PROFILE: 遠藤宗/アイスタイル社長兼COO
リテールの好調で
スタート地点に回帰
アイスタイルの勢いが止まらない。既存店の成長に加え、関西に初上陸した旗艦店「アットコスメオーサカ」や、買収した老舗化粧品専門店シドニー7店舗が寄与し、直近の2024年7〜9月期の売上高は前年同期比35.3%増と四半期で過去最高の124億円を記録。リテールを中心にマーケティング支援やグローバルなど全セグメントにおいて増収を達成し、好調に推移している。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)
WWDJAPAN(以下、WWD):23年6月期は過去最高の売り上げを達成した。
遠藤宗社長兼COO(以下、遠藤):この2〜3年はコロナ禍で店舗事業を中心に大きな影響を受けたが、やっと厳しかった時期を乗り越えたという感覚にある。コロナ直前の20年1月にオープンした「アットコスメストア」初の旗艦店「アットコスメトーキョー」は連日にぎわいを見せており、平日は約9000人、週末は約1万5000人と来客数が増加。買い上げ率は約40%で、月間の売り上げも平均約5億円まで伸ばしている。「アットコスメトーキョー」をフックに、会社全体が盛り上がっており、ようやくスタート地点に戻ってきた思いだ。
WWD:中でもリテール事業が好調だ。
遠藤:9月に関西初の旗艦店として、JR大阪駅直結の商業施設ルクア イーレ3階に出店した「アットコスメオーサカ」が好調で、館全体の盛り上がりにも貢献している。当社は「アットコスメ」の口コミ情報を利用して店舗やEC展開できるのが強み。ただブランドごとに商品を並べるだけでなく、プチプラからラグジュアリーコスメまで価格差のあるランキングをもとに豊富な品ぞろえで世界観を作ることができるのがリテール事業の好調理由の1つだろう。また、同店のオープンで近隣百貨店の売り上げが落ちることも無く、人流をつくりながら新マーケットを創出する役割を果たした。生活者とブランドをつなぐために地道にやってきたことがまさに評価されたと感じており、今後もチャンスがあれば主要都市に旗艦店を出店していきたい。
WWD:生活者とブランドをつなぐために具体的に行ったことは。
遠藤:社長就任から社内で言い続けているのは、ミッションである「Beautyの世界をアップデートしながら、多くの人を幸せにする」ために、どのような行動をしなければいけないかということ。当社のミッションを実現するには、生活者とブランドの双方を深く理解し、メディアの「アットコスメ」、ECの「アットコスメショッピング」、店舗の「アットコスメストア」の3つを密に連携させてビジネスをしていくことが重要になる。また、当然ながら持続的に事業成長させることが求められるが、これまでのアイスタイルでは、「かけたコストを必ず事業成長につなげる」という部分への意識が薄くなりがちな部分があったように思う。社長就任後、基本的な事業戦略はなにも変わっていないが、そういった部分の社員の行動指針や考え方をそろえることに注力してきた。
WWD:コロナ前後で消費者の買い方はどう変化したか。
遠藤:訪日外国人客の買い方は大きく変化した。これまでは日本で特定の商品の指名買いだったが、自身の悩みに対応する化粧品を求めるようになった。個人旅行も多く、団体での爆買いもほとんどない。また、業界の変化としては日本に進出したい海外ブランドも増加している。日本は米国、中国に次ぐ世界第3位の規模を誇るビューティ市場で、日本で支持される商品は良いモノという認識が根強い。今後は、そういったブランドの日本進出のサポートにもより力を入れていきたい。このほか20年に設立した、インフルエンサーマーケティングを行うアイスタイルミーでは「アットコスメ」のプラットフォームとSNSの双方を活用したプランニングはもちろんのこと、「アットコスメ」を全く介在させない純粋なSNSマーケティングのサポートも多くおこなっており、順調に成長している。
WWD:22年に業務資本提携を締結した米国アマゾンと三井物産との取り組みについて。
遠藤:昨年11月にアマゾンジャパン合同会社と協業し、Amazon.co.jp上に「アットコスメ ショッピング」をオープンした。まだ8ブランドの取り扱いではあるが、当初の狙い通りラグジュアリーブランドに参画いただき、まずはオープンというスタート地点に立つことができ安堵した。「アットコスメ」の特徴である口コミに加え、美容部員のレコメンドやアドバイスなども掲載し、アマゾンユーザーに新たな化粧品の購入体験を提供。この先も、ラグジュアリーブランドを中心に取り扱いを増やしていくほか、リアル店舗でのコラボレーションなども引き続き推進していく。三井物産とも海外での取り組みについて引き続きいろいろと可能性を検討している。
WWD:24年に注力することは?
遠藤:リテールやメディアの勢いでBtoC事業が順調な一方、BtoB事業の成長スピードが追い付いていない。今後は、これまで中心だったキャンペーン型の広告ではなく、より包括的なブランドのマーケティング支援事業を中心に据えたい。その準備に24年は注力する。花開くのは25年以降になると思うが、しっかりやり切りたい。
会社概要
アイスタイル
ISTYLE
前職で化粧品メーカーに勤務していた山田メユミ取締役の化粧品のメルマガへの大きな反響をきっかけに、コスメ・美容の総合サイト「アットコスメ」事業化のため、アクセンチュアに勤務していた吉松徹郎会長と山田取締役が共同で1999年7月に設立。2002年にEC事業、07年に店舗事業を開始し、ネットとリアルで事業を展開。12年に東証一部上場