LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は1月25日、2023年12月期決算を発表した。ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者(CEO)はその際、アナリストおよびジャーナリスト向けの決算説明会で、自身の次男であるアレクサンドル・アルノー(Alexandre Arnault)=ティファニー プロダクトおよびコミュニケーション部門 エグゼクティブ・バイス・プレジデントと、三男であるフレデリック・アルノー(Frederic Arnault)LVMHウオッチ部門CEOを、4月18日に開催予定の年次株主総会でLVMHの取締役会のメンバーに推薦することを明らかにした。
長女のデルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)=クリスチャン ディオール クチュール会長兼CEOと、長男のアントワン・アルノー(Antoine Arnault)LVMHヘッド・オブ・コミュニケーション&イメージは、すでに取締役会に所属している。今回、名前が挙がらなかった四男で末っ子のジャン・アルノー(Jean Arnault)=ルイ・ヴィトン ウォッチ部門 マーケティングおよびプロダクト・ディベロップメント・ディレクターについて、アルノーLVMH会長兼CEOは、「彼はまだ若く、時間がある」とコメントした。
LVMHは近年、一族支配を強化している。22年5月には、当時73歳だったアルノーLVMH会長兼CEOが80歳まで続投できるよう、CEO職は75歳までと定められていた内規を変更。22年12月には、アントワンが一族の持株会社クリスチャン ディオールSE(CHRISTIAN DIOR SE)のCEO兼副会長に就任している。クリスチャン ディオールSEは、一族の主要な持株会社フィナンシエール・アガシュ(FINANCIERE AGACHE)の傘下。フィナンシエール・アガシュは22年12月末の時点でクリスチャン ディオールSEの株式資本の97.5%を保有しており、そのクリスチャン ディオールSEは、LVMHの株式資本41%と議決権の56%を保有している。
アルノー会長が考える“最高峰”のラグジュアリーブランドは?
また、アルノーLVMH会長兼CEOは、米「ブルームバーグ(BLOOMBERG)」が「LVMHはファッションに加えて、ワインやセレクティブ・リテールなど性質の全く異なる部門を抱えているがゆえに、株価が割安に推移している。事業を分割したほうがいいのではないか」という論旨の記事を掲載したことに対し、「(事業分割は)いかなる状況下でも考えられない。全く不適切な意見だと思う」と一刀両断。この話題に関連して、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ディオール(DIOR)」「シャネル(CHANEL)」「エルメス(HERMES)」をソフトラグジュアリー(ファッションやレザーグッズなど)の、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」「ブルガリ(BVLGARI)」「カルティエ(CARTIER)」「ヴァン クリーフ& アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」をハードラグジュアリー(ウオッチやジュエリー)の最高峰と考えていると述べ、「当社はこの8ブランドのうち半数を保有している。今後、買収などによって傘下ブランドを増やすのか、傘下ブランドがこの8ブランドと肩を並べられるようさらに発展させていくのかについて、様子を見て考えたい」と話した。
ライバル・リシュモンや「カルティエ」買収のうわさについて
LVMHが、ライバルであるコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)や、その傘下ブランドである「カルティエ」の買収に関心を示しているという兼ねてから流れている憶測に関しては、「(リシュモンの)ヨハン・ルパート(Johann Rupert)会長は比類のないリーダーであり、その戦略に干渉しようとは思わない。彼は、今後も独立性を維持したいと考えているものと理解している」と語った。なお、ルパート会長はこの件について、リシュモンが23年5月に開催した決算説明会で「いずれも売るつもりはない」と一蹴し、アルノーLVMH会長兼CEOからアプローチを受けたことはないと明言している。