スチュワート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)就任10周年のアニバーサリーイヤーを迎えている「コーチ(COACH)」は2月12日(ニューヨーク現地時間)に2024-25年秋冬コレクションを発表した。会場はアッパーイーストサイドにある、実業家のジェームズ・ブキャナン・デューク(James Buchanan Duke)の私邸として建てられた「ジェームズ B デューク ハウス」。シャンデリアで飾られたクラシックなフレンチ様式の装飾は、ショーへの期待感を後押しした。
今シーズンのテーマは「アクセス」。ヴィヴァースは「次世代が古典主義と伝統にアクセスし、彼らのイメージとニーズに合わせて再定義することがテーマ」とコレクションノートに記し、彼が拠点とするニューヨークという街のフィルターを通して次世代に向けたラグジュアリーの再定義を試みた。人種や体型、性別など、多様な人々が住むニューヨークの寛容性と多様性を受け入れる次世代の価値観を重ねたようだ。
なじみあるものや未完成なものに見出す美
ランウェイに登場したモデルたちはニューヨークを象徴する自由の女神やイエローキャブ、「I LOVE NY」と書かれたマグカップのチャームや「ニューエラ(NEW ERA)」のニューヨークヤンキースキャップを、キルト地のアイコンバッグ"タビー"にジャラジャラと付けている。近年おなじみとなったバッグの2個持ちも印象的だ。
オーバーサイズの古着風ライダースや着古したようなシェアリングコート、まるで誰かのお下がりを着ているようなタキシードジャケットなど、「コーチ」の定義するラグジュアリーには受け継がれたものを大切にする美学がある。大きなボウをあしらったキャミソールは、リサイクルタフタを採用し、ハサミで裁断したままのラフな雰囲気。なじみあるものや未完成なものをラグジュアリーに仕立てている。フォーマルなタキシードに合わせたスポーティーなフーディーやパジャマシャツなど、スタイリングも新しい。再生コットンで作ったトレンチコートやデニム地をつぎはぎして再利用するジーンズも、制作過程を考えると手が混んでいて贅沢だ。
「コーチ」は昨年、Z世代に向けてサステナビリティを徹底的に追求した実験的なもの作りを実践する姉妹ブランド「コーチトピア(COACHTOPIA)」を立ち上げた。デザインと素材の両軸から持続可能性を耐久するヴィヴァースのアプローチは、さらに進化しているようだ。