振り返ればニューヨークでは今から15年ほど前、“コンテンポラリー”と呼ばれるブランド群が台頭し、市場を席巻しました。「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」や「アレキサンダー ワン(ALEXANDERWANG)」「デレク ラム(DEREK LAM)」「タクーン(THAKOON)」「ジェイソン ウー(JASON WU)」などが代表例。アジア系の移民を先祖に持つデザイナーによるブランドは、母国に独自のネットワークを持ち、アジアで上手に生産できたことが価格面での魅力に繋がって存在感を増しました。これに対抗するように誕生したのが、「ラグ & ボーン」や「ヴィンス(VINCE)」などのアメリカ勢です。しかし、当時の勢いを保っているブランドは多くありません。
きっと「オスカー デ ラ レンタ」の記事にある通り、メガブランドが強い時代、独立系ブランドは存在感を発揮し続けるのも大変だし、立て直すことはもっと難しいのでしょう。アメリカのブランドで建て直しに成功したのは、「コーチ(COACH)」や「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」、それに「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」。いずれもコングロマリットに属したり、そもそも単体の規模がかなり大きかったりのブランドです。デザイナーズ以外では、「リーバイス(LEVI'S)」も復調しましたね。これも相当な規模感です。
昨年あたりから、「強いものがより強く」がこれまで以上に顕著になっています。特に「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「ディオール(DIOR)」「シャネル(CHANEL)」「エルメス(HERMES)」など、コスメ・フレグランスからプレタポルテ、バッグ&シューズ、そして時計・宝飾までを網羅するブランドの強さが際立ちます。
こうしたメガブランドは、まずはウエアとバッグの分野で独立系“コンテンポラリー”ブランド群を蹴散らし、ついでラグジュアリーシューズ専業を凌駕して今に至っています。対抗できたのは、「トッズ(TOD'S)」と「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」。これもグループを形成しています。
そして、メガブランドが今注力するのはコスメと時計です。2つの業界では、たとえばコスメでは「物流が違うから、進出は、そんなに簡単じゃない」という声が聞こえ、時計でも同じく「時計愛好家の認識を変えるのは、そんなに簡単じゃない」との見立てが一般的です。
そうだとも思います。でも、メガブランドが専業に追いつき、追い越す姿を、私は少なくともウエアとバッグ、そしてシューズの世界で見ています。だから、そんなに油断しない方が良い。まずは情報収集を進め、メガブランドがウエアで、バッグやシューズで、どんな風に消費者の興味や関心を掻き立てているのかを知るべきでは?と思います。
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