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【コーセー 小林一俊社長】美の創造と顧客に響く商品を生み出しグローバル展開を加速

PROFILE: 小林一俊/コーセー社長

小林一俊/コーセー社長
PROFILE: (こばやし・かずとし)1962年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、86年にコーセーに入社。91年に取締役マーケティング副本部長兼宣伝部長、2004年から副社長を務める。07年から現職。就任直後に「守りの改革」と「攻めの改革」を実行し、V字回復を実現。現在、「世界で存在感のある企業への進化」を掲げ、取り組みを加速している PHOTO:YUKIE SUGANO

包摂性の高い社会に向け、3G(グローバル、ジェンダー、ジェネレーション)を基盤に顧客層拡大を目指すコーセー。2023年、“大谷効果”で不動の地位を確立したパイオニアは今年、生産部、生産会社であるコーセーインダストリーズ及び生産子会社、商品開発、商品デザイン、購買、サプライチェーンの各部門を組織化し、商品本部を新設。グローバルでも存在感を発揮する企業を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

プレステージブランドのシェア拡大へ

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年をどのように振り返る?

小林一俊社長(以下、小林):22年から継続する3Gを基盤とした取り組みの成果が表れ、好調な1年だった。23年を終え、26年に向けた中長期ビジョン「VISION 2026」まで残り3年、そして3人目の男性アスリートと契約するなど、総じて数字の“3”がキーワードとなる年でもあった。個人的には大好きな3つの野球チーム「WBC日本代表」「母校の慶應義塾高校」「阪神タイガース」が優勝したこともビッグニュースだった。

WWD:中でも昨年は “大谷効果”が際立った。

小林:3Gの柱の一つであるジェンダー領域の秘策として、米MLBロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手(当時ロサンゼルス・エンゼルス所属)を商品の広告モデルに起用した反響は想定以上で、年間を通じて大幅な売り上げ増に貢献した。大型プロモーションを仕掛けた“コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアセラム”は爆発的ヒット。キャンペーン期間中には百貨店の「コスメデコルテ(DECORTE)」カウンターに来店する男性客も13倍と急増した。ハイプレステージかつ美容液という、意外性ある商材での起用が話題性を生んだのではないか。年末に飛び込んできた移籍の話にはびっくりしたが、まさかドジャースとは。当社のコーポレートカラーと同じ青がチームカラーでなにかの縁を感じる。今年も大谷選手との強力なタッグを組んで展開していく。

WWD:3人目の男性アスリートとの契約については?

小林:羽生結弦選手、大谷翔平選手に続く3人目の男性アスリートとして、バレーボール男子日本代表の髙橋藍選手とスポンサー契約を締結した。髙橋選手はヨーロッパで活躍するだけでなく、ASEANでも非常に人気がある。当社のグローバル戦略で掲げる新しい地域であり、今回契約するに至った。当社は1980年代からスポーツ支援を行っており、多様なアスリートを協賛してきた長い歴史がある。スポーツ総合誌『ナンバー』とコラボレートし、自社サイト「コーセー スポーツ ビューティ」を立ち上げたのは、美の創造企業としてスポーツと美の融合や人々の健康意識向上に貢献したい思いがあるからだ。

WWD:23年はヒット商品も多く生み出されている。

小林:「コスメデコルテ」の“AQ アブソリュート エマルジョン マイクロラディアンス”、「ヴィセ(VISEE)」の “ネンマクフェイク ルージュ”、「ワンバイコーセー(ONE BY KOSE)」の“セラムシールド”など、ハイプレステージからコンシューマーブランドまでヒット商品が豊作だったが、これからさらに23年に行った組織改革の成果が期待できる。モノ作りからプロモーション、売り場や話題作りまでそれぞれのブランド戦略を一気通貫して取り組める事業部制へと変革したことで、より魅力的なブランド、商品の構築につながってくる。ステップごとに担当者が替わるバトンタッチ方式ではなく、全員が一緒に走りながらパスを回すラグビー方式であることが大切だ。

WWD:モノ作りにおける変化は?

小林:世代交代が起き、若手が活躍している。彼らの発想は目新しく、独自の感性がある。例えば「ヴィセ」の“ネンマクフェイク ルージュ”は若手社員が担当しているが、カラーネームの“わがままな肉球”などの奇抜なネーミングには当初驚いた(笑)。だが、最近は私が口出しせず、サントリーの鳥井信治郎創業者の言葉ではないが、“やってみなはれ精神”で若手の挑戦を歓迎するようにしている。そうした風土が新世代の感性を生かし、尖った商品作りにつながっているのではないか。

WWD:組織変更と人事異動の狙いは?

小林:1月1日付で新たに商品本部を設置し、小林正典・常務 前マーケティング本部長が商品本部長に就任した。これは3Gの柱の一つ、グローバル戦略の一環で、グローバル商品開発体制を整えていくだめだ。現在韓国や中国ブランドの勢いが増し、日本参入も目立つ。彼らは世界各国に研究所や工場を展開し、最先端のノウハウや各国に対応する処方を持つODMやOEMの企業を上手く活用している。これまで自社内製にこだわってきたが、変化の早い世界に対応し、よりその地域のニーズに応えていくためにはそういった企業とも手を組み、グローバル外注も取り入れて、内作と外作をうまく使い分けながらグローバル商品開発体制を強化する必要があるだろう。

WWD:24年に向けた戦略は?

小林:化粧品業界は低価格帯と高価格帯の二極化が叫ばれる中、中価格帯はやはり日本では規模が大きく、昨年から回復もしてきており、まだまだ期待できるマーケットだ。ロングセラー化粧水“薬用 雪肌精”を初めて刷新し、3月に“薬用雪肌精 ブライトニング エッセンス ローション”の発売を控える「雪肌精(SEKKISEI)」を中心に、中価格帯市場で展開するプレステージブランドのシェアを上げていきたい。

会社概要

コーセー
KOSE

1946年に、小林孝三郎氏が化粧品の製造・販売を行う小林合名会社を創業。48年に小林コーセーを設立。60年代後半から香港、シンガポールなどアジア市場を皮切りに、北米、欧州にも積極的に進出。91年にCIを導入し、コーセーに社名変更。企業メッセージ「美しい知恵 人へ、地球へ。」をサステナビリティ方針とし、あらゆる活動に組み込むと共に、一人一人の美しさを大切にするアダプタビリティーの観点における価値提供を推進している。ブランドは「コスメデコルテ」「雪肌精」「アディクション(ADDICTION)」など

問い合わせ先
コーセー
03-3273-1511