高級ECファーフェッチ(FARFETCH)の創業者であるジョゼ・ネヴェス(Jose Neves)会長兼最高経営責任者(CEO)が辞任することが明らかになった。同社は12月15日の時点で経営破綻の瀬戸際にあることが判明し、同18日に韓国の大手EC企業クーパン(COUPANG)が買収。この時点では、ほかの取締役は全員辞任するものの、ネヴェス会長兼CEOは残留することになっていた。なお、社内メモによれば、同氏はコンサルタントなどの役割でファーフェッチに残り、今後はクーパンの創業者であるボム・キム(Bom Kim)CEOとファーフェッチのエグゼクティブチームが事業を率いるという。
ファーフェッチが保有する英セレクトショップのブラウンズ(BROWNS)のほか、故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」などを擁するニューガーズグループ(NEW GUARDS GROUP以下、NGG)、スニーカーのリセールサイト「スタジアム・グッズ(STADIUM GOODS)」などの今後について現時点では明らかになっていない。
買収の際、クーパンは米投資会社グリーンノークス・キャピタル・パートナーズ(GREENOAKS CAPITAL PARTNERS)と提携し、ファーフェッチに5億ドル(約745億円)の資金援助を実施することを発表。事業を継続しつつ、組織再編や事業の合理化を行うとしていた。なお、すでにファーフェッチのチーフ・ファッション&マーチャンダイジング・オフィサー兼ブラウンズCEOを務めていた人物や、企業向けECプラットフォームであるファーフェッチ・プラットフォーム・ソリューション(Farfetch Platform Solutions)の責任者らが退任しており、近日中にさらなる人員削減を行うと見られている。
ファーフェッチの持株会社の清算などを求める申し立ても
英国を本拠地とするファーフェッチは、英国倒産法におけるプレパッケージ型会社管理によって売却されたが、これは破産した会社が管財人の管理下に入る前に、救済者である買い手との交渉を行う。このため、ファーフェッチが発行した転換社債を保有する機関投資家の一部は、クーパンがファーフェッチの企業価値を不当に低く見積もって買収したと主張。ケイマン諸島の裁判所に集団で申し立てを行い、ファーフェッチの持株会社の清算および債券の償還などを求めている。
ファーフェッチは2023年8月、「カルティエ(CARTIER)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」「クロエ(CHLOE)」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)が擁するラグジュアリーEC大手のユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP)の株式の47.5%を取得することに合意した。しかし、クーパンによる買収を受け、リシュモンは「合意を破棄する」との声明を発表。また、リシュモンが保有する、ファーフェッチが20年11月に発行した3億ドル(約447億円)相当の転換社債については、「状況を踏まえると償還されないと考えるのが妥当だろう」としている。
クーパンによる買収後は四面楚歌!? ケリングなどが契約終了
ファーフェッチは、米百貨店ニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP以下、NMG)の少数株主として2億ドル(約298億円)相当の株式を保有している。しかし、NMGは2月7日、傘下の百貨店のウェブサイトやアプリなどでファーフェッチ・プラットフォーム・ソリューションの使用を継続しないことや、ファーフェッチのマーケットプレイス上に出店する計画を白紙に戻すことを明らかにした。
また、「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」などを擁するケリング(KERING)のオペレーションと財務を担当するジャン・マルク・デュプレ(Jean-Marc Duplaix)副CEOは、8日に行った23年12月期決算の説明会で「ファーフェッチは当社の戦略的なパートナーではない」とし、提携を終了すると発言した。