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スノーピーク、急拡大の落とし穴 なぜ非上場化を選んだのか

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スノーピークはMBO(経営陣が参加する買収)によって株式を非公開化すると正式発表した。上場廃止で経営の自由度を高め、短期的な収益よりも長期的なビジョンの実現に軸足を移す。コロナ禍のキャンプ特需によって売上高が4年間で2.5倍に跳ね上がったものの、直近の23年12月期は最終利益が99.9%減に沈んだ。ブーム失速で在庫過多に苦しむ中でのMBOだ。2014年の上場(当時、東証マザーズ)から10年で大転換を決断した背景は何か。

非公開化をめぐる情報は、この数日で目まぐるしく動いた。

スノーピークは17日(金)22時過ぎにプレスリリースを発表し、英字メディアによる株式非公開報道について「検討しているのは事実だが、現時点において決定した事実はない」との声明を出す。翌18日(土)13時に日経電子版が「スノーピーク、非公開化へMBO 米ベインと500億円規模」という詳報を配信。週が明けて株式市場が動くと、TOB価格への思惑から投資マネーが集中し、同社の株価は20日(月)、21日(火)と2日連続のストップ高になった。そして21日の株式市場が閉まった後の16時、MBOを正式発表した。これを受けて当日18時に予定されていた決算説明会は急きょ中止になった(当初は13日の予定だったが、延期されていた)。

しかし山井太社長がMBOを検討し始めたのは約1年前にさかのぼる。

21日に発表した「MBOの実施および応募の推奨に関するお知らせ」で詳しく書かれている。抜本的な変革を進めるためには、短期的には利益水準の低下やキャッシュフローの悪化を招くことが避けられないと述べつつ、「山井氏は、引き続き当社の経営に関与することを前提とし、当社非公開化した上で、機動的かつ柔軟な意思決定を可能とする株主と経営陣が一体となった強固かつ安定した新しい経営体制を構築し、当社の成長戦略・事業構造改革の実行および事業の積極展開に取り組むことが最善の手段であるとの認識に2023年3月下旬に至った」――。5月にはベインと話し合いを始めている。

上場企業は配当の増額など投資家からさまざまな注文を突きつけられる。アクティビスト(モノ言う株主)が役員人事や経営方針に圧力をかけることもある。米バリューアクトがセブン&アイ・ホールディングスに対して、収益源のコンビニ事業に集中させるため百貨店子会社のそごう・西武の売却を迫ったことは記憶に新しい。経営の自由度を高めたいと考えた場合、MBOによる上場廃止は一つの手段になる。ファッション業界でもワールド(05年上場廃止、18年に再上場)、サザビーリーグ(11年上場廃止)、オンリー(21年上場廃止)などのMBO事例がある。

キャンプブームの反動に苦しむ

非上場化の直接的なきっかけは足元の業績悪化だ。13日に発表された2023年12月期連結業績は、売上高が前期比16.4%減の257億円、純利益が同99.9%減の100万円だった。キャンプブームの終焉を象徴するものとして、メディアでも大々的に報道された。

同社は05年から17年連続の増収。特にこの数年は急拡大を遂げ、18年12月期に120億円だった売上高は、22年12月期には307億円に跳ね上がった。キャンプブームで成長を加速させたスノーピークは注目の的だった。

スノーピークの業績推移

それがコロナよる行動制限がなくなり、旅行などレジャーの選択肢が復活した23年、一気に暗転する。売れ行きが鈍り、在庫過多に陥った。もっとも過去最高売上高の307億円を叩き出した22年12月期には、すでに在庫水準は悪化していた。22年8月に復帰した山井社長だったが、急激なキャンプ市場の冷え込みに打つ手は限られたようだ。昨年8月の23年1〜6月期の決算説明会に登壇した山井社長は「2020年以降、アウトドア業界全体がコロナの追い風を受けて急成長してきたが、巡航速度に戻った。その予測を見誤った。投資家の皆様には申し訳ない」と反省の弁を述べた。

同社が読み間違えたのは、コロナ禍でキャンプを始めたようなエントリー層(初心者)の需要だった。高品質やデザイン性を追求し、高価格でブランディングしてきたスノーピークは、けして大衆的な商品ではない。初心者がキャンプの経験を積んで、次第に上質な用具を買い足すような愛好家になる。そんなロイヤルカスタマーの獲得が同社の成功の方程式だったが、キャンプブームをけん引してきた初心者が離れてしまったのだ。

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