を変え、「男らしさの呪縛」から男性を解放することに挑んだ。

ファーストルックは、タートルネックトップスにニットポロ、リラックスフィットのテーラードパンツ、ロングのダッフルコートを合わせたオールブラックのスタイル。その後も、ナロータイを締めたシャツや、ボンディングで作るハリのあるフードパーカとフーディ、パジャマスタイルのウールシャツやジャンプスーツ、ロング丈やオーバーサイズで仕立てたコート、ボクシーでソフトなテーラードジャケット、少し短めの丈で仕上げたゆったりしたテーラードパンツやジーンズ、小さなボールスタッズとロックスタッズを組み合わせることでハードさを和らげたローファーやレースアップシューズなどを軸に、リアリティーのあるスタイルを連打する。そこにスカートやマイクロミニのショートパンツなど奇をてらうアイテムはない。ピッチョーリが取り組んだのは、「ヴァレンティノ」のメンズにとって定番的なアイテムのシルエットや丈感、構造などに絶妙な変化を加え、アップデートすること。「ジェンダーについて語るのではなく、より柔和で優美になり得る今日の男性のアイデンティティーを映し出した」という。

色とりどりのタートルネックがアクセントに

スタイリングのアクセントとなるのは、レイヤードのベースに差し込んだタイトなタートルネックトップスや新作のバッグ。黒やグレーなど落ち着いた色を基調にしたスタイルの中に、鮮やかな色味からニュアンスカラーまでを交え、「ヴァレンティノ」ならではの独特の色合わせを楽しんでいる。もう一つ目を引くのは、繊細な手仕事だ。チェスターコートの上半身やダッフルコートのトグルボタンの周りに加えたのは、24年春夏ウィメンズ・コレクションにも用いられた“アルトリリエーヴォ”と呼ぶレリーフ(浮き彫り)のような装飾。ダイヤモンドのパーツをびっしりと並べて柄を描いたプルオーバーシャツや、手の込んだハンドニットもある。ショーは、今季のメッセージを象徴する鮮やかなスカイブルーのロングダッフルコートで幕を閉じた。

そんな現代男性のワードローブを構成するタイムレスなアイテムをそろえたコレクションとスタイル提案には正直、驚きの要素は少ない。ただ、上質な素材と丁寧なモノ作りによって生み出されるアイテムには服本来の魅力が詰まっている。そして、ダンディーやマスキュリニティーの新たな解釈を探求する流れが広がる中、ピッチョーリのメッセージは今を生きる男性に響くだろう。

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