「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER、以下ゴルチエ)」は1月24日、ロンドンを拠点に自身の名を冠したブランドを手掛けるシモーン・ロシャ(Simone Rocha)をゲストデザイナーに迎え、2024年春夏オートクチュール・コレクションを発表した。21-22年秋冬に「サカイ(SACAI)」の阿部千登勢から始まった外部のデザイナーを招へいしてコレクションを制作するプロジェクトは、今季で6回目。その面白さは、デザイナーごとに大きく変わる「ゴルチエ」の解釈だ。ロシャは、彼女ならではの女性の体に対する視点や、素朴さやダークな雰囲気も内包する可れんなスタイルといった強みを生かし、「ゴルチエ」のフェティッシュで官能的な世界にロマンチックでフェミニンなムードを持ち込んだ。
女性らしいフォームへのフォーカス
ファーストルックは、透け感のあるメタリックなシルクオーガンジーで仕立てたミニマルなラインのテーラードジャケットに、パニエを入れて横に広がるシルエットを際立たせたスカートのセットアップ。胸周りやスカートの裾にはタトゥーモチーフのペイントが施され、足元にはロシャ自身のブランドでもお馴染みの透明なプレキシガラスのヒールやパール装飾を用いたプラットフォームミュールを合わせる。
その後も焦点となるのは、胸と腰からヒップまでの女性らしいフォーム。オープンバックから内側の大きくふくらんだチュチュがあらわになるデザインや、クロシェ編みのモチーフをパッチワークしたシルバーやアイボリーのパニエドレス、バロックパールやクリスタルの長いフリンジが揺れるシアードレスなど、淡いピンクや白、黒を軸にさまざまなドレススタイルを提案する。
これまでも多くのゲストデザイナーが用いてきた「ゴルチエ」のスタイルに欠かせないコルセットのレースアップディテールは、キツく締め上げるだけでなく、サテンリボンをゆるくホールに通してたゆませたデザインも見られる。また、アイコニックなデザインの一つであ る“コーンブラ”は、花やトゲをモチーフにしたような尖ったシェイプでジャケットやビスチエに採用。ゴルチエが愛するマリンスタイルは、チュールの上に紺色のサテンリボンを結んで描くボーダーや、レースアップディテールやデイジーモチーフのクリスタルを加えたセーラーハットで表現している。
“アトリエは夢を叶えることができる”
後半は、イブニングの趣が強まっていく。ダッチェスサテンのビスチエにチュールを幾重にも重ねて作ったスカートを組み合わせたボールガウンには、同色のクリスタルをあしらい華やかに。ふくらんだシルエットからマーメイドヘムへとつながるボリュームの対比を生かしたロシャらしいデザインは、装飾を抑えてエレガントなラインを際立たせる。そこからは、レッドカーペットやガラで着用される姿が浮かぶ。
「素晴らしい経験であり、ここにいることが信じられない。アトリエは極めて職人的で、彼らは夢を叶えることができる」とショー直後に語ったロシャは、初めてアトリエと取り組んだクチュール制作を通して、自身のクリエイションを一歩前進させた。