PROFILE: 山野幹夫/ヤマノビューティメイトグループ代表
現代表の祖母であり美容業界におけるパイオニア的存在である山野愛子氏は、1971年にヤマノビューティメイトグループを設立した。どろんこ美容の理念を受け継ぎながら新しい美容法の研究を続け、健康美容長寿社会を実現するトータルビューティ企業を目指して全国約2400店のサロンでサービスや商品を展開する。海外事業では琥珀の研究開発から生まれた商品が好調だ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)
ヤマノの原点であるどろんこ美容と
琥珀バイオテクノロジーを融合
WWDJAPAN(以下、WWD):2023年は新型コロナウイルスが5類に移行し、エステサロンにも本格的に人が戻ったがどう振り返る?
山野幹夫代表(以下、山野):全国のフェイシャルケアサロンに化粧品や美容健康食品、美容メソッドを提供する代理店ビジネスは、23年5月期の売上高が前期比5%増だった。約2400店舗あるサロンのお客さまは60〜80代が主で、上は90代までいらっしゃる。コロナ禍では来店できなかったが、やっと再び通っていただいている状況だ。その一方で、30〜40代を中心とする新客数は同50%増と大きく伸長した。新客はサロンに通ってサービスに満足した結果、化粧品購入につながるが、今はまだ信頼関係を築いている段階。客数が増えているからといってすぐに売り上げにつなげようと焦るとトラブルになりかねない。われわれの代理店ビジネスは地域密着型であり、お客さまとの信頼関係をしっかり築いてきたからこそ55年も続いている。何十年も通っているお客さまの客単価は新客の10倍ほどにもなる。時間をかけて関係性を構築したい。
WWD:トータルビューティ企業を目指し、新サービスもスタートした。
山野:従来はファイシャルケアや美白ケアが中心だったが、現在は健康美容長寿社会の実現を目標に掲げている。顔と頭の筋膜をリラックスさせて快眠へと導く“天空の眠り 筋膜エステ”を独自開発し、23年に提供を開始した。時代のニーズに応えるメニューで非常に好評を得ている。24年には“自律神経エステ”、25年には“脳活性エステ”の開始も予定している。一つ一つの技術をエステティシャンがしっかり習得してお客さまに満足していただくことを最優先に、5年後、10年後には美容と健康の垣根はなくなると信じて進める。
WWD:代理店事業をけん引した商品は?
山野:22年10月にリニューアル発売したスキンケアシリーズ“薬用BIDOU(美道)”だ。創業者の山野愛子は「髪」「顔」「装い」「精神美」「健康美」の5つの美を整える「美道五原則」が真の美しさを引き出すと提唱し、ヤマノブランドはそれらを愚直に実行しており、内面と外面のトータルビューティを追求する“BIDOU”シリーズと筋膜エステは売り上げ増につながった。“BIDOU”シリーズは、優しい泥やヤマノ特許成分の琥珀を使った既存の人気シリーズを医薬部外品としてリニューアルしたものだ。リニューアル前と比べ、同シリーズの売上高は20%増と大きく伸長した。買いやすくするために価格を下げたので、販売個数はそれ以上に伸長している。最近は、創業当時から50年以上愛され続け、“白どろ”“黒どろ”の愛称で親しまれている元祖どろんこ商品“ドロンコクレー24オリジナル”の、インスタグラムなどのSNSを活用した販促にも注力しており好評だ。新規のお客さまも購入しやすい商品として売り上げを伸ばしている。
WWD:グループ企業である琥珀バイオテクノロジーは、琥珀の研究開発を担う。大学と共同研究も進めるが直近の成果は?
山野:当社と筑波大学との共同研究により、琥珀に顕著な抗ストレス効果があることが明らかになり、うつ病のような症状が抑えられることも分かった。また、琥珀エキスが歯周病の原因となる歯周ポケットの予防や改善、さらに骨粗鬆症の予防や改善に有用であると細胞実験などで明らかになり、現在特許を出願している。また、23年春から日本の琥珀研究の第一人者である岩手大学の木村賢一教授との共同研究を開始した。それに伴い、研究拠点を岩手大学構内に移し研究スピードは加速した。その成果を今後の商品開発につなげていく。
WWD:アジアを中心とする海外事業の商況は?
山野:23年11月期の売上高は前期比68%増と大きく伸びている。これまで琥珀を使った外国人向けの商品はインバウンド客を対象にしていたが、新型コロナの影響を受け壊滅的な状況になった。それなら自分たちから売りに行こうと、中国市場に強いビジネスパートナーの商社が現地に販売会社を設立し、協働で取り組んでいる。シンガポールやタイも順調に伸びており、海外事業は今期も同70%増を見込んでいる。
WWD:海外事業の成長要因と24年の戦略は?
山野:健康美容長寿社会を目指す商品展開は国内と変わらない。琥珀フェイスマスクや琥珀美容食品など、海外戦略商品に注力すると同時に、東南アジアでは日本でも展開する泥パックが支持されている。中国ではライブコマースでKOLと協業しECを強化している。今後、サロン発ブランドとしての認知を上げるため、中国国内で上海などに3店ほどフェイシャルケアサロンをオープンする計画だ。これからはメード・イン・ジャパンという安心感だけでは通用しなくなる。泥と琥珀、そして長い歴史の中で培った優れた技術を持つサロンから生まれたブランドという、他社と差別化したイメージを徹底して訴求しさらなる成長を目指す。
会社概要
ヤマノビューティメイトグループ
YAMANO BEAUTY MATE GROUP
化粧品や美容健康食品、美容メソッドなどを全国約2400店舗のフェイシャルケアサロンに提供する代理店事業、琥珀バイオテクノロジー社と理化学研究所、国立大学法人筑波大学および岩手大学との共同研究から生まれた“琥珀エキス”および“琥珀粒子パウダー”などを配合した自社商品のアジア展開を中心とする海外事業の2つをビジネスの柱に据える。22年に女子栄養大学と提携した「健康・美容コンシェルジュ」認定プログラム、23年には健やかな眠りに導く“天空の眠り 筋膜エステ”をスタートさせ、トータルビューティ企業へと進化を続ける
ヤマノビューティメイトグループ
03-3375-2424