企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回は売上高と営業利益の四半期ごとの構成比からビジネスの健全化を考える。(この記事は「WWDJAPAN」2024年2月12日号からの抜粋です)
暖冬で上場アパレル企業の業績下方修正のニュースが相次ぎました。仕事関係でも百貨店アパレルやメンズ中心のところは秋冬のアウターが売れずに苦戦したと、よく耳にします。一方で、カジュアル中心のウィメンズで、アウター頼みでないところは前年を上回ったところも少なくないようです。
アウターは単価が高いため、かつてアパレル企業は秋冬のアウターが売れるかどうかで、その年の勝敗が決まるみたいな感じでした。しかし、今後も残暑・暖冬が続くであろう日本において、これからも秋冬のアウター頼みの体質でいいのでしょうか。
そこで今回は、9〜11月を秋、12〜2月を冬、3〜5月を春、6〜8月を夏と見立て、四半期別の業績から、国内ユニクロ(UNIQLO)、ジーユー(GU)、しまむら、パル、アダストリアの4社5事業の季節性の特徴を探ってみます。
まず、前提としてアパレルは天候や気温に左右されるビジネスです。最高気温が15度を超える日が続くと、春物が売れ始めます。それが大体3月の中旬ぐらい。そこから最高気温が25度を超えるようになると半袖を着たくなります。これが大体5月の後半から6月の初旬にかけて起こります。そこからが夏。秋は最低気温が15度を下回り続けたとき、かつては9月の後半でしたが、今はもう下手すると11月になってしまっています。そして最低気温が10度を切ると、冬物が動きます。11月の後半という感じでしょうか。昔は四季が4等分ぐらいだった日本が、今や夏が5カ月を過ぎるような感じで、秋がなくなってしまった状況です(気象庁の東京の過去の天気データから)。
夏が半年になりつつある日本において、9〜11月(秋)の四半期に頼らず、6〜8月(夏)の四半期でもしっかり利益を残せるようにすることが勝ち残りのカギになりそうです。
では、各社の直近の四半期別の売上高と営業利益における構成比を見てみましょう。2019年11月11日号で「秋で稼ぎ、夏に儲からないユニクロ」を解説しましたが、国内ユニクロ事業はかつて秋冬で儲け、夏で利益を失う体質でした。これは日本のアパレルビジネスの典型的な構図だったと言えます。ところがコロナ禍を経て、23年8月期は夏、つまり6〜8月の四半期営業利益が大幅に改善しています。売上高も営業利益も春夏45:秋冬55とだいぶ均衡が取れるようになってきています。お見事です。
しまむらとパル、国内ユニクロ事業に学ぶ
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。