ネット通販やライブコマース、スマホ決済、ゲームなど、次々と世界最先端のテクノロジーやサービスが生まれている中国。その最新コマース事情を、ファッション&ビューティと小売りの視点で中国専門ジャーナリストの高口康太さんが分かりやすくお届けします。今回は「デジタルヒューマン」。欧米では、「バーチャルヒューマン」とも呼ばれているが、果たして中国ではどう発展しているのか?
デジタルヒューマンの商用利用が広がりつつある。AI(人工知能)タレントを起用した伊藤園の「お~いお茶 カテキン緑茶」のテレビCMは話題となった。サマンサグローバルブランディングアンドリサーチインスティチュートはAI音声接客を導入予定だが、発表会では人気パフォーマンスグループ「FANTASTICS」の八木勇征、中島颯太のデジタルヒューマンを登場させている。
もっとも、こうしたデジタルヒューマンの機能は千差万別だ。そもそも厳格な定義はなく、人間そっくりのCG画像から、リアルタイムで動くキャラクター、人間と会話できるAIキャラクターなど、全てデジタルヒューマンの範疇に入る。この広い定義で捉えると、バーチャルヒューマンの歴史は長い。CGで作られたバーチャルアイドルの伊達杏子は1996年に登場している。
日本でも1996年には登場と意外と早い。だがAIで低コスト&急激な「成長」
長い歴史があるのになぜ今、注目が集まっているのか。背景にあるのはコンピューター技術、AIの発展だ。人間そっくりのCGキャラクターを作り、動かし、言葉を話させる。この全てが低コストでできるようになった。また、近年目覚ましい成長を遂げている生成AIの進化によって、人間の質問を理解し適切な受け答えをする能力が飛躍的に発展している。
「日本をはるかに超えて発展しているのが中国です。ゲームに例えると、日本のデジタルヒューマンはプレイステーション2の水準。中国は最新のプレイステーション5です」。こう解説するのはニュウジアの柏口之宏(かしわぐち・ゆきひろ)代表。アニメ映画「君の名は。」の中国公開、乃木坂46やRADWIMPSなど日本アーティストの中国公演を支援するアクセスブライトの創業者として知られる。アクセスブライトは日本コンテンツを中国に売り込む会社、ニュウジアは中国テックを日本に持ち込む会社と別立てで展開している。今はデジタルヒューマンの導入に注力しているという。
中国では2021年がデジタルヒューマン急成長の転換点となった。メタバースへの期待から、要素技術の一つであるデジタルヒューマンにも注目が集まったこと。さらには韓流アイドルグループEXOの元メンバー、クリス・ウーの性的暴行事件、人気女優・鄭爽(ジョン・シュワイ)の脱税問題などタレントのスキャンダルが相次いだことから、絶対にスキャンダルを起こさないバーチャルヒューマン・タレントの需要が高まったことが背景にある。特に化粧品分野では、資生堂、SK-II、ロレアル、花西子、パーフェクトダイアリーなど大手企業は軒並みデジタルヒューマンをアンバサダーとして起用し、もはや珍しいニュースではなくなっている。
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