PROFILE: チップ・バーグ=リーバイ・ストラウス前社長兼CEO
米国を代表するブランドの1つ、リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS以下、リーバイス)を12年半にわたって率いたチップ・バーグ(Chip Bergh)社長兼最高経営責任者(CEO)が1月26日に退任した。2011年の就任時には低迷していた同社の業績を立て直し、19年の再上場へと導いたその経営手腕や、銃規制や人種差別などの社会問題に対して明確に意見を述べて行動する姿は、ビジネス界でも高く評価されている。22年11月には自身の後任を任命し、およそ1年半の引き継ぎ期間を設けて万全の体制で退任した同氏に、リーダーシップや経営哲学、今後について聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年2月5日号からの抜粋です)
バーグ前社長兼CEOは、現在66歳。大学卒業後、世界最大の消費財メーカーであるプロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE)に入社した。28年にわたる同社でのキャリアでは幅広いブランドに携わり、要職を歴任。2011年に社長兼CEOとしてリーバイスに加わった。
当時、米国ではD2Cが台頭していたが、リーバイスは卸に依存する従来のビジネスモデルから脱却できず、売り上げが低迷。同氏によれば、「まるで非営利団体のように運営されていた」という。「利益を上げて事業を成長させていくという、企業にとって基本の基であるはずのことを、誰も真剣に考えていない状態だった」。
そこで、まずは経営陣の刷新に着手し、就任から1年半で11人いた直属の部下のうち9人を入れ替えた。「CEOの役割とは、突き詰めてしまえば、“リソースの割り当て係”だ。どの部署に、どのような人材を、何人割り当てるか。社内外のどの分野に、どれだけ投資するのか。手持ちの人材や資金をどのように配分すれば業績が上がり、株主利益を最大化できるのかを考えて実行するのがCEOの仕事だと思う。一方で、CEOは従業員が人間であることを忘れてはならない。彼らを育成し、その能力を120%発揮してもらえるようにすることも重要だ。リーバイスがこれほど成功できたのは、『リーバイス』というブランドを愛し、企業理念や経営方針に賛同し、高いモチベーションを持って仕事に取り組んでくれている従業員のおかげにほかならない」。
リーバイスは、1853年に現在の前身である雑貨商としてサンフランシスコで創業。金鉱で働く人々のために丈夫なワークパンツを商品化し、73年にジーンズが誕生した。以来、アメリカを象徴するブランドとして成長し、1971年に上場したものの、創業家が中心となって株式を買い戻し、85年に非公開化。時代によって業績のアップダウンがあるが、バーグ前社長兼CEOの指揮の下、商品の多様化やEC事業の強化、世界中の消費者とのつながりを深める戦略などを次々に実施し、2019年には再上場を果たした。なお、11年に47億ドル(約6956億円)だった売上高は、18年には55億ドル(約8140億円)、23年には61億ドル(約9028億円)に成長している。
CEOやリーダーが取るべき姿勢とは?
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