サステナビリティ

「クラブでも公園でも気軽に高品質なナチュラルワインを」 「ディージュース」が提案する新しいワインの楽しみ方

スウェーデン・ストックホルム発の新興ワインブランド「ディージュース(DJUCE)」は、新しいワインの消費体験を提案する。現代アーティストとコラボしたポップなイラストが目を引くアルミ缶のパッケージで、厳選したヨーロッパの自然派ワインを提供する。「ディージュース」があえてアルミ缶で挑戦している背景には、ガラス製のワインボトルの環境負荷の高さがある。スウェーデン国営酒販店のシステムボラーゲットの調査によると、ワインの製造工程において、ガラス瓶の製造・輸送時にかかるCO2は全体の排出量の約半分を占める。これを軽量なアルミ缶に変えることで、ガラス瓶と比較して79%削減可能だという。

2022年夏にスタートして以降、ヨーロッパや北米などの17カ国でデパートや小売店、飲食店、ナイトクラブ、ホテルなどでの取り扱いが始まっている。日本ではメイベルインターナショナルが輸入元となり国内の卸販売を担う。すでに「ディーン&デルーカ(DEAN & DELUCA)」六本木店などで販売がスタートした。ワイン産業の持続可能性を追求しつつ、新たなワインカルチャーを切り開こうとしている同ブランドの創業者に話を聞いた。

WWD:ブランド設立の経緯は?

アレックス・バウマン(Alex Baumann)=ディージュース共同創業者(以下、バウマン):「ディーシュース」は、5人のメンバーで立ち上げた。1人は10年以上ナチュラルワインを専門にしてきたソムリエだけど、そのほかはただのワイン好き(笑)。僕は元々オーガニックのペットフード会社を経営していて、ワインビジネスの経験は全くなかった。それでもワイン愛好家の一人として、昨今ワインを楽しむ若い人たちが減って産業が衰退している現状に何かできないかと思っていたんだ。

WWD:ワイン離れが進んでいる原因はなんだと考える?

バウマン:ワインの世界は知識がある人だけが楽しめるような敷居の高い印象を持たれているんだと思う。僕たちも一消費者としてその流れは感じていたし、周りもクラフトビールやカクテル派が多い。マーケット全体でも、若者に寄り添ったクールな印象のワインブランドって少ない。もっといろんな人たちが気軽に楽しめるようになるためにも、異業種で経験を積んだ僕たちが新しい視点でこれまでにないワインの消費体験を提案できると思った。

ガラスボトルのCO2排出量に着目

WWD:環境負荷の観点からパッケージにはアルミ缶を選んだ。

バウマン:ワインの製造工程において最も環境負荷が高いのが重い瓶の製造と輸送だ。創業前にリサーチしていたときには、ガラス製のボトルのリサイクルはアルミ缶と比較して80%以上の二酸化炭素を排出することも知った。そこでオルタナティブな選択肢として缶に注目したんだ。若い世代の消費者はサステナビリティに関心が高いと言われるけど、この事実はまだまだ知られていないと思うし、僕たちが消費者を教育していく段階だと思っている。

WWD:アルミ缶は味の劣化が心配されるのでは?

バウマン:確かにこれまで特にヨーロッパでは缶のワインは、安くて質の悪いイメージを持たれていた。でも僕たちの商品は、缶でも品質を落とさずにとてもおいしいワインが楽しめる。「ディージュース」の⽸はバルセロナのパートナー企業で生産していて、アルコール飲料のために開発したライナーを施すことでワインとアルミの接触を防いでいるんだ。アルミ⽸は中⾝の酸化を防いで光も完全に遮断できるので保存にも適している。実際にその味が認めてもらえたからこそ、世界中のメディアから注目を浴びたんだと思う。予想以上にいろんな人たちに興味を持ってもらえてとてもうれしいよ。日本でもこれから適切なパートナーと一緒にどんな商品が好まれるのか探っていきたい。

ファッショション業界と一緒にサステナブルな消費を盛り上げたい

WWD:思わず写真を撮りたくなるようなパッケージや、ウェブサイトなどの見せ方も新しさを感じる。

バウマン:クールなライフスタイルブランドのような見え方はすごく意識しているところなのでそう言ってもらえてうれしいよ。チームに現代アーティストとのネットワークを持っているメンバーがいて、今のデザインを実現できている。大事にしているのはアーティストとワインメーカーの両方が満足してくれるアウトプットであること。ウェブサイト上では、生産地の情報や僕たちの企業としての考え方などを載せて透明性も大事にしている。

WWD:どんな人たちに、どんなシーンで楽しんでほしい?

バウマン:まずはデュア・リパ(Dua Lipa)かな(笑)。というのも、彼女は本物のナチュラルワイン愛好家なんだ。彼女に認めてもらえたらとてもうれしいよ。実際は若者からお年寄りまでいろんな人に楽しんでほしい。「いいワインを飲みたいけど、ボトル1本はいらないんだけどな」というときに気軽に楽しめるサイズなのもポイント。ナイトクラブでも公園でも、どんなところでもジュース缶を手にするように、高品質なナチュラルワインをみんなが楽しんでいる光景を見るのが僕たちの夢だ。そのためには、ぜひ日本の消費者にも私たちのワインを一度味わってみてほしい。「ディージュース」が売れることで、環境への影響も減らせることも伝えていきたい。

WWD:サステナブルかつデザイン性の高いオルタナティブな選択肢を増やしていくことは、ファッション産業においても重要だ。

バウマン:ライフスタイルブランドを目指している僕たちとファッションは共通するところがたくさんあるし、特にサステナブルファッションに興味のある人たちは僕たちが狙っている層でもある。長く楽しめる高品質な物を消費者に手に取ってほしいというのは、僕たちも同じだ。ファッション産業に関わる人たちと一緒にサステナブルな消費のムーブメントを盛り上げていきたい。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

疾走するアシックス 5年間で売上高1.8倍の理由

「WWDJAPAN」11月4日号は、アシックスを特集します。2024年度の売上高はコロナ前の19年度と比べて約1.8倍の見通し。時価総額も2兆円を突破して、まさに疾走という言葉がぴったりの好業績です。売上高の8割以上を海外で稼ぐグローバル企業の同社は、主力であるランニングシューズに加えて、近年はファッションスニーカーの「オニツカタイガー」、“ゲルカヤノ14”が爆発的ヒットを記録したスポーツスタイル…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。