2024-25年秋冬コレクション・サーキットがメンズ・コレクションからスタートしました。イタリア・フィレンツェからミラノ、パリへと続く13日間を「WWDJAPAN」が連日ほぼ丸一日をかけて総力リポートします。担当は、「WWDJAPAN」の大塚千践・副編集長と藪野淳・欧州通信員、パリ在住のライター井上エリという大阪人トリオ。ラグジュアリーメゾンから無名の新人まで、全方位をカバーするリポートは「WWDJAPAN」だけ。3人が感じた喜怒哀楽と共に、現地のリアルな空気感をお伝えします。
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9:15 「コム デ ギャルソン・シャツ」
パリ・メンズ5日目の朝は、いろいろな意味での緊張感でハッと目が覚めます。理由は、「コム デ ギャルソン・シャツ(COMME DES GARCONS SHIRT)」のショーがあるから。ただ、「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」のようにクリエイションに対峙する際の武者震い的なそれではありません。一番は、遅刻したらあかんという緊張感なのです。というのも、フロアが埋まれば開始予定時刻よりも平気で前倒してスタートするのです。前シーズンは3分前倒しの9時12分開始に滑り込みで間に合ったため、今シーズンは万全を期して9時に会場入りしました。すると、フロアはすでに9割埋まり、今にもスタートしそうな雰囲気ではありませんか。危なすぎる。
思い返せば前シーズン、ショーの関係者に「前倒しでスタートする唯一のショーですよ」と伝えると、「え?前倒してた?」と逆に聞かれました。やはり百戦錬磨のプロともなると、時間ではなく、フロアの空気感で判断するんですね。ショー開始を待っていると、慌ただしいステージ裏から声が聞こえてきます。「早めに始められる?」と。そして、今シーズンのメンズ全体で最速となる5分前倒しの9時10分にショーがスタートしました。この、セルゲイ・ブブカのようなじわじわ記録更新を警戒する関係者も増えているため、今後もどんどん集合が早くなり、もしかすると8時台のショーなんてことも実現するかもしれません。
コレクションは、ベーシックなアイテムにツイストを効かせた安定感のあるラインアップ。今シーズンは、“STRONG WILL”“LIVE FREE”といったシンプルで強いメッセージをグラフィックにし、大小さまざまなパターンで各アイテムにあしらいます。英ブランド「ラベンハム(LAVENHAM)」とのキルティングコートやベストは、センターラインが右にずれていくという文字通りツイストしたパターンで、着用すると不思議でかわいいバランス感になるのが気になりました。
10:30 「キコ コスタディノフ」
ストイックな服づくりを継続する「キコ コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)」は、ウエアラブルに傾倒する今季の潮流に乗ったようです。デザイナーのキコ・コスタディノフは、物語や映画、空想上の人物がコレクションの出発点になることが多いデザイナー。今季は「過去の作品を振り返るのにふさわしい時期だと感じた」といい、アーカイブから着想を得ました。
とはいえ、オムニバス的な内容ではありません。“ジェスチャーとフォームの集合体マニフェスト”と題し、ワークウエアを基盤に、プリーツやドレープでフォームに変化を与え、ディテールに備えた機能的なストラップやファスナーでボリュームを自在に操る、彼らしいアイデアが満載です。花柄のジャカードや、バッグのショルダーに装飾した、キャンディーのようなカラフルなリング、彼のルーツであるブルガリアの伝統を象徴するDIY的なフェルトの王冠が、ストイックさを緩和させてかわいらしく、新鮮味がありました。これまではモード上級者しか着こなせない印象があったものの、今季はスタイリング難易度も下がり、今より広い層にアプローチできそうです。
11:15 「リーバイス」
「リーバイス(LEVI'S)」は今季、パリ・メンズ期間中に24年に発売予定のコラボレーションアイテムやインラインの新作をメディア向けに紹介するイベントを初開催しました。会場は2つに分かれていて、ラウンジのような空間ではアーカイブの貴重なピースを展示。実は1947年にパリコレ期間中にランウエイショーを行ったことがあるそうで、その際に披露した光沢のあるサテンライクなロデオシャツとウィメンズの“501”ジーンズから、北カリフォルニアの農家の納屋で見つかったという1890年代の“501”ジーンズや1970〜2000年代の各年代を象徴するアイテムまでが並びます。
もう一つの部屋には、発売予定アイテムがズラリ。コラボに関しては、まだ発表前のものもあるので写真NGだったのですが、ミラノ・メンズのショーで発表した韓国発の「アンダーソンベル(ANDERSSON BELL)」やパリ・メンズで披露した「キコ コスタディノフ」との協業アイテムもありました。気になる方は、ルック画像でぜひチェックしてみてください。
12:00 「ロエベ」
次は、研ぎ澄まされたクリエイションで、ウィットに富んだコレクションを打ち出し続ける「ロエベ(LOEWE)」です。ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)がクリエイティブ・ディレクターに就任して今年で11年目。その成長はいわずもがな、アンダーソンなしの「ロエベ」が想像できないくらい、最高の相性で今年も業界をリードしてくれる気がしています。
今季は、“コラージュ”がキーワードの一つとなりました。異質なもの同士を一体化させるアイデアは、さまざま手法で今季全体を通して見られた手法です。オンとオフ、舞台上と舞台裏、自然と都市、マスキュリニティとフェミニニティなどなど。先見の明があるアンダーソンのクリエイションは、シーズン全体を総括するのに大きなヒントとなることが多々あります。そのため、彼の口から発せられる言葉を一言も逃すまいと、毎回ショー後の囲み取材に参加して耳をダンボにしています。彼のコメント含め、コレクションの詳細は別リポートでしっかり伝えてますので、ぜひご覧ください。
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