エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL以下、エルメス)の2023年12月期決算は、売上高が前期比15.7%増の134億2700万ユーロ(約2兆1617億円)、営業利益は同20.3%増の56億5000万ユーロ(約9096億円)、純利益は同28.0%増の43億1100万ユーロ(約6940億円)だった。
地域別の売上高は、フランスが同19.7%増の12億7400万ユーロ(約2051億円)、フランス以外のヨーロッパは同18.4%増の18億1800万ユーロ(約2926億円)だった。いずれも現地の顧客および観光客による需要が好調だった。日本以外のアジア太平洋地域は同12.9%増の62億7300万ユーロ(約1兆99億円)、日本は同14.4%増の12億6000万ユーロ(約2028億円)だった。なお、日本は現地通貨ベースでは25.7%増で、全ての地域の中で最大の成長率となった。南北アメリカは下半期に力強く回復し、同17.0%増の25億200万ユーロ(約4028億円)だった。
カテゴリー別での売上高は、レザーグッズが同11.8%増の55億4700万ユーロ(約8930億円)、衣料・アクセサリーは同23.1%増の38億7900万ユーロ(約6245億円)だった。24年春夏コレクションがメンズ・ウィメンズともに非常に好評だったことから、衣料・アクセサリー部門は前年に引き続き、主力のレザーグッズ部門を上回る成長率となった。シルク・テキスタイルは同10.7%増の9億3200万ユーロ(約1500億円)、香水・ビューティは同9.8%増の4億9200万ユーロ(約792億円)、ウオッチは同17.7%増の6億1100万ユーロ(約983億円)だった。
アクセル・デュマ(Axel Dumas)最高経営責任者(CEO)は、「当社は23年もその唯一性を育み、全ての部門および地域において比類のない業績を上げることができた。これはコレクションの魅力はもちろん、業務に打ち込んでくれた社員の努力の賜物であり、心から感謝している」と語った。
エルメスは世界で2万2000人以上の従業員を抱えているが、こうした好業績を受け、全員に4000ユーロ(約64万円)の特別ボーナスを支給した。
「好業績とそうでないブランドの二極化が進んでいる」
地政学上の不透明感が続き、マクロ経済が悪化する中、23年はラグジュアリーグッズの需要が世界的に“正常化”した。ラグジュアリーセクターのリーダーであるLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)も、23年12月期決算は増収増益だったものの、売上高が23.3%増だった22年と比較すると8.8%増と落ち着きを見せている。一方、「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」など主力ブランドが軒並み不調だったケリング(KERING)は減収減益と苦戦。
こうした状況を踏まえ、デュマCEOはアナリスト向けの決算説明会で、「ほかのラグジュアリー企業にとって、23年はあまりいい年ではなかったようだ。引き続き大きな成功を収めているブランドと、そうでないものとで二極化が進んでいる」と述べた。
値上げ続きでも売り上げ順調
ここ数年、生産コストの上昇やインフレの進行を受け、ラグジュアリーブランドでハンドバッグの値上げが続いている。「エルメス」も、22年に3.5%程度、23年に7%程度、24年1月に8~9%の値上げを行っているが、売り上げに影響はないという。デュマCEOは、「値上げは当社の事業戦略に沿ったもの。金融アナリストよりも、顧客のほうがそれをよく理解してくれていると思う」と述べた。また、ラグジュアリー業界では中国市場の回復の遅れが懸念されており、「エルメス」でも客足にやや陰りが見えるが、事態を楽観視していると説明。客足回復のための値下げは考えていないと強調した。
「エルメス」は高い需要に応えるべく、ここ数年、フランス国内にレザーグッズの工房を次々にオープンしている。24年も下半期に1カ所オープンし、今後3年間は毎年1カ所程度を建設する予定。なお、工房を1つ新設すると、生産能力はおよそ6%増加するという。