ビューティ
特集 CEO2024 ビューティ編

【サティス製薬 山崎智士代表取締役】“インフラ業”に注力し新たな一歩を踏み出す

PROFILE: 山崎智士/サティス製薬代表取締役

山崎智士/サティス製薬代表取締役
PROFILE: (やまざき・さとし)1972年9月18日生まれ、東京都出身。アトピー性皮膚炎を患う子どもたちと関わり、「技術で皮膚を変え、皮膚が変わることで人生が変わる」、そんなきっかけを広く提供したいと99年12月にサティス製薬を起業した PHOTO : SHUNICHI ODA

ユーザー満足度を高める商品開発を主軸に800以上の通販・D2CブランドのOEMを手がけてきたサティス製薬は今年、新たなスタートを切る。個人でもオリジナルのスキンケア化粧品が作れるOEMサービス「ウィズ ブランド プロジェクト」を本格始動するほか、今年から“インフラ業”にも力を注ぐ。「1人でも多くの女性に“正しい綺麗”を届ける」ために、誰もが自分の理想とする肌状態を手に入れられる社会の創出を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

設立25周年を迎える今年
ビジネスモデルを大きく変える

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年を振り返ると。

山崎智士代表取締役(以下、山崎):今年から新たな一歩を踏み出すために、準備に費やした1年だった。われわれは“製造業”の看板は変えないが、その周辺事業を“インフラ業”と位置づけ、今年から推し進める。そのリスタートに向けて、昨年は製造業の仕組み化をはじめ、私が経営との関わりを切り離す準備やインフラ構築に必要な投資資金の確保などに取り組んだ。

WWD:サティス製薬の“インフラ業”とは具体的にどういうことか。

山崎:これまでのOEMは、開発のスキルや製造設備、品質管理の機能を共有するシェアリングビジネスだった。これからはモノづくりの領域を広げ、顧客管理からコールセンター、配送などを含む“インフラ業”として、ブランド規模の大小に関わらずバックオフィスでサポートする。

WWD:なぜ“インフラ業”に踏み切ったのか。

山崎:サティス製薬は20年もの間、OEMとして多くのブランドと伴走してきた。その中でブランド生存率は20%と業界平均よりも高く、良い商品を作り出す優れた組織だと自負しているが、資金不足から休止したブランドも数多く見てきた。その要因は過剰在庫の影響が最も大きいが、顧客獲得コストの高騰によりタッチポイントを広げることが難しかった。また、バックオフィスにまつわる最低限の固定費も負担になっていた。そこで、われわれのインフラを通じてこれらの課題を解決し、ブランド存続におけるリスクを取り払いたいと考えた。昨年はその種まきが終わり、今年からはどのブランドでもユーザーとの接点を“コストゼロ”で実現することを目指す。サティス製薬の理念「1人でも多くの女性に“正しい綺麗”を届ける」に向けて、需要予測、在庫管理、調達リードタイムを最適化しながらブランド生存率を51%以上に引き上げたい。

WWD:酵素洗顔料「パパウォッシュ」を展開するイー・エス・エスのノウハウを生かす。

山崎:19年に子会社化したイー・エス・エスは通信販売を中心に酵素美容の商品を展開する。カタログ制作やコールセンター含め自社で全て運営し、インフラに関して約40年のノウハウがある。そして大きな財産でもある顧客リストは200万人にのぼる。しかし買収当初、火の車だったイー・エス・エスを立て直すために時間を擁した。昨年ようやく経営のメドが立ち、さらには同社のインフラを活用できる土壌が整った。今後、われわれのパートナーブランドにはこの200万人にリーチするサービスを提供する予定だ。

WWD:ユーグレナと資本提携した。

山崎:ここ数年、初心にかえり自分の手でモノづくりをしたいという思いが強かった。そのためには、私が好きで始めたこの製造業という仕事とそこに対しての執着を断ち切る必要があった。今回の資本提携を通じてインフラを中心に事業を促進し、伴走するブランドの生存率をさらに高めていく。

WWD:30万円から個人でオリジナルのスキンケア化粧品ブランドを作れるOEMサービス「ウィズ ブランド プロジェクト」を昨春にプレスタートし、今年から本格始動する。

山崎:「ウィズ ブランド プロジェクト」は、多くのブランドオーナーとともに、多様な価値観や肌悩みに寄り添う化粧品を作りたいと考えた。個人でブランドを立ち上げる人は、特にモノに対する熱量や思い入れが強い。これからの「きれいを作る」ブランドは、“人”が立ってくるスタイルになると予測する。最終的なゴールは、業界全体を巻き込むプロジェクトとして成長させ、賛同企業とともに消費者ニーズを満たすブランドを創出することだ。

WWD:今の化粧品業界をどう見ているか。

山崎:誠実に目の前の1人の人を「綺麗にする」ということに、今まで培ってきた技術や知恵をおしみなく出していくべきだと思っている。そのためには業界の空気を入れ替えないといけない。社内ではゲームルールを変えると呼んでいるが、業界のゲームルールはトップ企業の1社によって作られている。トップ企業と肩を並べるために、この20年はいかにブランドを大きく成長させるかということに汗をかいてきた。しかし、それだけではビジョンが描きづらかった。これからは、小さいブランドでメガブランドを全方位に取り囲み、シェアを削り落とすことが近道だと気づいた。小さいブランドを小刻みに出すのではなく、ダムから放水するように一気に世に出していく必要性がある。この3年はそこに集中する。30年までには、われわれのインフラを通じて小さいブランドを現状の800から1万まで増やすのが目標だ。セーフティーネットを強化しながら、24年はサティス製薬のビジネスモデルを大きく変える元年となるだろう。

会社概要

サティス製薬
SATICINE MEDICAL

化粧品のOEM(相手先ブランド生産)メーカーとして、800ブランドの開発・生産を手がける。2016年12月には国産の天然材を活用した原料開発で、世界初の植物ヒト型セラミドの開発に成功。埼玉県吉川市に本社工場、東京・江東区にラボを持つ。山崎代表はエンジェル投資家としての顔も持ち、スタートアップ企業のバルクオムやメデュラなどにも出資している

問い合わせ先
サティス製薬
03-5646-2434