PROFILE: セルジュ・グレベール/ブルーベル・ジャパン社長
「グッチ(GUCCI)」「バーバリー(BURBERRY)」などのファッションフレグランスを手掛けるブルーベル・ジャパンは、「キリアン パリ(KILIAN PARIS)」「メゾン フランシス クルジャン(MAISON FRANCIS KURKDJIAN」などのニッチフレグランス、「ペンハリガン(PENHALIGON'S)」「ロジェガレ(ROGER & GALLET)」といった老舗ブランドまで幅広く輸入販売している。香水だけでなく、ボディーソープやハンドクリームなどライフスタイル全般に関わる“香り”を提供する企業として業界をリードする存在だ。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)
多様化、拡大するフレグランス市場
香りのプロの育成とタッチポイントの強化が鍵
WWDJAPAN(以下、WWD):2023年の日本におけるフレグランス市場の動向は?
セルジュ・グレベール社長(以下、グレベール):欧米に比べると、まだまだ日本におけるフレグランス市場のシェアは低いが、ファッション、ニッチ、ホームと全てのカテゴリーで伸長しており、絶好調だ。ギフト需要が多い商材だが、コロナ禍以降は自分で楽しむ需要も高まっている。“おうち時間”が増えた影響でホームフレグランスも伸びている。日本では、長い間、清潔感のあるフレッシュな香りの人気が高かった。代表的なフローラル系の人気は相変わらず高いが、最近、通好みの洗練された香りの市場が出てきて、個性のあるフレグランスも売れるようになってきている。ブランドで選び香水を購入する層もあれば、自分だけの香りを探す層もあり、多様化している。個性を求める層の増加により市場は拡大している。
WWD:若い消費者を中心にニッチフレグランスの市場が拡大しているが?
グレベール:ファッションもニッチも両方のカテゴリーの需要がある。消費者の需要がファッションフレグランスからニッチへとアップグレードするわけではなく、それぞれに顧客がいる。基本的に、好きな香りは変わらないものだ。以前は、オフィスなどではフレグランスは使いにくいという風潮があったが、それが変わりつつあり、男性も普通に香水をつけるようになった。また、日本では、香水をシーン別に使い分けする傾向がある。フレグランスに対する許容範囲が広がり、消費者の関心の高まりが見られる。次々と新しいフレグランスが登場し、まずは小さいサイズを購入して新しい香りの体験をしている人も多いようだ。
WWD:23年の売上高の伸長率は?
グレベール:前年比2ケタ増で、19年の売上高にほぼ戻った。フレグランスはインバウンド比率が低いため、あまり売り上げに影響はない。
WWD:現在販売しているフレグランスのブランド数は?
グレベール:約35ブランドだ。
WWD:23年に成長したブランドとその理由は?
グレベール:ファッションカテゴリーでは、「バーバリー」の“ゴッデス”が世界的に大ヒット。香りだけでなく、レトロなイメージのボトルも人気だ。憧れのブランドの代表格「ティファニー(TIFFANY & C0.)」も人気が高い。「コーチ(COACH)」では、メンズフレグランスが伸びている。ニッチでは、「キリアン パリ」や「フレデリック マル(FREDERIC MALLE)」が好調で前年比30%以上伸長した。いろいろな香りを試してみたいという人が増えて、ディスカバリーセットがよく動いた。「メゾン フランシス クルジャン」は、ボディーソープやボディークリームなどを発売し、好評だった。ストーリー性のある「ペンハリガン」も好調。香りには長いトレンドと短いトレンドがあるが、“いい香り”のものしか市場で長続きしない。ニッチフレグランスは、洗練されたまねできない香りが高い支持を得ている。
WWD:コロナ禍前後のECの売り上げの変化は?
グレベール:コロナ禍でECの売上高は30%以上伸長した。好調をキープし、さらに10%程度ずつ伸長している。市場が広がり、ECではリピート購入やディスカバリーセットの購入が増えている。
WWD:ECでフレグランスを販売するための施策は?
グレベール:購入者へ新たな香りの体験を促すためにサンプルを同梱したり、メンバーシッププログラムでプレゼントを用意したりする。また、継続的にフレグランスに関する情報発信なども行っている。
WWD:ここ数年の日本におけるフレグランス市場の動向を踏まえて、24年のフレグランス市場の予測は?
グレベール:ファッション、ニッチ、ホーム、全てのカテゴリーで伸長するだろう。ブランドが多くなり市場が活性化し、拡大している。アイテム数やカテゴリーが増え、販路も広がり、さまざまな香りにアプローチしやすくなった。そのため、勉強してファンになる消費者が増えている。
WWD:フレグランス業界における“ブレークスルー”を目指して、ブルーベル・ジャパンとして取り組むべき課題は?
グレベール:日本のフレグランス市場をどう広げていくかが課題だ。社内に“パルファム ソムリエール”という資格制度があり、香りのプロを育成している。現在社内に約50人資格を持ったスタッフがおり、使い方のアドバイスをするだけでなく、好みやライフスタイルをヒアリングして、各顧客に合う香りをすすめている。自社で展開するショップ“ジャルダン デ パルファム”などで気軽にフレグランスを試してもらえるようタッチポイントも増やしていく予定だ。
会社概要
ブルーベル・ジャパン
BLUEBELL JAPAN
1954年、ラグジュアリーブランドのアジアに特化したディストリビューターとしてブルーベル・グループが誕生。世界市場をけん引する有名ブランドをアジアの消費者に紹介してきた。日本、韓国、中国、香港、台湾、シンガポール、タイなどに現地法人を構える。ブルーベル・ジャパンは1976年に創設。複合的な小売りと卸売りネットワーク、ECサイトを擁し、ファッション、香水、化粧品などのビジネスをオムニチャネルで幅広く展開
ブルーベル・ジャパン 香水・化粧品事業本部
0120-005-130