「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」は2月13日(ニューヨーク現地時間)に、2024-25年秋冬コレクションを発表した。24年春夏シーズンを最後に「クロエ(CHLOE)」のクリエイティブ・ディレクターを退任したガブリエラ・ハーストは、今季からあらためて自身のブランドに専念する。
シュルレアリスムの世界を予感させる奇妙なモチーフのケータリングが出迎え
ショー当日は大雪に見舞われ、ブルックリンのアガー・フィッシュ・ビルディングの会場に向かう頃には吹雪で一面が真っ白に。やっとの思いで到着した人々を迎えたのは、チーズの上に蟻や動物の角のモチーフを飾った奇妙なケータリングだ。これは、これから始まるショーに向けたメッセージでもあった。
赤いカーペットを敷いたランウエイは、真上から見ると迷路のよう。今シーズンは、1930年代のシュルレアリスムのムーブメントにおいて活躍した芸術家、レオノーラ・キャトリン(Leonora Carrington)から着想を得た。“超現実主義”と訳されるシュルレアリスムは、「夢と現実の混ざった状態」などを意味する。コレクションノートでハーストはシュルレアリスムの思想について、「合理的な思考に不可欠で、現実や空想へと私たちをいざなう道具。また新たな視点を開いて共感や他者の生き方について教えてくれる、人々がより良い世界を夢見るための術でもある」と語った。
上質な素材をトロンプルイユのデザインで
ランウエイを行き交うモデルたちが身にまとうのは、上品な素材使いが際立つコレクション。一点一点に目を凝らすと、見た目とは異なる素材を使っていたり、複雑な加工が施されていたりする。たとえば、トレンチコートの表面の“刺しゅう”は、ナッパレザーをねじって作り出した模様。ランウエイの色とマッチした真っ赤なファーのようなコートは、カシミアを裂いてフリンジ状にしたものだ。柔らかそうなキャメル色のコートやファードレスにはシルクを用いた。ライトブルーのロングコートはデニムに似せたコットンリネンから仕立てたものだ。長年愛用できる高級な素材使いはもちろん、リサイクルカシミアやオーガニックコットン、リサイクルゴールドを使ったアクセサリーなど、サステナビリティには引き続き熱心に取り組んでいる。
思わず触れたくなるような上質で手の込んだ素材使いは健在。自身のブランドに専念できるようになった今、タイムレス、クオリティー、サステナビリティを掲げるブランドの理念がより確固たるものに進化しているように感じられた。