2024-25年秋冬コレクション・サーキットがメンズ・コレクションからスタートしました。イタリア・フィレンツェからミラノ、パリへと続く13日間を「WWDJAPAN」が連日ほぼ丸一日をかけて総力リポートします。担当は、「WWDJAPAN」の大塚千践・副編集長と藪野淳・欧州通信員、パリ在住のライター井上エリという大阪人トリオ。ラグジュアリーメゾンから無名の新人まで、全方位をカバーするリポートは「WWDJAPAN」だけ。3人が感じた喜怒哀楽と共に、現地のリアルな空気感をお伝えします。
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10:00 「ジュンヤ ワタナベ マン」
1日を網羅するこの企画は、ファッション・ウイークをザーッと振り返れるのが売りです。ただ、たまに気持ちが入りすぎてつい長くなってしまうことはお許しください。書き切ってから各担当者は反省しています。さて、謝りましたので「ジュンヤ ワタナベ マン(JUNYA WATANABE MAN)」は長くなります。
同ブランドのショーを見た後は、「カッコイイ、カッコイイ、とにかくカッコイイ」と連呼しながら次のショー会場へ行くのが通例。22年春夏シーズンより、ブランド名から“コム デ ギャルソン”を取り、現在の名称に変更した頃から、クリエイションが新境地に到達した印象を持っています。今季のコレクションも「あらゆる世代の男性に着用してほしいスーツ」という渡辺淳弥デザイナーの思いをもとに、“再構築されたスーツ”は決して期待を裏切ることはありませんでした。
まずは、アウターとボトムスが一体化した、進化系テーラリングを連打します。中にはピンストライプのセットアップもあれば、ブレザーとチノパン、もしくはジーンズといった予想外の組み合わせもたくさん。インナーにはプレッピーなセーターやカーディガン、ボトムスにはスラックスやダメージ加工のジーンズ、足元は「ハインリッヒ ディンケラッカー(HEINRICH DINKELACKER)」とのコラボシューズで、クラシック、カジュアル、ワークウエアと異なるジャンルを縦横無尽に交差させました。
中盤は、極めてクラシックな形状のトレンチコートとチェスターコートをマント仕様の構造にし、肩に羽織るスタイルが続きます。スリーブを身頃に縫い付けているため、腕を通すことはできません。スリーブは単なる装飾となり、裾に向かって広がるAラインのシルエットが異質です。普通の現実が少しズレて見える、シュルレアリスム的なアイデアで、クラシックを新鮮に再構築しています。
古典的なマントに、「パレス スケートボード(PALACE SKATEBOARDS)」とのコラボキャップを合わせたルックを境に、再びジャケットとボトムスを一体化させたスタイルへと戻ります。ローファーとスニーカーをドッキングさせた「ニューバランス(NEW BALANCE)」とのコラボシューズもお目見えしました。ほかにも「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」「リーバイス(LEVI'S)」「カーハート(CARHARTT)」「インナーラウム(INNERRAUM)」とのコラボレーションが散りばめられています。
制約の多いユニホームを解きほぐし、新たな男性像を描くーー今季の主題であり、メンズウエアにおける永遠のテーマは、スーツの原型は留めたまま、規格外のドッキングによりテーラリングを進化させた「ジュンヤ ワタナベ マン」により前進したように見えました。そしてなにより、直球にカッコイイ。氷点下のパリの寒さもなんのその。コレクションに惚れ惚れして体が熱を帯びたまま、少し離れた次のショー会場へと向かいました。
11:30 「ポール・スミス」
次の「ポール・スミス(PAUL SMITH)」は、「ジュンヤ ワタナベ マン」とは異なる種類の“カッコイイ英国紳士”像を貫きます。今季もソフトショルダーのテーラリングを軸に、ワークウエアとフォーマルウエアの境界線を行き来します。
テクニカルベストやアシッドウォッシュのデニムといった、同ブランドではあまり使用しないアイテムや素材を時折差し込みつつ、英国らしいシャープなシルエットにシグネチャーのマルチストライプでらしさを主張します。パープルやネイビー、ダークブラウンに、ライムグリーンやマスタードイエローをアクセントとして効かせる、プレイフルなカラーパレットも健在。過激な変化やギミックを加える服作りではなく、ディテールや素材の微妙な変化でクラシックを現代化させます。欲を言えば、もう少し大胆なデザインも見てみたかった気もしますが、今季多くのブランドが取り入れたアイデアが「ポール・スミス」からも感じられました。フィナーレでは、デザイナーのポール・スミス(Paul Smith)さんが山盛り投げキッスをしながらランウエイを早足で駆け回り、思わすゲストもニッコリ。カッコイイにプラスして、お茶目でカワイイ姿に、思わずこちらも笑みがこぼれました。
14:30 「ディオール」
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