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連載 小島健輔リポート

業界騒然!ヨーカ堂の衣料品平場を継承するアダストリア「ファウンドグッド」の実像に迫る【小島健輔リポート】

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ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。経営不振が長引き衣料品平場からの撤退を発表していたイトーヨーカ堂。その手放す衣料品平場に、「グローバルワーク」「ニコアンド」などを展開するアダストリアが入ることになった。アパレル・小売業界にとっては大きな話題だ。小島氏によるどこよりも早く詳細なリポートをお届けしよう。

2月15日19時6分配信の日経電子版の速報に量販店業界とアパレル業界は度肝を抜かれたに違いない。イトーヨーカ堂の直営衣料品撤退は何とアダストリアへのバトンタッチだったのだ。何事も一歩引いて鳥瞰する私も夕食も早々に即、車を飛ばしてイトーヨーカドー木場店に向かった。これはそのインプレッションリポートだ。

「ファウンドグッド」は衣料品平場を代替できるか

イトーヨーカ堂は2月15日に木場店(東京都江東区)と立場店(横浜市泉区)にアダストリアが商品供給するSPA平場「ファウンドグッド(FOUND GOOD)」を開設した。なぜあえて「SPA平場」として「SPA業態」と区別したのか、そこにこそ直営衣料品売り場に代替する意味があるからで、順を追って検証したい。

GMS(総合量販店)の衣料品売り場はモールのアパレルチェーンに対抗するかのようにティーンズからシニアまで客層別テイスト別のショップ群で構成し(米国ではメインストリートコンセプトと言う)、「ユニクロ」に対抗するSPA型ファミリーカジュアル業態を中核に据えるのが近年の定石になっていた。イオンリテールは幾度も挫折しながら自ら開発した「縦売り型」SPAの「トップバリュコレクション」で「ユニクロ」に対抗しているが、イトーヨーカ堂は1990年代から何度も挑戦しながら開発に挫折し、ついには自社開発を断念してアダストリアにバトンタッチした。

リージョナルのGMSチェーンもアダストリア(イズミの「シュカ」、23年秋立ち上げは40品番)やワールド(ベイシアの「ヨリモ」、23年秋立ち上げは63品番)と組んだオリジナル企画のショップを導入しているが、婦人服だけで売り場の規模感も数十坪と限られ、客層別テイスト別ショップ群の一角を出るものではないから、衣料品平場の中核を丸ごと任せるというイトーヨーカ堂とアダストリアの取り組みは突出している。だからこそ「業界騒然!」となったのだ。

「ファウンドグッド」はイトーヨーカドーの衣料品売り場の30〜40代子育て世代向けカジュアル衣料平場を担うもので、店舗によって330〜990平方メートルの展開になるとしているが(木場店は700平方メートル弱)、50代以上を対象としたミセス婦人服/アダルト紳士服やビジネス、フォーマル、子供服の平場は別途存在する。それらは先々はメーカーブランドのコンセ群だけで構成されることになるのだろうが、イオンリテールは子育て世代向けの「トップバリュコレクション」に加えて「スポージアム」でアクティブスポーツウエアもカバーしているし、子供服は巨大なライフスタイル業態「キッズリパブリック」で一歩も引かないでいるから、「ファウンドグッド」だけで衣料品平場を代替できるとは思えない。

「子育て世代向けSPA平場」と言っても「ファウンドグッド」は多様なテイストのバラエティーをカバーする性格ではなく、「ゆる抜けて着回せる軽快で機能的なナチュラルモードカジュアル」に統一されているから、エレガンスカジュアルに着こなすミッシー系やスタイリッシュモードに着こなすバリキャリ系(「プラステ」をイメージして下さい)の客層はカバーできないし、トラディショナルなノンエイジ「ライフウエア」の「ユニクロ」とも客層はそれほど重ならないだろう。「ユニクロ」は不可欠なテナントとして並列するとして、「ファウンドグッド」がカバーできないミッシー系やバリキャリ系はブランドコンセで対応するのだろうか。

「ファウンドグッド」は「子育て世代向け」としたが、商品構成はウィメンズ50%、メンズ25%、キッズ5%強、(他に服飾雑貨と生活雑貨が20%弱、私が売り場を見た印象です)と子供服の展開が限られるのは課題が残る。子供服は一応110〜150cmをカバーしているが、トドラーのボーイズ/ガールズ、トゥイーンズのボーイズ/ガールズ、それぞれに求められるテイストやアイテムをカバーしているわけではないから、おまけの域を出ない。直営衣料撤退と言いながらも子供服は直営を残すのだろうか。あるいは子供関連は別のアパレルと組むのだろうか。

ウィメンズとメンズは基本、ボトムとアウターはS/M/L/XLの4サイズ、トップスはS/M/Lの3サイズ展開だが、かっちり締まった作りの「ユニクロ」に比べれば素材が薄くて柔らかいものが多く、セットアップやオケイジョンドレスを除いてはゆる抜けた着こなし(オーバーサイズではない)が想定されているから(ボトムの多くはウエスト・ゴム仕様)、「子育て世代向け」としてはサイズのカバーは十分と思わる。

ウィメンズを例にとれば、オフ/ベージュ/キャメルのウォームカラーをベースに、サックス/ネイビーのクールカラーをコントラスト、ピンクやイエロー、グリーンなどフルーツカラーをアクセントするナチャラルなカラーパレットで、黒やグレーなどニュートラルカラーはオケージョンアイテムに限られる。カラー面でもバリキャリ系やメンズのスタイリッシュモード系はターゲットとしていないのが判るが、アダストリアの「グローバルワーク」が部分的ながらカバーしていることを思えば幅を持たせても良かったのではないか。

価格と品質は受け入れられるか

 注目される価格帯は「イトーヨーカ堂衣料PBと同等かやや安い」とアナウンスされているが、アイテム毎のプライスラインを比較しても「お値打ち」は判らない。

ミセス好みのエレガントな素材やジャストなフィット、規格通りにコンサバな縫製仕上げの旧イトーヨーカ堂PB(プライベートブランド)と、子育て世代向けの機能的でカジュアルな素材やゆる抜けたフィット、必要なポイントを押さえた縫製仕上げの「ファウンドグッド」を同列に比較するのは難しい。「子育て世代向けカジュアル」のお値打ちを評価するなら「ユニクロ」と比較するべきかもしれないが、コンサバなナショナルブランドの文法に立脚した「ユニクロ」の堅めなものづくりと端から今風のゆる抜けたカジュアルウエアリングを前提とした「ファウンドグッド」の緩いものづくりは次元が異なる。むしろウエアリングが近い「ジーユー」と比較すべきだろうが、「ジーユー」の価格帯は旧イトーヨーカ堂PBや「ユニクロ」よりひとクラス安いロワーポピュラープライスだから、「ファウンドグッド」は割高に見えてしまうかもしれない。

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